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骨髄移植治療後にエイズウイルスが消失している報告について

骨髄移植治療後にエイズウイルスが消失している報告について

 

英科学雑誌ネイチャー電子版の報告によると、エイズウイルス感染者が悪性リンパ腫の一つ“ホジキンリンパ腫(リンパ球のHRS細胞・LP細胞が増えるリンパ腫)に罹患したため2016年に骨髄移植を行ったところ、エイズウイルスの増殖が抑えられたというデータを公開しました。同じような症例はドイツで10年ほど前に報告されており、HIV-1感染が寛解したのであれば世界で2症例目となります。

HIV-1が寛解した理由

 

R5-HIV-1(エイズウイルスの一種)はマクロファージやT細胞に感染して、細胞免疫機構を破綻させるエイズウイルスなのです。R5-HIV-1-1がマクロファージに侵入する経路としては、マクロファージの膜表面に存在している“取って“のような部分にR5-HIV-1自身を引っかけて、引っ掛かっている隙にマクロファージ内へ侵入し、感染するというシステムとなっています。

 

このマクロファージ膜表面の“取って”部分はCCR5(CCケモカインレセプター5)と名付けられております(膜タンパク質です)。今回の報告によると骨髄移植のドナーはCCR5の遺伝子に変異が起こっておりました(CCR5△32)。そのため、通常サイズのCCR5よりも短く、不完全な△32-CCR5が作り出され、さらに、マクロファージの膜表面にCCR5を発現することができませんでした。その結果、マクロファージ膜表面に“取って(CCR5)”がなくなってしまったため、エイズウイルスは細胞内に侵入・感染することができなくなりました。

AIDS-virus

日本人ではCCR5△32ドナーは確認されていない

 

CCR5△32という遺伝子をもつ人の割合についですが、CCR5△32/△32(ホモ接合体)の割合は欧米人の約1%と報告されています。アフリカ人や日本人を含むアジア人にはCCR5△32遺伝子を持つ人は確認されておりません。

 

注意:遺伝子は2対で1つとカウントします。CCR5△32/△32とは、CCR5の32番目の塩基対のうち、2対両方ともで変異が起きているという意味です。片方だけで変異が起こっている場合はヘテロ接合体と呼びます。CCR5△32ヘテロ接合体を有する場合でもHIVの細胞への感染が低下することが実験で証明されています。

エイズウイルスが細胞に感染する仕組み

HIV-1感染が寛解?骨髄移植後にエイズウイルスの増殖が抑制された事例

患者の現状

2016年に骨髄移植を受けた被験者は、移植後16か月で抗レトロウイルス療法は中断されており、HIV-1のRNAはその後も検出されておらず、寛解状態は18か月間維持されているということです。

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業

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ojiyaku