おじさん薬剤師の日記

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抗生剤

ニキビ(痤瘡)に対してミノマイシンを長期間使用して良い理由

投稿日:2017年11月15日 更新日:

ニキビ(痤瘡)に対してミノマイシンを長期間使用して良い理由

皮膚科門前の薬局で勤務していると、ニキビ(尋常性痤瘡)治療のためにミノマイシンの処方をよく目にします。ミノマイシンの処方量は患者さんの皮膚状況により異なりますが、

・ミノマイシン50mg 3錠/3×
・ミノマイシン50mg 2錠/2×

という処方が多いように感じます。

この量は、ミノマイシンの常用量である「200mg/2×」よりも少ない量です。さらに処方日数は14日間や28日間というように、通常の抗生剤の使用日数よりも長めで処方されることが多々あります。

膀胱炎に対して良く効く抗生剤を最小発育阻止濃度から検証する

そこで今回は、ニキビ(尋常性痤瘡)治療における、低用量ミノマイシンを長期間服用して良い理由について調べてみました。

日本皮膚科学会の尋常性痤瘡治療(ニキビ治療)ガイドラインにはニキビに対する抗生剤の効き目が推奨度の分類として評価されています
・ミノマイシン、ビブラマイシン:評価A:内服を強く推奨する
・ルリッド:評価B:内服を推奨する
・エリスロシン、クラリス、シプロキサン、クラビット、ファロム、オラセフなど
 評価C1:内服を選択肢の1つとして推奨する

と評価されています。

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それでは、上記薬剤のニキビに対する効果を調べてみます。

ニキビの原因菌であるアクネ菌(Propionibacterium acnes)に対するミノマイシンの感受性について

ニキビの原因菌であるアクネ菌に対して、ミノマイシンを含む抗生剤がどれほど効果があるかについて、抗生剤の効き目の指標である最小発育阻止濃度(MIC)を調べてみました。
(最小発育阻止濃度:微生物を視認できる発育を阻止するのに必要な抗生剤の最小濃度のこと。この量が少なければ、少量で良く効く抗生剤と判断できます)

臨床分離菌として採取されたアクネ菌(Propionibacterium acnes)に対してMIC80(アクネ菌の発育を8割抑制する)となる各抗生剤の濃度は
サワシリン:0.015μg/ml
フロモックス:0.05μg/ml
ジスロマック:0.05μg/ml
ファロム:0.05μg/ml
ミノマイシン:0.063μg/ml
ルリッド:0.135μg/ml
スオード:0.2μg/ml
オゼックス:0.78μg/ml
というデータとなっています。

MIC値が小さいほど、少量で効果的にアクネ菌を抑制するというデータですので、上記薬剤の中ではサワシリンの力価が一番高い事になります。ミノマイシンの値も悪いわけではありませんが、最善というわけではありません。

膀胱炎に効果的な抗生剤を検討

アクネ菌への抗菌作用をしめすためには抗生剤の力価に加えて、皮膚への組織移行性にも着目する必要があります。次にミノマイシンを含む上記抗生剤が皮膚へどの程度移行するかについて血中濃度を100%として調べてみました。(インタビューフォームより)

皮膚への移行性について
サワシリン:データなし
フロモックス:50%程度
ジスロマック:300%
ファロム:20%程度
ミノマイシン:100%
ルリッド:50%
スオード:100%
オゼックス:100%

一般的に皮膚への移行性はマクロライドやキノロン系が優れており、テトラサイクリン系が中程度、セフェム系を含むβラクタム系は劣ると言われていますが、インタビューフォームのデータを拾ってみると、まさにそのようなデータとなりました。

まとめ
ミノマイシンを服用すると血中濃度と同程度の濃度が皮膚へと移行し抗菌作用を示します。さらにニキビ(尋常性痤瘡)の原因菌であるアクネ菌への感受性が高い(少量で良く効く)薬剤であるため、常用量よりも少ない量を服用してもニキビ治療に十分な効力を発揮する薬であることがわかりました。

バクタ配合錠を連日服用する意味について

また、ミノマイシンは抗菌作用のみならず、アクネ菌が作り出すリパーゼの活性を抑制作用や、白血球遊走抑制作用、活性酸素抑制作用なども知られており、ニキビ(痤瘡)に対して抗炎症作用を期待して処方されることもあります。ミノマイシンが長期で処方される場合は抗菌作用もさることながら、抗炎症作用に重点を置いて処方されているためかもしれません。

セフェム系薬剤は、アクネ菌への感受性は高いものの、皮膚への組織移行性が低い。
キノロン系は皮膚への組織移行性は高いものの、アクネ菌への感受性が低いというデメリットがあるためあまり使われないようです。
マクロライドはアクネ菌への感受性が高く、皮膚への組織移行性も高いためニキビ(痤瘡)治療に使われています。

膀胱炎に効果的な抗生剤を検討

 

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-ニキビ治療, ミノマイシン, 抗生剤

執筆者:ojiyaku


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