ロナセン錠のジェネリック医薬品“ブロナンセリン錠”の薬物動態比較データ/ロナセンとハロペリドールの効果比較

ロナセン錠のジェネリック医薬品“ブロナンセリン錠”の薬物動態比較データ/ロナセンとハロペリドールの効果比較データ

2019年5月24日追記

2019年4月30日に、日本人の統合失調症患者さんを対象としたロナセン錠とハロペリドール錠の有効性・安全性を比較したデータが公開されましたので、その内容を追記いたします。

日本人の統合失調症患者さんを対象としたロナセン錠とハロペリドール錠の効果比較データ

ロナセン(ブロナンセリン)のジェネリック医薬品の発売が2019年6月中旬に迫ってきていますが、この時期に「日本人の統合失調症患者さんを対象としたロナセンとハロペリドール有効性・忍容性」を比較したデータが公開されました(ロナセンを製造販売している大日本住友製薬がスポンサー(資金提供)です)

 

16~64歳の統合失調症患者(日本人)261人を対象としてロナセン群(129人)、ハロペリドール群(132人)に振り分けて有効性・安全性が検討されたデータです。

 

ロナセン群:初回投与量1日8mg/日として、症状に応じて8~24mgまで用量調節

ハロペリドール群:初回投与量4mg/日として、症状に応じて4~12mgまで用量調節

 

結果

ロナセンを服用して有害事象等を理由に内服中止となった割合:24%

ハロペリドールを服用して有害事象等を理由に内服中止となった割合:29.1%

 

ロナセン群の治療成績

非常に改善した:17人(13.2%)

大幅に改善した:61人(47.3%)

最低限改善した:26人(20.2%)

トータル改善率:60.5%

 

ハロペリドール群の治療成績

非常に改善した:15人(11.4%)

大幅に改善した:51人(38.6%)

最低限改善した:33人(25%)

トータル改善率:50.0%

 

8週間服用した結果、ロナセン服用群はハロペリドール服用群と比較して最終的な統合失調症改善率が10.5%ほど高いという結果となりました。

 

統合失調症の陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の服用前・服用後の変化については

ロナセン群:-10.3±18.7

ハロペリドール群:-7.1±18.3

ともに服用前と比較して評価尺度が減っている(改善している)ことが確認されます。

特に陰性症状評価尺度に関しては

ロナセン群:-3.5±4.8

ハロペリドール群:-2.2±5.1

ロナセン群で有意にスコアの減少が確認されています(有意差あり)

 

有害事象発現率

ロナセン服用群の錐体外路系副作用発現率

震戦:30.2%

アカシジア:27.1%

ブラジキネジア:22.5%

歩行異常:20.2%

筋骨格系のこわばり:20.2%

 

ハロペリドール服用群の錐体外路系副作用発現率

震戦:44.7%

アカシジア:41.7%

ブラジキネジア:37.1%

歩行異常:27.3%

筋骨格系のこわばり:26.5%

 

錐体外路系の副作用に関してはロナセン服用群で発現頻度が低い結果となっています。

 

考察としてロナセン錠はハロペリドールと比較して忍容性が良く(副作用がおきにくく継続服用しやすい)、陰性症状の統合失調症の治療において有益であることが示されたとしています。(ただし、日本人を対象とした陰性症状改善治療に関しては、エビリファイやジプレキサの方が有効性が高いというデータが報告されています)

 

ロナセン錠による陰性症状改善効果の薬理作用は選択的ドパミンD3拮抗作用とセロトニン5HT2拮抗作用によるものと考えらており、ロナセン錠はD3受容体拮抗作用における占有率はリスペリドンやオランザピン・アリピプラゾールよりも高いことが報告されております。脳内のドパミンD3受容体が拮抗されると、社会的機能の改善、モチベーションアップ・動機改善につながるため陰性症状の改善が報告されております。

 

陰性症状:意欲がわかない・思考の停止・感情表現が乏しくなる

統合失調症に対するロナセンとハロペリドールの効果比較(日本人対象)

 

以下は2019年4月21日に記しましたロナセン錠のジェネリック医薬品の薬物動態比較データの記事です。

2019年6月中旬にロナセン錠のジェネリック医薬品“ブロナンセリン錠”が発売となります。各メーカーの添付文書を確認して、ブロナンセリン錠の薬物動態・添加物などの特徴をまとめました。

 

ブロナンセリン錠「DSPB」(DSファーマプロモ株式会社)

ロナセン錠のAG薬です。(ロナセン錠と薬物動態がまったく同じジェネリック医薬品です)

ブロナンセリン錠「DSEP」「YD」「トーワ」「ニプロ」

上記4メーカーから発売されるブロナンセリン錠の薬物動態は同じであることから、同一製剤と思われます。

添付文書にはブロナンセリン8mgの薬物動態が記されているのですが、先発と比較するとAUC、Cmaxの薬物動態が10%ほど低いようなデータとなっています。

添加物リスト:先発と同じです

錠剤径:4mgと8mgは先発と直径・厚さが同じです

 

ブロナンセリン錠「KN」

薬物動態は他社と比較して先発品に近いデータとなっています。

添加物リスト:先発と同じです

錠剤径:2mg、4mg、8mgすべての規格で先発品と直径・厚さ・重さが同じです

 

ブロナンセリン錠「アメル」

添付文書にはブロナンセリン4mgの薬物動態が記されているのですが、先発と比較するとAUC、Cmaxの薬物動態が10%ほど低いようなデータとなっています。

ブロナンセリン散2%の薬物動態を添付文書に掲載しています(ブロナンセリン散の薬物動態を開示しているのはアメルだけです)

添加物リスト:先発と同じです

錠剤径:4mgと8mgは先発と直径・厚さが同じです

ブロナンセリン錠「タカタ」

添付文書にはブロナンセリン8mgの薬物動態が記されているのですが、Cmaxが先発と比較して15%ほど低いデータとなっています。

添加物リスト:先発品は軽質無水ケイ酸を使用しているのに対して、「タカタ」は含水に酸ケイ素を使用している点が異なる点です。

錠剤径:すべての規格で先発品と若干の違いがあります

 

ブロナンセリン錠「日医工」

添付文書にはブロナンセリン4mg/8mgの2つの規格について薬物動態を開示しています。

4mg・8mgとも薬物動態が先発品によく似ている私は思います。

添加物リスト:先発と同じです

錠剤径:2mgは先発と直径・厚さが同じです。4mg・8mgは先発品と比較して厚さがそれぞれ0.1mmだけ薄いです。

私の個人的な感想ですが、ブロナンセリン「DSPB」(AG薬)を除けば、日医工製品が先発品に近い製品に思われます。

 

ブロナンセリン錠「サワイ」

添付文書にはブロナンセリン4mg/8mgの2つの規格について薬物動態を開示しています。

4mgの薬物動態は先発品に近いデータです。8mgの薬物動態は10~13%ほど先発品よりも低いデータとなっています。

添加物リスト:先発品よりも添加物リストが少ない!

錠剤径:2mg、4mg、8mgすべての規格で先発品と直径・厚さ・重さが同じです

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業