インフルエンザ治療薬のゾフルーザ錠20mg・ゾフルーザ顆粒2%分包に「インフルエンザの予防効果」が厚生労働省の薬食審医薬品第二部会(2020/10/30)で追加されました。ただし、12歳未満かつ20kg未満の小児への予防投与は不可となりました。
この理由として、耐性ウイルスの発現状況が考慮された結果としています。
注)ゾフルーザ錠10mgには予防投与の適応はありません。
注)海外においても2020年10月時点で予防投与が承認されている国はありません。
家族の1人がインフルエンザに感染した時、他の家族がインフルエンザにかからないためとして予防的にタミフルを飲むことがあります。ゾフルーザにも同様の予防効果があるかどうか調査が行われました。インフルエンザに感染した545人(73.6%が12歳未満)の家族752人を対象として、ゾフルーザまたはプラセボ(偽薬)を投与し、10日後のインフルエンザ発症率を評価しています。(ゾフルーザ群:374例、プラセボ群:375例)
注)インフルエンザ感染者の95.6%がインフルエンザAウイルス感染です。
結果
家族がインフルエンザを発症した割合
ゾフルーザ服用群:7例(1.9%)
プラセボ群:51例(13.6%)
上記の結果より、家族がインフルエンザに罹った場合、その家族がゾフルーザ錠を予防として服用することで86%のインフルエンザ感染を予防することができたと報告しています。
有害事象
ゾフルーザ服用群:22.2%
プラセボ群:20.5%
有害事象について両群間における有意差はありませんでした。
尚、ゾフルーザ服用群からは、いわゆる耐性菌としてI38T/Mが10人(2.7%)、E23Kが5人(1.3%)検出されています。
国立感染症研究所は2019年2月12日、2018/2019シーズンの抗インフルエンザ薬耐性株検出情報を公開しました。
(国立感染症研究所ホームページのアクセスが集中する時間帯は閲覧しにくいケースがあります)
2018/2019シーズンは2種類のインフルエンザA型が猛威をふるったために、国内では過去最大の感染率となったわけですが、抗インフルエンザ薬の耐性菌の出現率もインターネット上で話題となっていました。
抗インフルエンザ薬耐性検出情報(2018/2019シーズン)
インフルエンザA(H1N1):カッコ内の表記は(耐性株/解析株数)
ゾフルーザ錠:1.4%(1/72)
タミフル:0.2%(1/480)
ラピアクタ:0.2%(1/480)
リレンザ:0%(0/145)
イナビル:0%(0/145)
シンメトレル錠:100%(71/71)
インフルエンザA(H3N2(A香港型)):カッコ内の表記は(耐性株/解析株数)
ゾフルーザ錠:10.9%(5/46)
タミフル:0%(0/42)
ラピアクタ:0%(0/42)
リレンザ:0%(0/42)
イナビル:0%(0/42)
シンメトレル錠:100%(46/46)
インフルエンザB:カッコ内の表記は(耐性株/解析株数)
ゾフルーザ錠:0%(0/6)
タミフル:0%(0/8)
ラピアクタ:0%(0/8)
リレンザ:0%(0/8)
イナビル:0%(0/8)
シンメトレル錠:0%(0/8)
上記の中で目を引くのは、インフルエンザA(H3N2(A香港型))に対するゾフルーザの耐性出現率10.9%(5/46)という数値です。より細かいデータを確認してみたのですが、検出された5件のうち、2件は横浜市衛生研究所(神奈川)による報告で、残り3件は不明でした。そのため耐性株が地域に限局されているのか、広い範囲で拡大しているかは、現状ではわかりません。
インフルエンザの迅速キット「クイックナビ」などでインフルエンザ陽性・陰性を検査するケースが多いかと思うのですが、迅速キットではインフルエンザAの中でH1N1なのかH3N2なのかまではわかりません。
インフルエンザ分離・検出・報告数
A(H1N1):1102件
A(H3N2):750件
B:28件
報告数としてはH1N1が最も多く、次いでH3N2となっています。しかし実際の直近の情報としては2018年12月インフルエンザシーズンに入った当初A型(H1N1)が猛威をふるい、インフルエンザに罹患した7割の患者さんがH1N1型と報告されております。しかし、2019年1月に入りH1N1型の率が減少してくると、今度はH3N2型の感染率が上昇し、2019年の2月現時点では8割近い患者さんがH3N2型と報告されています。(H1N1型は3割程度です)
A(H1N1)の場合のゾフルーザ耐性率:1.4%(1/72)
A(H3N2)の場合のゾフルーザ耐性率:10.9%(5/46)
3歳児からゾフルーザ錠を飲む方法(はじめての玉の薬“錠剤”を飲む方法)
迅速キットの検査後、インフルエンザA型と判定した後は、
・上記の耐性率の数値
・地域の耐性菌発生率
・A型(H3N2)が流行している
といった指標をもとに、使用する薬剤を判断するかという感じでしょうか。