おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

治験 血液サラサラ

ブリリンタ錠(抗血小板剤)とアスピリンの併用による心血管イベント抑制作用

投稿日:2019年3月4日 更新日:

ブリリンタ錠(抗血小板剤)とアスピリンの併用による心血管イベント抑制作用

 

ブリリンタ錠を製造販売しているアストラゼネカは、2型糖尿病および冠動脈疾患と診断された1万9000例超の患者さん(心筋梗塞・脳卒中の既往歴なし)を対象として、アスピリン単剤治療およびブリリンタとアスピリンの併用療法における心血管イベント抑制作用に関する第Ⅲ相試験の概要を公開しました(THEMIS試験)。

brillinta

brillinta

結果は、主要心血管イベント(心血管死、心筋梗塞・脳梗塞からなる複合イベント)を統計学的に有意に低減し、主要評価項目を達成したことを発表しました。詳細については今後の学会において発表するとしています。

上記の報告は冠動脈疾患と診断されたが、心筋梗塞の既往がない患者さんを対象としたデータとなっており、アストラゼネカとしては“心筋梗塞および脳梗塞の既往例のない2型糖尿病を合併した冠動脈疾患に対する治療薬”としての適応を取得することを目的とした臨床試験と思われます。

 

今回のアストラゼネカの試験と類似した試験として“PEGASUS-TIMI 54試験“が2016年に公開されております。

 

PEGASUS-TIMI 54試験

 

心筋梗塞を発症してから1年以上が経過している糖尿病患者さんを対象として、アスピリン単剤およびブリリンタとアスピリンの併用群における血管イベント抑制作用に関する報告です。

 

PEGASUS-TIMI 54試験の結果

被験者:糖尿病患者6806例(1型:846例、2型:5960例)

ブリリンタ服用量:1日2回、1回90mgまたは60mg

 

アスピリン単剤と比較してブリリンタとアスピリン併用群は心血管死リスクを22%減少した

 

アスピリン単剤と比較してブリリンタとアスピリン併用群は冠動脈性心疾患死リスクを34%減少した

 

以下はインスリン治療を行っている2型糖尿病患者さんを対象とした具体的なデータです。

 

心血管死・心筋梗塞・脳卒中発生率複合イベント

アスピリン単独群:18.2%

ブリリンタとアスピリンの併用群:16.9%

(ブリリンタとアスピリンの併用群が相対リスク12%減少)

 

心血管死リスク

アスピリン単独群:8.1%

ブリリンタとアスピリンの併用群:6.7%

(ブリリンタとアスピリンの併用群が相対リスク15%減少)

 

冠動脈性心血管死リスク

アスピリン単独群:4.0%

ブリリンタとアスピリンの併用群:5.6%

(ブリリンタとアスピリンの併用群が相対リスク23%減少)

 

大出血リスク

ブリリンタとアスピリン併用群において2.56倍高い

PEGASUS-TIMI 54試験は、過去に心筋梗塞を発症したことがある糖尿病患者さんを対象としたものです。予防医学が主流となっている現状においては、冠動脈疾患と診断を受けているものの、心筋梗塞を発症していない段階において、

 

「ブリリンタとアスピリンを併用することが予防医学として有益です」

 

というアストラゼネカの狙いが“適応症取得”という形で評価されるかどうかがポイントとなっております。(2019年2月:第Ⅲ相試験段階)

ブリリンタとアスピリンを併用した心血管イベント抑制作用(アストラゼネカ)

ブリリンタ錠とプラビックス錠比較データ

-治験, 血液サラサラ

執筆者:ojiyaku


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.

関連記事

ギラン・バレー症候群におけるエクスリズマブの安全性と有効性に関する報告

ギラン・バレー症候群におけるエクスリズマブの安全性と有効性に関する報告

ギラン・バレー症候群におけるエクスリズマブの安全性と有効性に関する報告   ギラン・バレー症候群とは、急性・多発性の根神経炎の一つで、主に筋肉を動かす運動神経が障害され、四肢に力が入らなくな …

act017-platelet-gpⅥ

出血時間や血小板数に影響を与えずにコラーゲン誘発性の血小板凝集を阻害することで血小板凝集を阻害する“ACT017”に関する臨床データ

出血時間や血小板数に影響を与えずにコラーゲン誘発性の血小板凝集を阻害することで血小板凝集を阻害する“ACT017”に関する臨床データ   新規作用機序“コラーゲン誘発性の血小板凝集を阻害する …

typing

抗血小板薬がDo処方で続く患者様への薬歴

抗血小板薬がDo処方で続く患者様への薬歴   プラビックスやバイアスピリン、プレタールなどの抗血小板薬を継続服用している方へお薬をお渡しする際に「青あざ(皮下出血)・歯茎からの出血」などの出 …

Na-K

血圧が上げるのは体内の塩を抜くため(Guyton説)

血圧が上げるのは体内の塩を抜くため(Guyton説) 先日参加した勉強会で「ヒトが血圧を上げる体内の塩を抜くためです(Guyton説)」というお話しを聞くことが出来ました。 私は普段、調剤薬局で勤務を …

oral-semaglutide-1

リベルサス錠が発売開始(2021年2月5日)

リベルサス錠が発売開始(2021年2月5日) 2型糖尿病治療薬であり世界初の経口GLP-1受容体作動薬「リベルサス錠」が2021年2月5日発売開始となりました。 GLP-1受容体作動薬は、これまで注射 …