レルパックス・イミグラン・ゾーミッグ・アマージ・マクサルトといったトリプタン家の頭痛薬の使用上の注意欄に
「薬剤の使用過多による頭痛」に関する以下の重要な基本的注意が追加されました。
本剤を含むトリプタン系薬剤により、頭痛が悪化することがあるので、頭痛の改善を認めない場合には、「薬剤の使用過多による頭痛」可能性を考慮し、投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
薬剤使用過多による頭痛は頭痛症状の1種で、一般的には“薬物乱用頭痛”と呼ばれます。頭痛薬を使用している本人にしてみれば、頭が痛いから頭痛薬を使用しただけであり“乱用”とい呼ばれることは心外かもしれませんが、一般的な使用頻度よりも多いことを乱用と表現している感じかと思います。
使用頻度としてはトリプタン系頭痛薬を1カ月に10回以上、3カ月を超えて頻用していることで生じる頭痛を薬物乱用頭痛の診断基準としています。
また、トリプタン系頭痛薬を使用して薬物乱用頭痛を発症するまでの期間としては1カ月に18回トリプタン系頭痛薬を使用していて、1.7年間経過したころに発症するケースが多いと報告されています。
薬物乱用頭痛の発現頻度は頭痛全体の1~2%程度と考えられており、緊張型頭痛、片頭痛に次いで3番目に多い頭痛症状です。(女性が70%程度と発現比率が高い)ですので、それほど特別な疾患でもありません。
薬物乱用頭痛の治療の原則は原因薬剤の中止です。中止方法には即時中止と漸減中止の2種類が考えられますが、国内報告によると漸減中止よりも即時中止の方が薬物乱用頭痛の再発例が少ないと報告されています。
また、該当薬剤を注意した後の反跳頭痛が生じるケースもありますが、トリプタン系頭痛薬は、NSAIDSやエルゴタミンと比較すると予後は良いようです(短期間に改善されることが報告されています)
薬物乱用頭痛の予防薬・治療薬としてはデパケン・ミグシス・インデラル・トピナ・トリプタノールなどの薬剤を、該当薬剤を中止する際や、中止前から服用することが考えられます。
薬物乱用頭痛の予防薬としてトピナを使用した報告例を確認してみました。
1カ月間に15日以上頭痛を経験している18~65歳の方を対象として、トピナ錠を1日100mg服用した群(153人)とプラセボ(偽薬)を服用した群(153人)を3カ月間ほど服用したところ、頭痛発症日数の減少が確認されました。
トピナ錠服用群:―5.6日(1カ月間に頭痛を感じた日数が5.6日減った)
プラセボ群;-4.1日(1カ月間に頭痛を感じた日数が4.1日減った)
(トピナ錠服用群の有害事象;感覚異常:46人(28.8%)、上気道炎:22人(13.8%)、疲労・悪心:13人(8.1%))
薬物乱用頭痛の予防薬としてトリプタノールを使用した報告例を確認してみました。
薬物離脱療法を行っても頭痛症状が改善しなかった22名を対象としてトリプタノールが投与されたところ、そのうちの10人(36%)が1カ月間に頭痛を感じた日数の減少が報告されています。
薬物乱用頭痛の離脱治療後の再発率は30%程度と報告されており、離脱後も定期的な頭痛回数や頭痛薬の使用状況を確認する必要があるとしています。