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レキサルティ錠(ブレクスピプラゾール:統合失調症)とエビリファイの比較

レキサルティ錠(ブレクスピプラゾール:統合失調症)とエビリファイの比較

追記:2019年5月9日

うつ病に対するレキサルティの補助療法は体重増加のリスクが増える?

統合失調症治療薬“レキサルティ錠”をうつ病の補助療法として半年間使用した場合の有効性・体重増加・食欲亢進に関する報告がありました。(2019年5月)

うつ病治療で抗うつ薬を使用している被験者2944人にレキサルティ錠(0.5~3mg/日可:可変用量)を服用開始したところ、1895人が半年間の長期服用調査期間を満了しました(64.4%が調査期間を満了しました)

結果

うつ病症状は継続てきな改善を示しており、有効性が確認されました。

 

有害事象に関しては

体重増加:17.7%

傾眠:8.0%

頭痛:7.2%

アカシジア:6.7%

食欲増進:6.3%

不眠症:6.3%

などが報告されております。錐体外路症状・プロラクチンレベルの上昇・コレステロール値・血糖値に関連する副作用報告は見られませんでした。

体重の増加については、服用から半年で2.7kg増、1年間の継続服用で3.2kg増が報告されています。また、服用開始時点と比較して7%以上の体重増加が確認された被験者の割合は25.8%と報告されました。

 

抗うつ病治療の補助療法でレキサルティ錠を使用した場合の、体重増加(17.7%)・食欲増進(6.3%)という副作用発現率に関してですが、統合失調症でレキサルティ錠を服用した場合は、体重増加率(3.1%)、食欲増亢進(0.5%)と報告されており、発現頻度に大きな違いがみられます。

 

レキサルティ錠は薬理学的には、体重増加・高脂血症・血糖上昇といった代謝性障害に関する有害事象は低いイメージがある薬剤であり、実際に統合失調症で使用した場合はセロクエルやジプレキサなどと比べて体重増加の有害事象は低い薬剤です。

 

しかし今回の報告を見る限りですと、セロトニンをUPさせる薬(またはセロトニン作動薬)とレキサルティを併用する場合は、現れる有限事象が変わる(食欲増進・体重増加の副作用が増える)可能性が示唆されるようにも読み取れます。今回の報告は被験者数が1900人規模の報告ですので、お薬を患者様にお渡しする際にどこまでを具体的にお伝えするかという判断には個人差があるかと思うのですが、SSRIやSNRIまたはセロトニン作動薬とレキサルティの併用による体重増加・食欲亢進リスクの変化については、臨床現場でも気に留めてよい有害事象なのかもしれません。

うつ病の補助療法としてレキサルティの有効性・安全性について(体重増加・食欲亢進リスクについて)

レキサルティ錠(ブレクスピプラゾール)1mg、2mgはセロトニン5-HT1A受容体部分アゴニスト作用、セロトニン5-HT2A受容体アンタゴニスト作用及びドパミンD2受容体部分アゴニスト作用を併せ持つ薬剤です。大塚製薬としては「Serotonin-Dopamine ActivityModulator(SDAM)と呼ばれる新しい作用機序を有しています」と売り出していますが、薬理作用としてはエビリファイと非常に類似していることから、エビリファイの後継という印象です。

レキサルティ錠の第Ⅲ相臨床試験データ

レキサルティ錠は、日本国内では「統合失調症」の適応症で承認可否が検討されますが、米国では成人の統合失調症と大うつ病補助療法という2つの適応症で2015年8月から医薬品として使用されています。

薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会(2017年12月4日)

レキサルティ錠の第3相臨床試験データを確認してみます。

636人を対象としてレキサルティ0.25mg、2mg、4mgの各用量で投与する群とプラセボ投与群を6週間投与した時の比較データによると、2mg、4mg投与群はプラセボ群と比較して陽性・陰性症状が改善しているが、レキサルティ0.25mg群はプラセボ群と同等だったとしています。

 

もう一つの試験報告として674人を対象にレキサルティ1mg、2mg、4mgの各用量で投与する群とプラセボ投与群を6週間投与した時の比較データによると、レキサルティ4mg群がプラセボ群と比較して陽性・陰性症状の改善がみられ、2mg、1mg群もデータ上の改善が示されています

 

 

代謝部位

レキサルティもエビリファイもどちらもCYP2D6、CYP3A4により代謝されます。臨床試験中はグレープフルーツ、オレンジなどの皮の厚い柑橘類は避けられていました。

 

レキサルティ錠の作用部位

セロトニン5HT1A受容体およびドーパミンD2、D3受容体に対して部分作用薬、セロトニン5HT2A、5HT2B、5HT7、α1A、α1B、α1Dおよびα2Cアドレナリン受容体の阻害薬と考えられています。抗コリン作動性効果はありません。上記の幅広い阻害作用によりエビリファイよりも広域の薬理作用が検討されています。

半減期

エビリファイ:61時間

レキサルティ:91時間であり、活性代謝物の半減期:86時間

レキサルティ:単回投与53~67時間、反復投与71~92時間

 

活性代謝物:DM-3411

レクサルティよりも受容体への親和性は低く、脳への移行性も低いため中枢作用への寄与は小さいと考えられる。

投与14日目での未変化体に対するDM-3411のAUCの割合は23~41%

 

レキサルティの主な副作用報告(第Ⅱ相臨床試験における副作用報告)

レキサルティ:プラセボ

上気道感染(6.9%:4.8%)

精神異常(6.6%:3.2%)

体重(6.3%:0.8%)

鼻咽頭炎(5%:1.6%)

 

