コスパノン錠(カプセル)は尿路結石や胆石・胆管炎などの胆のう疾患で使用される痛み止めの薬、石の溶解率を向上させる薬として使用される印象があります。今回はコスパノン錠(カプセル)のはたらきについて調べました。
コスパノンは、交感神経を介する作用機序(COMT阻害など)により消化器、尿路系平滑筋の運動異常を改善するはたらきがあります。
COMT(カテコール-O-メティルトランスフェラーゼ)とはドーパミン・アドレナリン・ノルアドレナリンなどのカテコールアミン類を分解する酵素の一つです。コスパノンはCOMTのはたらきを阻害することでカテコールアミン類の作用を促進します。
消化管は一般的にコリン作動性の副交感神経が優位となって収縮性を示しますが、カテコールアミンが増えることでその働きが阻害され消化管の過度の収縮がおさえられます。いわゆる副交感神経・交感神経という分類でいいますと、
コリンが増える→副交感神経が優位となる→消化管が元気に動く
カテコールアミンが増える→交感神経が優位となる→消化管の動きが鈍くなる
コスパノンを服用するとカテコールアミンが増えますので、消化管・尿細管の過剰な動きが抑えられて、消化管由来の痛みが軽減します。
コスパノンは特に、膵胆管末端部のオッジ筋に対して弛緩効果を有し、膵胆道内圧をさげ、胆汁、膵液を排泄することにより肝胆道、膵疾患に伴う腹部症状を除去するはたらきがあります。オッジ筋弛緩作用は他剤にはなく、コスパノン独自の作用と考えられます。
また、泌尿器系に対しては、尿路の痙縮緩解作用により尿路結石に伴う自覚症状を消退させます。COMTは肝臓や腎臓などの末梢に多く分布する酵素ですので、COMTを阻害するコスパノンは末梢で効果を発揮する薬であることがわかります。
消化管の働きを抑えるという観点では、抗コリン薬であるブスコパン錠も尿路結石症・胆管炎などコスパノン錠と同様の適応症を有しています。
ブスコパン錠など多くの抗コリン性鎮痙剤は、自律神経遮断作用(副交感神経抑制作用)により効果を発揮するわけですが、正常・異常を問わず律動を抑制し、更に全身的に作用するため、このあたりが懸念材料とも考えられます(抗コリン作用による閉塞隅角緑内障の悪化、前立腺肥大症の悪化、口渇・便秘などが懸念されます)。これに対しコスパノンは、抗セロトニン、抗COMT作用によって鎮痙作用を発揮し、作用としては末梢性であり特に十二指腸周辺部への作用が強いという局所作用が利点と考えられます。
薬物動態
服用後、30分後には速やかに効果を発揮します。作用時間は4~6時間程度ですので1日3回飲むことが求められます。単回服用では24時間後には効果は消失します。
・コスパノン錠(カプセル)は消化管・胆管・膵管の過度の収縮を抑えることで痛みを軽減します
・コスパノン錠(カプセル)は尿路においても痙縮を緩和する作用があるため痛みを軽減します。
・緑内障や前立腺肥大症の方でも服用できます(抗コリン作用ではないため)
・消化管のはたらきを穏やかにするので、腹部膨満感・胸やけなどの自覚症状がでないかどうか注意をすること
・ロキソニンやボルタレンのようなNSAIDSとは効果が異なりますので併用することができます