コメリアンコーワの働きを患者さんにお伝えする
1日3回飲み続ける薬にコメリアンコーワ錠があります。狭心症やIgA腎症などの治療に用いられる薬です。説得力をもって患者さんに服用意義をお伝えするために、今回はコメリアンコーワの効能効果について調べてみました。
コメリアンコーワの薬理作用
Ⅰ:血管拡張作用
ヒトの細胞内では食事で得られた糖分を利用してATPというエネルギーを作り出します。このATPはエネルギーとして働くだけでなく、細胞外で神経伝達物質としての役割も担います。細胞内で作られたATPは膜輸送機高を介して細胞外に放出されます。細胞外に排出されたATP(リンを3つもった形)は1つ1つリンを放出しながら細胞外シグナル伝達として働きます。
ATP(リン:3つ)→ADP(リン:2つ)→AMP(リン:1つ)→アデノシン(リン:0)
リンをすべて放出した「アデノシン」は通常であれば細胞内に取り込まれて、再度ATPへと形を変えるのですが、コメリアンコーワを飲むと細胞内への取り込みが阻害されます。その結果、細胞外アデノシン濃度が上昇します。するとアデノシンは、同じく細胞外にある血管平滑筋(血管の周囲を覆うように配列していて、血管径を調節する筋組織)に対して弛緩作用を示します。この働きにより、血管が弛緩し、血管拡張作用が現れるわけです。
Ⅱ:抗血小板作用
抗血小板薬にはさまざまな作用機序がありますが、コメリアンコーワが示す抗血小板作用は、血小板合成の最上流にある「ホスホリパーゼ」を抑制する働きです。
血小板内にあるリン脂質をアラキドン酸へ変換する「ホスホリパーゼ」を抑制することによりその下流にあるプロスタグランジンやトロンボキサンA2の産生が抑制されて抗血小板作用をしめします。類似の働きをする薬はなく、強いてあげるとすると体内のステロイドホルモン量が一過性に上昇したときに合成される「リポコルチン」という調節タンパクが類似の働きをします。
Ⅲ:腎機能低下抑制作用
原因は不明ですが、腎臓の糸球体を血中タンパク質が通過してしまい、尿中に漏れだす疾患(ネフローゼ、IgA腎症)があります。
腎臓の糸球体は毛細血管を流れる血液をろ過する役割をしているのですが(糸球体係蹄壁)、そのうち血中タンパク質が尿中に漏れ出ないようにするために糸球体は2つのバリア機能を持っています。
1つ目がポアと呼ばれる壁孔(あな)のサイズです(サイズバリア)。この穴が血中タンパク質よりも大きくなってしまうと、血中蛋白が容易に糸球体を通過してしまい尿中に排泄されてしまいます。そのため通常は壁孔は小さく保たれています。
2つ目が陰性荷電というはたらきです(チャージバリア)。血中タンパク質は陰性に荷電しています(マイナスの電荷をもっています)。また糸球体も同様に陰性に荷電しています。そのため通常では血中タンパク質が糸球体に近づくと陰性同士が反発し合うため、糸球体を通過することはありません。
しかし、何らかの働きにより陰性荷電が減弱すると反発力が低下してしまい、血中タンパク質が糸球体をすり抜けて尿中に排泄されてしまうわけです。
コメリアンコーワには、糸球体上の陰性荷電の減弱を抑制させる効果があります。この働きにより糸球体におけるタンパク質の漏出を抑制することができます。
コメリアンコーワの薬物動態
コメリアンコーワを服用すると1時間以内に最高血中濃度に到達します。また服用後1時間半~2時間後には急速に活性が失われ効果が減弱します。
効果時間の確認のために定常状態がある薬かどうか確認してみます。
半減期(1.5時間)× 4~5 > 8(服用間隔)
となりますので定常状態がない薬といえます。
このためコメリアンコーワは「飲めば効く、飲み忘れると効かない」というわかりやすい薬であることががわかります。インタビューフォームには連続投与のデータが記載されていますが、「血中濃度の上昇は認められなかった」と表記されています。
排泄経路
肝臓で分解(2つのエステル結合を切断する)を受けた後、尿中に50%、糞中に20%の割合で排泄されます。(未変化体で排泄されることはありあせん)
副作用
頭痛・頭重感の頻度が5%未満で最も高く、次いでめまいフラツキ・動悸・起立性低血圧などが0.1%未満の頻度となっています。
頻度の高い副作用に関しては、血管拡張作用がもたらす一時的なものが多いという印象です。
患者さんへお伝えすること
この薬は血管を広げ、血液の流れを良くすることで血のめぐりをよくする働きがあります。また心筋の保護作用や腎臓機能の改善作用もあるため循環血流量維持に効果的な薬です。効果時間が短く、飲み忘れると効果がなくなってしまうので1日3回飲み忘れずに使用することが大切です。