向精神薬処方の適正化としてベンゾジアゼピン受容体作動薬を1年以上連続して同一の用法・用量で処方した場合は
処方料:420円→290円
処方せん料:680円→400円
へ、それぞれ減算となります。
注)ただし、いかに該当する場合は除く
・不安または不眠に係る適切な研修を終了した医師であること
・精神科薬物療法に係る適切な研修を終了した医師であること
このルールは平成30年4月以降の処方について制度化されておりますので、平成31年3月31日までの1年間、ベンゾジアゼピン系の安定剤・睡眠剤を同一用法・用量で処方されていた場合は減算措置が適応されます。
そのためかどうかはわかりませんが、最近調剤する処方箋でベンゾジアゼピン系睡眠剤からベルソムラへ変更している処方箋をしばしば見かけるようになりました。そこで、今回はベンゾジアゼピン系睡眠剤からベルソムラへ切り替えた場合の効果に関する報告を調べてみました。
ベンゾジアゼピン系睡眠剤としてジアゼパム当量8.5mgを服用していた患者さん119名の眠剤をベルソムラ20mg(または15mg)へ切り替えたところ、約半分の患者さんはベンゾジアゼピン系睡眠剤を中止することができた。一方で、リバウンド不眠症(ベンゾジアゼピン系睡眠剤がなくなったことによる不眠)による禁断症状リスクが有意に高かったとも報告されています。
注)ジアゼパム当量8.5mgの例
レンドルミン0.25mg:1.7錠
ハルシオン0.25mg:1.7錠
マイスリー10mg:1.7錠
サイレース1mg:1.7錠
1年以上にわたり、上記の量のベンゾジアゼピン系睡眠剤を使用していた患者さんは(程度は様々ですが)、ベンゾジアゼピン依存状態となっている可能性があるため、急激な中止、他剤への変更はリバウンド不眠症を引き起こす可能性があると示唆しています。
おおよおその目安ですが、ジアゼパム換算で、1か月あたり約5mgずつ減量していく(または、1~2週間ごとに1mgずつ減量していく)と、ベンゾジアゼピン系による離脱症状を軽減しながら切り替えていくことが可能という報告がなされています。
そのため、ベルソムラへ変更したところ「眠れない」と感じた残り半分の患者さんについては、「ベルソムラが効かない」という解釈ではなく、「ベンゾジアゼピンを急に中止した」という理由で眠れなくなる可能性を考慮する必要があります。
ベンゾジアゼピン系からベルソムラへの切り替え・オンした場合の報告
眠ることへの不安が原因となって「寝つけない」ために睡眠導入剤を使用している方も多くおります。プラセボ(偽薬)を「睡眠薬です」として使用した場合の効果を、何も飲まなかった群と比較したデータ(n=566)では
寝付くまでの時間が16分間改善
総睡眠時間が18分間改善
上記より、入眠時間短縮・総睡眠時間の延長によるトータルとしての睡眠の質が改善したという報告もなされています。
平成31年4月以降は、ベンゾジアゼピン系睡眠薬からベルソムラへ変更する処方が増えるかも?
ベンゾジアゼピン系睡眠薬からベルソムラへ変更する際は、ベルソムラの服用を開始するとともに、ベンゾジアゼピン系睡眠薬を徐々に減らしていくと、うまく切り替えが進むかもしれない
「睡眠薬ですよ」とプラセボ(偽薬)を服用した場合の睡眠効果はゼロではない