値引き率が大きいと薬価が引き下げられる薬価改定の仕組みを考慮して後発医薬品を選定する方法

値引き率が大きい品目は統一名収載となる薬価改定の仕組みを考慮して後発医薬品を選定する方法

 

同日発売の後発医薬品であっても、価格乖離(値引き率の大きさ・市場実勢価格)の大きい品目は、翌薬価改定時に統一名収載の価格帯となる(薬価が下がる)というルールが薬価改定に組み込まれました。このルールを踏まえた上で、後発医薬品をどのように選定することが医療機関にとって有益となるかについて検討してみました。

2016年4月から2018年4月までの2年間で発売されたジェネリック医薬品のうち、市場規模が大きい医薬品をリストアップしてみて、2018年4月の薬価改定にて、どのような薬価改定となったかについて確認してみます。

毎年薬価調査・毎年薬価改定

製品名「社名」:発売時の薬価→2018年薬価

 

2016年6月発売

・オランザピン(ジプレキサ)

オランザピン錠10mg「DSEP」など7社の薬価:158.4円→112.6円

オランザピン錠10mg(1)統一名収載の薬価:158.4円→85.9円

 

・セルトラリン(ジェイゾロフト)

セルトラリン50mg「DSEP」など14社の薬価:73.1円→52.1円

塩酸セルトラリン50mg錠 統一名収載の薬価:73.1円→39.2円

後発医薬品の薬価見直しにより価格乖離の大きい品目が統一名収載となる

2016年12月発売

・モンテルカスト(キプレス・シングレア)

モンテルカスト錠10mg「ファイザー」など15社の薬価:81.4円→83.5円(増額)

モンテルカストナトリウム10mg錠 統一名収載の薬価:81.4円→42.5円

 

2017年6月発売

・アリピプラゾール(エビリファイ)

アリピプラゾール錠12mg「トーワ」など2社の薬価:102.6円→80円

アリピプラゾール12mg錠(1) 統一名収載の薬価:102.6円→55.5円

 

・テルミサルタン(ミカルディス)

テルミサルタン80mg「DSEP」など9社の薬価:69円→56.3円

テルミサルタン80mg錠 統一名収載の薬価:69円→35.3円

2017年12月発売

・オルメサルタン(オルメテック)

AG薬が他の銘柄と価格を統一

(統一名収載という薬価はありません)

 

・イルベサルタン(アバプロ・イルベタン)

統一名収載という薬価はありません

 

・ロスバスタチン(クレストール)

AG薬が他の銘柄と価格を統一

(統一名収載という薬価はありません)

 

上記を確認してみてわかることは

 

・ジェネリック医薬品発売後、市場実勢価格の薬価調査が行われると統一名収載という薬価が設けられる

(従来は9月分の取引分について薬価調査が行われて12月に薬価調査結果が開示されます)

 

・40~50%OFFで販売されたジェネリック医薬品は統一名に収束される

 

・値引き率が低いメーカー(トーワ・先発メーカーなど)のジェネリック医薬品は薬価が高めに維持される

 

・先行発売のAG薬の薬価は、遅れて発売される他のGE薬と薬価が統一される

 

という感じでしょうか。

以上のルールを踏まえた上で、GE薬をどのように選定していくことが患者様にとって、または医療機関側にとって有益か考えてみます。

 

1:薬価改定ごとにGE薬を選びなおす

 

例:テルミサルタン80mg「ケミファ」を採用していたが、薬価が69円→56.3円へ減額となることがわかった。同じ成分のテルミサルタン80mg「EE」は35.3円へ減額となることがわかったため、患者様の負担金減額を考えて価格が安いEEを採用することにした。

(薬価を高めに維持するのであれば、その逆となります)

 

品目ごとに上記の作業を行うことは費用対効果を考えると有用ではありませんので、行うのであれば価格差の大きい品目・使用量の大きい品目に限って行う感じなるかもしれません。

 

 

2:新規でGEが発売される段階で統一銘柄となりうるか、薬価が高く維持されるかを見越す

 

例:2018年6月にタリオンのGEであるベポタスチンベシル錠が発売されます。

大きな値引き率を提示するメーカーと小さな値引き率を提示するメーカーに分類します。

 

その後、2018年9~12月に薬価調査が行われてベポタスチンベシルの市場実勢価格が開示され、2019年中に消費税増税に伴う薬価改定が行われる予定です。

(消費税の増税は2019年10月1日が予定されております。)

2018年6月に発売されるベポタスチンベシル錠を採用する際に大きな値引き率を提示するメーカーのジェネリック医薬品を選択すると2019年10月までの1年3か月は有益な薬価差を得ることができますが、それ以降は薬価が統一名収載の価格に減額されます。

 

一方で小さな値引き率を提示するメーカーのジェネリック医薬品を選定すると2019年10月時の薬価改定において、高めの薬価に維持される可能性を含むことになります。

 

今後発売されるジェネリック医薬品に関しては、長期的な視野で薬価を推測して品目を選定していくことになりそうです。

 

平成30年(2018年)以降の薬価改定の予定

平成31年(2019年)は消費税の引き上げが予定されており、全品目の薬価改定が行われる

平成32年(2020年)4月:薬価改定

平成33年(2021年)毎年薬価調査、毎年薬価改定スタート

 

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業