パーキンソン病治療薬「サフィナミド錠(商品名:エクフィナ錠)が承認審議

パーキンソン病治療薬「エクフィナ錠50mg(サフィナミド)」が厚生労働省の新薬承認審議

2019年8月29日に行われる薬食審・医薬品第一部会にてパーキンソン病治療薬「エクフィナ錠50mg(サフィナミド)」が、新薬としての承認審議が行われることがわかりました。

2019年8月29日医薬品第一部会審議内容

エクフィナ錠50mgはは2015年に欧州医薬品庁によって承認されドイツではXadagoという商品名で販売されています。米国では217年3月にFDAによって承認された経緯があります。

エクフィナ錠50mgは選択的かつ可逆的MAO-B阻害薬という薬理作用でパーキンソン病を治療する薬です。既存で使用されているエフピーOD錠やアジレクト錠が非可逆的MAO-B阻害薬という分類であるのに対して、エクフィナ錠は”可逆的MAO-B阻害剤”という分類である点が異なります。

(非可逆的製剤:約14日間効き目が維持される、可逆的製剤:血中濃度が消失すれば効き目がOFFになる)

 

エクフィナ錠を服用すると、腸から迅速に吸収され1.8~2.8時間後に最高血濃度に到達します。(肝臓による初回通貨はほとんど受けず、生物学的利用率(バイオアベイラビリティ)は95%程度です)

エクフィナ錠は肝臓にて3段階ほど代謝された後、代謝物の形で腎臓経由で排泄されます(腎排泄率90%)。(便としては1.5%程度しか排泄されません)

 

また、エクフィナ錠は電位依存性ナトリウムおよびカルシウムチャネルを阻害する作用や、グルタミン酸放出抑制作用も有すると報じられていることから既存の治療薬とは異なる利点があるかもしれません。

 

パーキンソン病治療薬「サフィナミド錠」が国内臨床第Ⅱ/Ⅲ相試験において主要項目を達成

 

Meiji Seikaファルマが開発中のパーキンソン病治療薬「サフィナミド錠(治験薬コードME2125)」)が国内臨床第Ⅱ/Ⅲ相試験において主要項目を達成したことが発表されました。

サフィナミド錠は欧州やアメリカにてすでに医薬品として承認されており「Xadago」という製品名で使用されています。以下に海外における使用状況・薬理作用について記します。

サフィナミド錠が国内臨床第Ⅱ/Ⅲ相試験において主要項目を達成

薬理作用

モノアミンオキシダーゼB(MAO-B)を可逆的に阻害し、MAO-Aと比較して1000倍を超える選択性を有するという特徴があります。エフピーOD錠は非可逆的にMAO-Bを阻害していたのに対して、サフィナミド錠は可逆的にMAO-Bを阻害します。

 

上記の薬理作用に加えて、サフィナミド錠はグルタミン酸の放出を抑制し、ドパミン及びセロトニンの再取り込みも抑制するという報告があります。加えて、抗パーキンソン作用との関連は不明ですが、ナトリウムチャネルとカルシウムチャネルを阻害する働きもあります。

 

既存でレボドパの安定した投与を行なっていながらOFF時間が生じるパーキンソン病患者さんへの補助療法として国内で治験が行われております。

 

サフィナミド(アメリカでの販売名:Xadago)

Tmax:2〜3時間

バイオアベイラビリティ:95%

定常状態:服用後5〜6日以内に到達

排泄半減期:20〜26時間

排泄

尿中未変化体:5%

残り95%は3種類の代謝経路で代謝を受ける。いずれの代謝産物も活性を有していない

不活性代謝物の76%は腎排泄

サフィナミド錠が国内臨床第Ⅱ/Ⅲ相試験において主要項目を達成

治験データ:⑴

対象:レボドパ及び他の抗パーキンソン薬を使用しているにもかかわらず「OFF」時間を生じるパーキンソン患者さん645人

 

サフィナミド50mg/日服用群(217人)

サフィナミド100mg/日服用群(216人)

プラセボ服用群(212人)

 

という3群に振り分けて、ジスキネジアを伴わないON時間の変化を確認しています。

尚、レボトパ以外の併用薬としては、ドパミンアゴニスト(61%)、COMT阻害薬(24%)、抗コリン薬(37%)、アマンタジン(14%)となっていました。また、レボドパの1日平均投与量は630mg、パーキンソン病の平均期間は8年間となっています。

 

結果

ジスキネジアを伴わないON時間の変化

プラセボ群:9.3±2.2時間

サフィナミド50mg群:9.4±2.2時間

サフィナミド100mg群:9.6±2.5時間

 

OFF時間の変化

プラセボ群:5.3±2.1時間

サフィナミド50mg群:5.2±2.0時間

サフィナミド100mg群:5.2±2.2時間

治験データ:⑵

対象:レボドパ及び他の抗パーキンソン薬を使用しているにもかかわらず「OFF」時間を生じるパーキンソン患者さん549人

 

サフィナミド100mg/日服用群(274人)

プラセボ服用群(275人)

 

という2群に振り分けて、ジスキネジアを伴わないON時間の変化を確認しています。

尚、レボトパ以外の併用薬としては、ドパミンアゴニスト(74%)、COMT阻害薬(18%)、抗コリン薬(17%)、アマンタジン(30%)となっていました。また、レボドパの1日平均投与量は777mg、パーキンソン病の平均期間は9年間となっています。

 

結果

ジスキネジアを伴わないON時間の変化

プラセボ群:9.1±2.5時間

サフィナミド100mg群:9.3±2.4時間

 

OFF時間の変化

プラセボ群:5.36±2.00時間

サフィナミド100mg群:5.35±1.98時間

また、24週までのON時間の増加を伴う患者数の累積パーセンテージがサフィナミド服用群はプラセボ群よりも高いというデータが出ております。

レボドパ製剤は血中濃度があがりすぎるとジスキネジア症状を呈し、血中濃度が低すぎるウェアリングOFFとなってしまうため、血中濃度のレボドパ治療域の管理が重要な製剤です。これに加えて治療期間が長くなるにつれてレボドパの治療域が狭くなるという現状があるため、サフィナミドを加えることで治療域を広げることができることは有用な医薬品と感じます。(イメージ参照)

tab4

アメリカでの用法用量

1日1回50mg経口投与から開始(食事の影響は受けない)。2週間後、必要性に応じて1日1回100mgに増量可能。

 

100mgから中止する場合は、即中止するのではなく、1週間50mgに用量を落として服用してから中止すること。

 

注意事項

中等度の肝機能障害を有している患者様は1日1回50mgを服用すること

重度の肝機能障害を有している患者様には禁忌

 

副作用

  • 高血圧症
  • セロトニン症候群
  • ジスキネジー
  • 幻覚・衝動制御・強迫行動

など

 

禁忌

オピオイド薬

リネゾリド

など

Meiji Seikaファルマは今回の臨床試験結果を受けて2018年中での日本承認申請を目指しています。

サフィナミド錠が国内臨床第Ⅱ/Ⅲ相試験において主要項目を達成

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業