ステロイド軟膏は1日何回塗るのがよいのか
内科門前の薬局で勤務していると、秋から冬にかけて大気が乾燥してくる時期に、かゆみ止めの軟膏が処方されることがあります。例えば「リンデロンVG軟膏1日数回患部に塗布」といったような処方を目にします。お薬を患者さんにお渡しすると、「1日数回って書いてあるけど、1日何回くらい塗ればいいの?」と質問をうけることがあります。そこで今回は1日の軟膏塗布回数と治療の有効性について確認してみます。
ステロイド軟膏の1日塗布回数と治療成績について
皮膚症状や使用条件が異なっていることから、塗布回数と皮膚症状の改善率について具体的に報告があがっている例はそれほど多くありません。そのため下記内容は少ない症例をサンプルとして記しているため一般的な解釈とはならない可能性がありますのでご考慮ください。
報告例の中である程度共通して確認できることはステロイドランクweak(弱い)やmedhium(中程度)程度のステロイド軟膏では1日1回よりも2回塗布したほうが皮膚症状の優位に改善がみられるということです。これらの薬は小児の皮膚疾患や、大人の顔の皮膚疾患で処方されるケースが多い薬なのですが、比較的弱いタイプのステロイド剤なので使用する場合は1日2回以上の塗布を心がけることが改善を促すことが示唆されます。
ステロイドランクstrong(強力)、very strong(かなり強力)程度のステロイド軟膏では1日1回で使用した場合も1日3回で使用した場合も、塗布後3週間後の治療成績(有効率)に差が出ないというデータがあります。
しかし、治療の早さに関しては1日3回塗布したほうが完治が早いというデータがあります。皮膚疾患は発疹部位や痒み症状にもよりますが、「気になるので早く治したい」という声を良く耳にします。そのため私の個人的な考えですが「1日数回患部に塗布」という指示がでている場合は「1日2~3回患部に薄く塗布します。完治した段階で塗らなくてOKです。予防薬ではありません」とお伝えすることが患者さんの満足につながるのではと考えております。
ステロイドランクstrongest(最も強い)ステロイド軟膏では1日1回塗布でも複数回塗布でも治療成績に有意差はないと言われています。ストロンゲストクラスのステロイド軟膏が処方される場合は具体的な使用方法が記載されていることが多いと思います。
ステロイド外用剤の使い方(外用回数と 漸減療法)
さて、良く効くステロイド軟膏(very strong、strongest)について、1日1回塗るか、2~3回塗るか判断に困ることがあるかもしれません。言い換えると、午前中に皮膚に塗ったステロイド軟膏が、午後にも効いているかどうか(午後にも塗った方がいよいか、塗らなくてよいか)確認する方法はないでしょうか。
あくまで一つの目安であり塗布部位や個人差により異なるのですが、良く効くステロイド軟膏やクリームは皮膚表面の血管を収縮(細く)する効果があるため塗布部位の皮膚が蒼白化(青白く)見えることがあります。発疹がでている患部とその周辺の皮膚に薄くvery strongまたはstrongestステロイド軟膏を塗布すると周辺部位の皮膚が蒼白く(色素が抜けたように)見えます。このように見える時は薬が効いていると判断することができます。
そのため良く効くステロイド軟膏を1日数回使用する判断基準としては、適切量を午前中に塗布します。午後に患部を確認した時に蒼白化がみられなければ、午後に再度塗布することは治療改善に有効であると私は考えます。(あくまで1日数回塗布という指示がでている場合について、私が考える使い方の一例です)
注意:皮膚疾患部位の発汗量や肌着の素材により塗布した軟膏が皮膚からはがれる度合いは違うのですが、ステロイド軟膏(クリーム)の効果を維持するために1度にたくさん塗ればよいというわけではないことをご了承ください。