アルファカルシドール製剤やカルシトリオール製剤などのビタミンD製剤の出荷調整・出荷停止が続いており、医療現場への安定供給が難しい状態が続いてます。
ビタミンD製剤の出荷調整理由については、メーカーごとに異なり、
アルファカルシドール「アメル」:添加剤の変更届を行っていなかった。
エルデカルシトール「サワイ」「日医工」:包装販売規格をPTP100包装のみに制限
という理由です。特に原薬が欠品しているということではありません。
一部の報道で「ビタミンDが不足していると、新型コロナウイルスに感染しやすい」という報道がありました。今回は、その情報源について調べてみました。
本来ビタミンDはキノコ類や魚・卵黄に多く含まれてる成分であり、また紫外線を浴びた皮膚組織でも作ることができる成分です。血液中に吸収されたビタミンDは肝臓→腎臓を経由してパワーアップ(肝臓・腎臓で水酸化されます)して活性型ビタミンDとなり、骨を丈夫にしたり、免疫機能をサポートしたりと幅広い活躍をします。
有色人種(黒人や黄色人種)は白人と比較してビタミンDが少ないという報告は2013年11月に報告されました。
また、ビタミンDは紫外線をうけることで皮膚によって作られる成分ですので、日照時間が短い国(北欧など)ではビタミンDが不足しがちといわれています。
ビタミンDが少なめということは免疫機能も若干ですが少なめ?なので新型コロナウイルスにかかりやすい?という想像がなされました。
新型コロナウイルスは2019年末に北半球で広まったわけですが、ヨーロッパ諸国において、新型コロナによる死亡率とビタミンDの状態に関して調査された結果、血中ビタミンD濃度が低いと新型コロナ感染にかかりやすいというデータが報道されました。北半球において、北緯が高いほど(日照時間が短く、ビタミンD濃度が低いほど)感染しやすいというデータや、イングランドにおける黒人(肌が黒くビタミンD欠乏症になりやすい)では白人と比較して、新型コロナ感染死亡率が4倍以上というデータも開示されました。
また、別の報告ではビタミンDが少ない方はで新型コロナ感染リスクが3.3倍、新型コロナ重症リスクが5倍になることが報告されました。
ビタミンD欠乏症は新型コロナ感染リスクを3倍以上?
さて、これらの報道を見ると、「新型コロナ感染を防ぐためにビタミンDの治療が必要?」という流れになりそうですが、そこは少し過剰な気がします。
健康な方(腎機能・肝機能が低くない方)であれば、魚(鮭1切れ)程度で十分量が接種可能です。また夏場であれば10~20分の日光浴でも接種できるといわれています。(冬場は2~3倍程度の日照時間が必要)
上記の方法で、体内にビタミンDを取り入れることができれば、血液中のビタミンDは肝臓・腎臓を経由して活性型ビタミンDへ変換されて、骨を丈夫にし、免疫力もUPさせることが可能となります。
ではどのような方に対して、活性型ビタミンD製剤(アルファカルシドール)が必要かと言いますと、
「腎機能低下などの理由によりビタミンD→活性型ビタミンDへ変換できない人」
となります。
といことで、健常な方でビタミンDが足りてないなぁと感じる方の中で、新型コロナとビタミンDの関連報道を目にして、どうしても何とかしたいという方がおられましたら、魚を食べるなり、ビタミンDサプリメントをとるといった行動で対等可能と考えます。
アルファカルシドール製剤を製造している「共和薬品(アメル)」がアルファカルシドールの出荷を停止しました。共和薬品は、承認された製造方法とは異なる添加剤を加えているにも関わらず、変更届を行わずに、製造販売を続けていたことが判明したと説明しています。
共和薬品が「アルファカルシドール製剤」の供給を再開するためには、添加剤も含めた製造承認を取得した上で、「アルファカルシドール錠」を製造販売しなければなりません。1~2カ月で承認取得が得られることではないため、長期間出荷停止となります。
ビタミンD製剤には
「アルファカルシドール製剤」
「カルシトリオール製剤」
「エルデカルシトール製剤」
という3製剤があります。
当初、エルデカルシトール製剤(骨粗しょう症治療薬)のジェネリック医薬品を製造販売している「日医工」と「サワイ」が包装販売規格をPTP100包装のみにします。というアナウンスを5~7月に行いました。それに伴い、エルデカルシトール「日医工」、「サワイ」の入荷が難しくなり、先発品のエディロール(中外製薬)も7月7日から出荷調整がはいりました。
2011年にエルデカルシトール製剤が発売される前は「アルファカルシドール製剤」が骨粗しょう症治療における役割を担っていましたので、医療現場の感覚としては
「エルデカルシトールが入荷できないのであれば、アルファカルシドールを入荷しよう」
という楽観的な感じだったかのかもしれません。
しかし、この状況で「アルファカルシドール「アメル」供給休止」というニュースが流れました。
これにより、あらゆるビタミンD3製剤の入荷が難しくなりました。
(カルシトリオール製剤の入荷も難しくなりました)
厚生労働省の見解としては
1:エルデカルシトールをアルファカルシドールに変更することは避ける
2:新規に骨粗しょう症治療を開始する場合は、エルデカルシトールやアルファカルシドールは避ける
3:アルファカルシドールもしくはエルデカルシトールを他の薬剤と併用している場合は、必要性を検討し、短期間休薬できるようであれば一旦休薬する
4;デノスマブと併用の場合は、可能であれば沈降炭酸Ca、コレカルシフェロール、デノタスチュアブル配合錠に変更する
5:エルデカルシトールやアルファカルシドールを単剤で処方の場合は、他の薬剤への変更を検討する
6:アルファカルシドール・エルデカルシトールを処方する場合は、できる限り長期処方を避ける(30日処方までとする)
という対応例を公開しました。
さて、ここで厚生労働省が協力を要請している「優先的に必要とされる患者さん」について記します。
「副甲状腺機能低下症」
「腎不全に伴う続発性副甲状腺機能亢進症」
「くる病・骨軟化症患者」
上記はいずれも血液中のカルシウムが不足している患者様の病気です。
活性型ビタミンD3は食事中に含まれるカルシウムを腸管から吸収しやすくする効果がありますが、活性型ビタミンD3が不足してしまうと、カルシウムを補給することができず、上記の病気になってしまいます。
本来であれば、私たちは魚介類やキノコ類・卵類などの食事中に含まれるビタミンDや、日光浴により皮膚で合成されたビタミンDを肝臓と腎臓の機能を活用して“活性型ビタミンD3”を作り出す能力が備わっています。
しかし、腎機能が低下している方では、腎臓の働きが悪いため、血液中を流れて到達してきた十分量のビタミンDを活性型ビタミンD3に作り上げることができません。
その結果、血液中の活性型ビタミンD3量が少なくなり、カルシウムの吸収量が低下してしまいます。
上記の経緯を踏まえ、厚生労働省は「体の中で十分量の活性型ビタミンD3を作ることができない方」を最優先に「アルファカルシドール製剤」を供給してくださいという通知をだしたということです。