第三相試験における副作用報告としては

頭痛・不眠および興奮が最も一般的な有害事象として報告されています。

エビリファイ錠の国内臨床段階での副作用報告は

・不眠27%、神経過敏14.8%、アカシジア11.7%、振戦10.5%、不安9.6%とされていましたので、レキサルティが医薬品として認可された際は副作用頻度がどの程度改善された製品であるかが一つのポイントになりそうです。

レキサルティの主な副作用報告(追記)

日本国内:アカシジア5.7%、高プロラクチン血症4%

海外:頭痛6.3%、不眠5.7%

エビリファイ錠はプロラクチンを低下させる印象を持っていたのですが、レキサルティ錠の国内副作用報告で高プロラクチン血症4%となっておりました。このあたりは注意が必要かもしれません。

 

レキサルティ錠は現在、米国において「アルツハイマー型認知症(AD)の行動障害(アジテーション)」を適応とした第III相試験が行われており、今後さらに双極性障害Ⅰ型につても第III相試験が行われる見通しです。

 

追記)

上記内容は海外におけるレキサルティ錠に関する報告をまとめたものでした。

 

2018年1月19日、レキサルティ錠の添付文書が公開されましたので、国内情報をもとに、レキサルティ錠とエビリファイ錠との具体的な違いについて確認してみます。

 

〜セロトニン5HT1A受容体アゴニスト作用(作動薬)〜

 

・レキサルティ錠

G蛋白質への最大結合量(Emax)=60%

ヒトセロトニン5HT1A受容体への結合親和性(Ki値)=0.12

 

・エビリファイ錠

G蛋白質への最大結合量(Emax)=73%

ヒトセロトニン5HT1A受容体への結合親和性(Ki値)=1.7

G蛋白質への最大結合量とは薬固有の活性値のことで、高ければ作用が強いという意味です。結合親和性とは受容体へ結合し続ける能力でして、値が低ければ長く結合できるということを意味します。

 

メーカーの学術へ確認したところ、レキサルティ錠はエビリファイ錠に比べて固有活性は2/3程度ですが、結合親和性が10倍以上高いため総合的な薬の力価としては強くなります。という回答を得ました。

 

セロトニン5HT1A受容体作用薬は人において抗うつ・抗不安作用を発現し、統合失調症による認知機能の改善が確認されています。また抗精神薬による錐体外路系副作用の軽減も報告されています。

 

〜セロトニン5HT2A受容体アンタゴニスト作用(拮抗作用)

 

・レキサルティ錠

ED50値:4.7mg/kg

ヒトセロトニン5HT2A受容体への結合親和性(Ki値)=0.47

 

・エビリファイ錠

ED50値:21mg/kg

ヒトセロトニン5HT2A受容体への結合親和性(Ki値)=4

 

ED50とは50%の反応を惹起する用量ですので、値が低いほど効き目が強い薬と言えます。レキサルティ錠はエビリファイ錠に比べてED50もKi値も低いことからセロトニン5HT2Aを強力に抑制することが確認できます。

5HT2A受容体アンタゴニスト作用とは感情鈍磨・自発性欠如・社会引きこもり等の陰性症状を改善するとともにD2受容体拮抗作用に伴う錐体外路系副作用を軽減する働き

 

〜ドパミンD2受容体部分アゴニスト作用(部分的作動薬)

 

  • レキサルティ錠

Emax:43%

レセルピン誘発DOPA蓄積最大抑制率:55%

ヒトドパミンD2受容体結合親和性(Ki値)=0.3

 

  • エビリファイ錠

Emax:61%

レセルピン誘発DOPA蓄積最大抑制率:89%

ヒトドパミンD2受容体結合親和性(Ki値)=0.34

 

レキサルティ錠はエビリファイ常に比べて固有活性が低く、Ki値が同程度です。レキサルティ錠のD2受容体へのアゴニスト作用はエビリファイより低いことがわかります。

 

コントミンなどの古くからある抗精神病薬はD2受容体拮抗作用により統合失調症の陽性症状に改善をもたらす反面、錐体外路系副作用や高プロラクチン血症といった副作用が問題となります。

 

エビリファイ錠はD2受容体のパーシャルアゴニストですので、これらのD2受容体拮抗薬における副作用を軽減する働きがありました。レキサルティ錠はD2受容体への力価がそれほど高くないと記されていますので、エビリフィ錠のような使用方法は難しいのかもしれません。

実際、D2受容体関係の副作用を確認してみると

  • エビリファイ錠

5%以上の副作用:アカシジア・振戦・流涎

1〜5%未満の副作用:プロラクチン低下

 

  • レキサルティ錠

5%以上の副作用:アカシジア

1〜5%未満の副作用:高プロラクチン血症

頓服で使用されるリスパダール内用液の効き目を検討する

上記のように、エビリファイ錠ではプロラクチン低下が多く報告されていたのに対して、レキサルティ錠では高プロラクチン血症の頻度が増えています。このあたりがD2受容体への作動性の差があらわれている気がします。

 

以上のことから、レキサルティ錠は構造式だけをみるとエビリファイ錠に似ていますが、効能効果・副作用には明確な差があることを認識して良いかと思います。

tab5

追記(2018/4/18)

日本人の統合失調症患者282例にレキサルティ錠1~4mg/日を52週投与したデータ

被験者282例(短期試験98例、新規患者184例)

陽性・陰性症状の評価尺度・CGI-S平均スコアともに安定

副作用報告:鼻咽頭炎23.1%、統合失調症症状の悪化22.4%

デパス・リーゼ・ソラナックス・ワイパックス・レキソタンの安定剤として効き目を薬物動態から考える

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業