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抗生剤による腸内フローラ環境の変動を防ぐ活性炭吸着剤“DAV132”の臨床効果について

抗生剤による腸内フローラ環境の変動を防ぐ活性炭吸着剤“DAV132”の臨床効果について

 

抗生剤や抗菌剤は細菌感染の治療薬として使用されますが、腸管内に存在する善玉菌に対しても抗菌作用を示すため腸内フローラ環境を悪化させることが懸念されています。

これは経口投与された抗生剤に限らず、点滴として血管内に投与された抗生剤においても同様で、血液中の薬物が胆管を経て十二指腸管内に分泌されたのち腸管から再度吸収されて肝臓に戻る(腸肝循環)というルートを介して、点滴投与された抗生剤が腸内フローラへ影響することが報告されています。

大腸における抗生剤の吸着剤DAV132の効果

今回は抗生剤による腸内フローラの悪化を最小限に抑えるための医薬品“活性炭吸着剤DAV132”に関する臨床効果を確認してみました。

 

DAV132とは1包7.5gの活性炭吸着剤です。DAV132は特殊コーティングされた活性炭であるため上部消化管では薬理作用を示さず、回腸以降の下部消化管で吸着活性炭としての薬理作用を示す薬物輸送システムを採製した製剤です。下部消化管において抗生剤と不可逆的に結合して糞便として排泄させることができるため大腸における微生物への影響を減少させることが可能な製剤となっています。

dav132-microbiome-antibiotics

臨床報告

 

被験者:28名

膀胱炎に対して良く効く抗生剤を最小発育阻止濃度から検証する

抗菌剤アベロックス400mgを1日1回朝食後に5日間連続服用する被験者に対してDAV132(7.5g)またはプラセボ(7.5g)を1日3回食前に1日目から7日目まで経口投与したときの糞便および血漿サンプル中の薬物濃度、腸内フローラ環境を検証しています。

 

結果

 

〇アベロックスの血中濃度

アベロックス+プラセボ服用群

1日目

AUC:42.1㎍/ml・h

Cmax:4.02㎍/ml

 

5日目

AUC:57.6㎍/ml・h

Cmax:4.89㎍/ml

 

アベロックス+DAV132(7.5g)

1日目

AUC:41.9㎍/ml・h

Cmax:4.63㎍/ml

 

5日目

AUC:50.5㎍/ml・h

Cmax:4.60㎍/ml

 

上記の結果よりアベロックスの血中濃度はDAV132の服用可否を問わず同程度であることが示されました。この理由としてアベロックスが上部消化管で十分量が吸収されているためであり、下部消化管にてDAV132と結合しても血中への吸収量に影響しないためだと思われます。

〇糞便中の遊離アベロックス濃度

アベロックス+プラセボ群

6日目に最高濃度136.2㎍/gとなり、その後16日目に検出不能レベルとなった。

(幾何平均値:699.2㎍/g/日)

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アベロックス+DAV132群

2~3日目で最高濃度1~14㎍/gとなった

(幾何平均値:6.4㎍/g/日)

 

糞便中の遊離アベロックス濃度はDAV132を併用することで99%低下したことが示されました。(ほとんどのアベロックスは下部消化管内で活性炭吸着剤と結合して排泄されたため)

 

〇腸内フローラ環境

 

アベロックス+プラセボ群

服用6日目にベースライン値の54.6%にまで腸内細菌数が減少し、37日目においても初期値に戻らなかった。

(およその腸内細菌数:初期値45万→6日目25万→37日目35万)

 

アベロックス+DAV132群

およその腸内細菌数:初期値45万→6日目42万→37日目40万)

 

DAV132を併用することで腸内フローラ環境が保たれることが示されました。

今回の試験はニューキノロン系抗菌剤アベロックスとDAV132との吸着性に関して行われましたが、他の抗生剤との吸着性を確認してみるとニューキノロン系とDAV132は99%以上の吸着率が示されており、セフェム系においても95%以上の吸着性が示されております。そのためニューキノロンおよびセフェム系に関しては同程度の臨床データになることが示唆されます。

 

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DAV132は腸管から吸収されないため安全性に関しては血液中の電解質や凝固パラメーターに影響を与えることはありません。

 

DAV132が開発された経緯

抗生剤の使用により腸内微生物叢(腸内フローラ)が乱れ、腸内環境が元に戻るまでには数か月を要することもあります。その間に、善玉菌が減少し、一部の悪玉菌が腸内で増殖することでクロストリジウム・ディフィシル感染を引き起こす可能性があります。DAV132はクロストリジウム・ディフィシル感染の出現および再発を予防するために開発された製剤です。

 

健常者における軽度の腸炎であれば、従来の治療(抗生剤の単独投与や抗生剤と耐性乳酸菌製剤投与)で十分かと思われますが、易感染者や抗生剤の長期使用患者においてはDAV132製剤の有用性があるのかもしれません。

 

1日3回1回7.5gの活性炭吸着剤を飲むという作業は非常に過酷な作業です。国内で使用されている活性炭吸着剤にはクレメジン細粒があります。クレメジン細粒は1日3回1回2gを服用しますが、DAV132は1回服用量が7.5gとなっておりクレメジン細粒の3倍以上の活性炭を1度飲まなければなりません。DAV132が国内で医薬品として認可されるかはわかりませんが、状況により必要とされる患者様にとって使用されたらいいなぁと感じました。

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ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業