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DPP4-阻害剤の重大な副作用に「急性膵炎」「類天疱瘡」が追加となる

DPP4-阻害剤の重大な副作用に「急性膵炎」「類天疱瘡」が追加となる

 

厚生労働省はトラゼンタやスイニーなど、DPP-4阻害剤の重大な副作用に「急性膵炎」「類天疱瘡」を追加することを公開しました。先行発売の同類薬であるジャヌビアやエクアの添付文書にはすでに上記の重大な副作用が記されておりましたのでDPP-4阻害剤に共通する副作用と捉えていいのかと思われます。

急性膵炎報告例

・スイニー(年間使用患者数約14万人)

急性膵炎関連症例:2例

 

トラゼンタ(年間使用患者数約91万人)

急性膵炎関連症例:5例

スイニー服用による急性膵炎・類天疱瘡の発症と治療経過

テネリア(年間使用患者数約47万人)

急性膵炎関連症例:4例

tab7

カナリア配合錠(年間使用患者数約5万7千人

急性膵炎関連症例:0例

類天疱瘡発症の報告例

急性膵炎発症までの概要

 

例1

スイニー100mg 1T/1×朝食後で服用開始

投与36日目で右季肋部,背部が急に痛くなり,当院救急外来を受診。血液 検査でアミラーゼ上昇(2,739IU/L)を認め,急性膵炎と診 断し緊急入院。スイニーの投与を中止し,膵炎治療を施行

投与64日目(スイニー中止28日後)膵炎の再発は認めず。全身状態は良好。

 

例2

スイニー100mg 1T/1×朝食後で服用開始

投与26日目、血糖コントロール不良のため200mg/2×朝夕食後に増量

投与34日目、昼食数口のみの摂取。めまいと右上腹部痛を訴え,少量嘔吐。 腹部痛,板状硬あり。 2時間後,グリセリン浣腸施行し,反応便あり。食事及び投薬を中止。

投与49日目(スイニー中止15日後)急性膵炎は軽快

 

上記の2例の報告ではスイニー服用から1か月程度で急性膵炎の自覚症状である“持続的な激しい複数・嘔吐などの初期症状が現れています。スイニーを含むDPP-4阻害剤の服用を開始する患者様にお薬をお渡しする際は、念のためとしてお伝えしたもいいかと思われます。

類天疱瘡報告例

 

・マリゼブ

類天疱瘡関連症例:8例

 

・ザファティック

類天疱瘡関連症例:7例

 

・オングリザ

類天疱瘡関連症例:4例

 

・スイニー(年間使用患者数約14万人)

類天疱瘡関連症例:1例

メトグルコ服用と体重増減について

類天疱瘡発症までの概要

スイニー100mg2T/2×で服用開始

投与209日目(7か月目)に全身に紅斑とそう痒が発現。

投与217日目、 皮膚生検にて表皮 下水疱と,IF(免疫蛍光法)にて基底膜部にIgG,C3の沈着 あり,水疱性類天疱瘡と診断。

投与238日目、水疱増悪。クロベタゾールプロピオン酸エステル軟膏外用開始。スイニーの投与を中止。

525日目(中止287日後)、水疱性類天疱瘡は軽快。

スイニー服用による急性膵炎・類天疱瘡の発症と治療経過

上記の治療経過を見るとDPP-4阻害剤の服用を開始して200日以上が経過してから発症していますので、副作用を早期発見するためには継続的な確認が必要であると感じました。

類天疱瘡発症の報告例

動物性脂肪の摂取がDPP4阻害薬の作用を減弱する

 

日本人を対象としたDPP4阻害薬に関する興味深い報告がありました。報告によると動物性脂肪(飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸)の摂取量が多い人はDPP4阻害薬の効果が減弱するというものです(HbA1cが下がりにくいという報告です)

2006年9月から2017年6月までの約11年間においてDPP4阻害薬を単剤で1年間処方変更なく継続服用した2型糖尿病患者さんをピックアップして、 HbA1cの変動状況と食生活についての関係を報告しています。

 

結果、DPP4阻害薬の服用を開始して半年から1年において、HbA1cが上昇していた群は体重も増加しており、さらに食生活調査の結果、飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸の摂取量が有意に高いことが示されました。

 

炭水化物及びタンパク質の摂取量に関してはHbA1c維持群・上昇群ともに群間差は見られませんでした。

飽和脂肪酸(動物性脂肪)の取りすぎはDPP4阻害薬の作用を減弱する

この結果から、DPP4阻害剤単独療法におけるHbA1c低下効果において、過剰の飽和脂肪酸摂取は薬の効果を減弱させる可能性があると筆者らはまとめています。

 

飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸とは動物性脂肪に多く含まれている脂肪酸のことで、代表的な食品としては

バター・生クリーム・ラード・鶏皮・牛サーロイン・チーズ・ベーコンなど

年末年始の暴飲暴食によるメトグルコとアルコールの危険性について

加工食品として動物性脂肪が多い食品としては

カップ麺(インスタントラーメン)・ウインナー・チョコレート・ピーナッツバターなど

動物性脂肪の覚え方としては“常温・室温で固まっている油“です。常温で固まっている油を多く含む食品の取りすぎはDPP4阻害剤による糖尿病治療の妨げとなる可能性が報告されましたので、今後DPP4阻害剤を初めて服用する患者様には上記のような国内報告が上がっていることをお伝えしてもいいのかもしれません。

 

そもそもDPP4阻害剤は、その働きの一つに消化管の運動を遅らせて、食欲を抑える効果が備わっている薬だと認識しております。この働きを持つDPP4阻害剤を1年間服用してからも、体重増加が続くという患者様がいらっしゃった場合、これまでは「食べ過ぎ!」という認識でとどまってしまっておりました。

メトグルコ服用と体重増減について

しかし、今回の報告を受けて

「もしかしたら動物性脂肪の取りすぎかも・・」

と、より具体的な食品までお伝え出来るかもしれません。

 

調剤薬局で出来ることには限りがありますが、今回のような報告は調剤薬局においてお薬をお渡しした後の「プラス一言」としても活用出来るかもしれません。

年末年始の暴飲暴食によるメトグルコとアルコールの危険性について

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業