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ルコナック爪外用液5%とクレナフィン爪外用液10%との比較

ルコナック爪外用液5%とクレナフィン爪外用液10%との比較

佐藤製薬およびポーラファルマからの併売で2016年にルコナック爪外用液5%が発売となります。爪外用液製剤としては2014年に発売されたクレナフィン爪外用液10%が現在、爪白癬治療の中心となっています。クレナフィン爪外用液は爪白癬の原因真菌に対して強い抗真菌活性を有するだけでなく、爪ケラチンへの親和性が低いため、爪甲への透過性にすぐれていることが特徴です。クレナフィン爪外用液は爪表面に塗布することで爪中・爪床において高い抗真菌活性を発揮することが示唆された唯一の外用薬です。

2016年に発売となるルコナック爪外用液5%は2剤目の爪外用液となります。おそらくですが、ルコナック爪外用液5%は今後の爪白癬治療の一翼を担う薬になっていくものと思われます。そこで今回はルコナック爪外用液5%とクレナフィン爪外用液10%の臨床成績および抗真菌活性について調べてみました。

水虫の薬が効かなくなることはないのか

ルコナック爪外用液5%について
ルコナック爪外用液5%の主成分であるルリコナゾールは既存の抗真菌外用薬ルリコンクリーム・軟膏・液1%と同じです。違いは濃度が1%から5%に上がっている点です。ルリコン1%といえば白癬菌に対するMIC90が非常に小さい薬という認識があります。つまり他の抗真菌薬に比べて少量で非常に効く薬といえます。抗真菌薬の力価でいえばルリコンは最上位に分類されるでしょう。しかしそんな既存のルリコン液でさえ爪内部のケラチンと付着してしまうために爪内部まで浸透することができず、これまで爪白癬の適応を得ることができませんでした。

軟膏を皮膚に塗ってから吸収されて効果がでるまでの時間について

今回発売となるルコナック爪外用液は濃度を5%に高め、爪内部のケラチンへの親和性をさげることで爪表面だけでなく爪内部にまで浸透する性質を備えています。これにより爪白癬の適応取得に至ったわけです。ルリコンと同一成分・高濃度と聞くだけで効果が期待できる製品に感じられます。実際の臨床データおよび試験管内データを確認してみます。

 

~最小発育阻止濃度MIC90~

最小発育阻止濃度(90%以上の菌株を阻止する採用薬物濃度のこと。少ないほどよく効く薬という指標となります)

○クレナフィン爪外用液10%のMIC90
紅色白癬菌(T.rubrum):0.008㎍/ml
毛瘡白癬菌(T.mentagrophytes):0.015㎍/ml

○ルコナック爪外用液5%のMIC90
紅色白癬菌(T.rubrum):0.001㎍/ml
毛瘡白癬菌(T.mentagrophytes):0.001㎍/ml

クレナフィン爪外用液の抗真菌作用データは素晴らしい数値なのですが、ルコナック爪外用液のMIC90は、その数値をさらに上回るデータとなっています。ルコナック爪外用液の力価の高さがうかがえます。

~爪中濃度~

クレナフィン爪外用液10%:3041㎍/g(4週間反復投与)
ルコナック爪外用液5%:16439㎍/g(5週間反復投与)
上記数値はいずれもMIC90にくらべて数百倍から数万倍の濃度です。十分な濃度の薬剤が爪中まで届いていることがわかります。

抗真菌薬(水虫薬)の効果を比較する

~爪白癬完全治癒率~

クレナフィン爪外用液10%:15.2%(1年間毎日使用した時のデータ)
ルコナック爪外用液5%:14.9%(1年間(48週)毎日使用した時のデータ)

軟膏が皮膚から吸収されるまでの時間について
どちらの薬剤も15%程度の治癒率であることがわかります。思ったほど完全治癒率が高くないと感じるかもしれません。一般的に爪白癬は、水虫(足白癬)を長期間放置しておくことで皮膚から爪へ進行することで生じる疾患です。そのため爪白癬だけの治療では完全治癒率を上昇させることは難しい疾患といえます。同時に足白癬の治療を行ったデータがあれば完全治癒率が上がるのかもしれませんが、爪白癬治療剤が発売して1年程度の現時点では、そのようなデータはありません。今後に期待したいです。

まとめ

ルコナック爪外用液5%はクレナフィン爪外用液10%と同程度の抗真菌活性(MIC90)を保持しており、爪内部への移行量もすぐれている薬であることがわかりました。ルコナック爪外用液5%とクレナフィン爪外用液10%の完全治癒率は同程度(15%)であり、爪白癬の治療選択薬剤が増えたことは非常に喜ばしいことです。

foot

爪白癬治療の完全治癒率を上昇させるためにはルコナック爪外用液5%などの抗真菌薬を使用して爪部位における抗菌状態を維持しつつ、足水虫(足白癬)の治療を行い感染源を断つことが重要です。さらに真菌保菌者との生活、公衆浴場、床、カーペットなどの感染経路を認識して改善することが完治への道程かと思います。

 

 

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業

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ojiyaku