「腰の痛み」は成人における最も一般的な骨格筋系の疾患です。これは大人になってから発症するだけなく、若いころからの生活習慣が要因となることが多々あります。
青年期に骨格筋系の痛みを患うと、成人してからも腰痛を発症しやすいという報告があります。
今回は、20歳以下の青少年を対象として、座っている時間の長さと腰痛・頸部痛の発症リスクについて報告がありましたので以下にまとめます。
座っている時間に関しては、テレビ視聴、ビデオゲーム、パソコン、スマートフォンの使用中に座っている時間として評価し、対象者を1日のスクリーンタイムによって以下の3つのグループに分類します。
低座位時間群:1日の座位時間が3.25時間以下
中座位時間群:1日の座位時間が3.26~7.59時間
高座位時間群:1日の座位時間が7.6時間以上
参加者:ブラジルの公立・市立学校に通う10~17歳の生徒1011名(平均年齢13.1歳)を対象としています。
低座位時間群:26.5%(268名/1011名)
中座位時間群:51.9%(525名/1011名)
高座位時間群:21.6%(218名/1011名)
座っている時間が長い高座位時間群は全体の21.6%(218人)であり、腰痛発症率(18%)、頸部痛発症率(17.4%)でした。参加者のうち、座っている時間が長い参加者の特徴としては、年齢が高く、体重が重く、身長が高いという特徴がありました。また男子に関しては、l座っている時間が長い群に該当するヒトではウエスト周囲径が大きいという特徴が確認されました。
男児に関しては、低座位時間群と比較して中座位時間群で首の痛みが生じる割合が2.7倍高いというデータが示されました。
女児においても同様で、低座位時間群と比して、中座位時間群で首の痛みが生じる割合は1.8倍高く、高座位時間群では1.91倍高いという結果となりました。
男児では座位時間と腰痛と間に有意な関連は確認されませでした。一方、女児では低座位時間群と比較して、中座位時間群では腰痛の発症率が2.73倍、高座位時間群では腰痛発症率が2.49倍と高い関連が示されました。
今回の報告で、青年期のおよそ70%以上の割合で中等度(51.9%)または高度(21.6%)の座位行動群に含まれることが示されました。
また、中等度から高度の座位行動は、少年少女において頸部痛や腰痛と関連していることが示されました。もはや腰痛はお年寄りの病気とは言えませんね。
携帯型モバイル機器の使用率が拡大することで、使用する際の身体の姿勢の悪さが要因と考えられています。今回の報告以外にも、青年期においてコンピューターの使用時間の増加が上部背部痛と関連していることが報告されています。
長時間の坐位が背骨の硬直を助長し、解剖学的構造に影響を与え、腰痛・頸部痛につながる可能性が示唆されています。
スマートフォン使用年齢の若年化が今回の報告の一因と考えられており、青年期におけるスマートフォンの使用と首の痛み、タイピング中の肘、手首、手の屈曲に伴う肩の進展も、頸部痛の有病率の上昇に起因している可能性があります。
筆者らは、座位行動と腰痛・頸部痛との関連に関して、青年期(10~17歳)の男児・女児でも関連が確認されたことを受けて、スクリーンタイムを減らすことが骨格筋系の痛みの予防につながる可能性を示唆しています。