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末梢に作用する咳止め「リフヌア錠45mg」の効きめについて

末梢に作用する咳止め「リフヌア錠45mg」の効きめについて

 

2022年4月21日、世界初の慢性咳嗽に対する末梢作用を薬理作用とする「リフヌア錠45mg」が発売開始となります。

通常:1日2回、1回45mg

使用前の注意として、添付文書に記されている味覚関連の副作用(味覚不全、味覚消失、味覚減退、味覚障害)の発現割合:63.1%には十分注意が必要です。

 

以下に抹梢で作用する咳止め「リフヌア錠45mg」の特徴を調べるとともに、既存の咳止め治療薬の薬理作用との違いを記してみました。

リフヌア錠45mgの薬理作用

気道の迷走神経のC線維上に見られるAPT依存性イオンチャネルである選択咳P2X3受容体拮抗薬という新しい分野の治療薬です。

炎症又は刺激に応じて気道粘膜細胞はATPを放出し、それがP2X3受容体に結合すると、C線維が活性化されて咳が出ます。

 

リフヌア錠45mgを飲むと、P2X3受容体へのATPの伝達を遮断することができるため咳の誘発を抑える効果が期待されます。

 

既存の咳止めが脳(延髄)における咳反射を抑える薬が多かったのに対して、リフヌア錠45mgは気道粘膜細胞上における咳の誘発を抑えることができるため「末梢に作用する咳止め」として特徴的な薬剤と言えます。

 

通常、1回45mgを1日2回経口投与します。

食事の影響はうけません。

腎排泄薬剤であるため、重度の腎機能障害で透析を必要としない患者さんには1日1回45mgを経口投与します。

 

尚、透析を必要とする末期腎不全患者さんに対する十分なデータは得られておりません。

cough

リフヌア錠45mgの特徴的な副作用は

味覚不全:40.4%です。味覚異常が40%以上で起こりうる医薬品は、なかなかお目にかかることはありません。

 

味覚不全について、詳細を確認してみます。

味覚関連の副作用について

味覚不全、味覚消失、味覚減退、味覚障害、口の感覚鈍麻、流涎過多、口の錯覚感

上記のような味覚関連の副作用の発現頻度は63.1%とされており、大多数は投与開始から9日以内に発現しています。軽度又は中等度であり、投与中または投与中止により改善したと報告されています。また味覚関連副作用は暴露量依存的に増加する傾向が認められていると報告されています。

 

味覚に関する有害事象の発現割合は暴露量が1000~4000ng・hr/mlの間で急激に増加するが、45mg1日2回投与時の暴露量範囲での発現割合の増加は緩やかであったと報告されています。

 

リフヌア錠45mg服用による味覚異常に関しては、味覚情報を伝達するためにP2X3受容体やP2X2受容体、P2X4受容体などの味蕾において関与しており、これらの受容体にATPが結合することで味覚神経伝達が促されることが報告されています。

 

リフヌア錠45mgはP2X3受容体阻害薬ですので、咳を止めると同時に味覚情報の伝達も妨げてしまうため、味覚異常の副作用が生じやすいと考えられます。

 

ここまでが「末梢に作用する咳止め:リフヌア錠45mg」の特徴です。

 

以下に既存の「中枢に作用する既存の咳止め」の薬理作用を示します。

 

中枢性鎮咳薬の作用機序

アストミン・メジコンの薬理作用

 

アストミン:延髄の咳中枢に作用して、鎮咳作用を示す

メジコン:延髄の咳中枢に作用し、咳反射を抑制する

(アストミンはメジコンと類似構造体です。)

上記2剤は咳中枢においてσ受容体を介してNMDA受容体あるいは電位依存性Caチャネルを阻害することにより鎮咳作用を示すと考えられています。

 

延髄における孤束核とよばれる組織が気道における知覚情報を中継する部位と示唆されており、呼吸や咳嗽反射を伝達する重要な機関であることが報告されています。

 

NMDA受容体またはCaチャネル受容体が上記の情報伝達に寄与すると考えられており、アストミンやメジコンを服用するとσ受容体を遮断して、NMDA受容体またはCaチャネルを阻害することで、咳反射の情報伝達を妨げて、咳を鎮める効果が期待されると考えられています。

 

上記の作用を「咳中枢に作用し、鎮咳作用を示すと添付文書では表現されます。

アストミン・メジコンの薬理作用

 

アスベリン・フスタゾールの薬理作用

アスベリン:延髄の咳中枢を抑制して、咳の感受性を低下させ鎮咳作用を示す

フスタゾール:中枢性鎮咳作用薬

アスベリン・フスタゾールはともにGタンパク質共役型内向き整流性カリウムイオンチャネル(GIRKチャネル)を阻害する効果が確認されています(メジコンでも確認されています)

GIRKチャネルは百日咳毒素により活性化することが報告されており、このチャネルが活性化されると咳がとまらなくなります。一方、アスベリンやフスタゾールはこのGIRKチャネルを阻害することで咳を止める効果が期待されます。

GIRKチャネル阻害に関しては、咳止め効果だけでなく鎮痛作用や抗うつ効果に関する報告もあるようです。咳止めに関する詳細な薬理作用は確認できませんでした。

 

レスプレン錠

レスプレン:中枢性・非麻薬性の鎮咳作用と去痰作用を

粘液溶解性および気管支痙攣緩和作用が期待されます。フランスで開発された医薬品なのですが、米国や英国では販売されておらず、薬理作用の詳細に関する報告は見つけられませんでした。

 

フラベリック錠

フラベリック:咳中枢興奮性の低下、一部は肺伸張需要器からのインパルスの低下及び気管支弛緩作用による鎮咳作用

インタービューフォームに記載されている以上の薬理作用について検索しましたが、詳細に関する報告は見つけられてませんでした。

ジヒドロコデインの薬理作用

ジヒドロコデイン:咳中枢に作用して咳反射を抑制する

フスコデ:咳中枢に作用して咳反射を抑制する

麻薬性鎮咳薬です。オピオイド受容体のうち主としてμ受容体に作用して鎮咳効果をします。σ受容体およびκ受容体に対する親和性も多少はありますが、μ受容体への親和性と比べると、σ受容体の親和性は1/18、κ受容体の親和性は1/44と非常に低い値となっています。そのためジヒドロコデインによる鎮咳作用のメインはμ受容体による効果です。脳の延髄にある孤束核を介して、咳反射を抑えます。

 

上記が一般的に「咳止め」として処方されている医薬品です。中枢性の鎮咳薬がほとんどでした。

中枢性の鎮咳薬以外の「咳止め」としては「喘息治療薬」という分類になるかもしれませんが、気管支拡張剤というカテゴリーに「テオドール」「メプチン」などの薬があげられます。また麦門冬湯・小青竜湯などの漢方薬も処方されるケースが多いかと思います。

慢性咳嗽の成因となる咳感受性亢進機序

 

 

 

 

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業

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ojiyaku