参天製薬は日本眼科用剤協会が進めている環境負荷低減に対する取り組みに賛同し、医療用医薬品の点眼剤を対象に、品質保持(例:遮光)のために投薬袋が必要な製品を除き、2024年度以降、順次投薬袋廃止することを同ホームページに公開しました。
なお、投薬袋の削減に伴い、個装箱のデザインならびにサイズの変更、元梱箱のサイズならびに入数変更を行うとしています。対象銘柄は以下の通りです。
アイドロイチン1%点眼液
アイドロイチン3%点眼液
アレギサール点眼液0.1%
アレジオン点眼液0.05%
アレジオンLX点眼液0.1%
サンコバ点眼液0.02%
サンピロ点眼液0.5%
サンピロ点眼液1%
サンピロ点眼液2%
サンピロ点眼液3%
サンピロ点眼液4%
ジクアス点眼液3%
ジクアスLX点眼液3%
タプロス点眼液0.0015%
トルソプト点眼液0.5%
トルソプト点眼液1%
ヒアレイン点眼液0.1%
ヒアレイン点眼液0.3%
ビマトプロスト点眼液0.03%「SEC」
ピレノキシン懸濁性点眼液0.005%「参天」
ブリモニジン酒石酸塩点眼液0.1%「SEC」
フルメトロン点眼液0.02%
フルメトロン点眼液0.1%
ミオピン点眼液
ミドリンM点眼液0.4%
ラクリミン点眼液0.05%
ラタノプロスト点眼液0.005%「SEC」
リボスチン点眼液0.025%
ドライアイ治療薬「ジクアスLX点眼液3%」が2022年11月21日発売開始となりました。既存のジクアス点眼3%に「LX」がくっついたんですね。
「LX」とは“Lasting extend”という造語に由来していて、効果をさらに長く引き伸ばす“持続性”を意味しています。
ジクアスLX点眼3%とは
既存のジクアス点眼3%の用法用量は「通常、1回1滴、1日6回点眼する」となっていますが、新たに発売されたジクアスLX点眼3%の用法用量は「通常、1回1滴、1日3回点眼する」となっていますので、点眼後の水分保持時間(ドライアイに対する効果持続時間)が長くなったわけですね。
ユーモアがある開発経緯を読む
・ドライアイ治療剤が処方されている患者92例を対象とした調査で、使用薬剤を問わず「処方通りの回数」を点眼できなかった患者の割合:59.8%
・ドライアイ患者2645例を対象とした調査で、使用薬剤を問わず「添付文書通りの回数」を点眼できている患者の割合:10.2%
・ジクアス点眼3%が処方された患者で、1日の点眼回数が4回以下だった患者の割合:約80%
指示された回数を点眼できなかった理由としては
・症状を感じた後に点眼したから:約65%
・外出時に点眼薬を持ち歩くのを忘れた/面倒だから:約50%
・1日の点眼回数が多いから:約40%
・点眼により症状が改善し、その後、点眼する必要がなかったから:約40%
ということで、ドライアイ治療剤が処方されても日常生活を送る中で”1日6回も点眼しません派”が大多数なわけですね。
臨床上の未充足ニーズ(アンメットニーズ)を満たすことが、臨床上有益となると考えて点眼回数を1日3回に低減化した「ジクアスLX点眼3%」が開発されたという経緯です。
(この場合のアンメットニーズとは「1日6回も目薬をさす人はごく少数派ですよ、もっと点眼回数を減らしてください」ということです)
既存のドライアイ治療薬の点眼回数を確認してみると
ジクアス点眼液3%:1日6回
ヒアレイン点眼液0.1%/0.3%:1日5~6回
ムコスタ点眼液UD2%:1日4回
となっておりますので、今回発売された「ジクアスLX点眼3%」の1日3回という点眼回数が一番すくないことがわかります。
点眼回数を減らすことができた理由
点眼回数を減らすため、粘稠化剤として PVP(ポリビニルピロリドン、別名ポビドン)を新たに添加した
と記されています。(粘稠化剤とは水に”とろみ”をつける製剤のことです。)
インタビューフォームを見渡したのですが、上記コメントしか見当たらなかったので、ポリビニルピロリドンについてもう少し加筆します。
身近な例で言いますと、ご存じ「イソジンガーグル」の主成分がポリビニルピロリドン(白い粉)とヨウ素(黒紫色)の錯化合物を水に溶かしたものです。
ポリビニルピロリドンではなく「ポビドン」の方が知名度があるかもしれません。
あとは、白ワインの色調を保つ目的やビールの清澄剤としても「ポビドン」が使用されています。
安全性については厚生労働省が「安全性に懸念はない」と評価しています。米国FDAも「一般に安全である」と評価しており、医薬品(内服、注射剤)の添加物リストにも含まれています。
ジクアスLX点眼液の効果について
効果にいついても非常にユーモアのあるデータがでています。
ラットに対するデータですが、ジクアスLX点眼を1日3回点眼した場合とジクアス点眼3%を1日6回点眼した場合で同程度の角膜上皮障害の改善が報告されています。
またウサギに使用したデータによるとジクアスLX点眼を使用すると、点眼後5~75分までは涙液量の有意な増加が示され、その後も120分まで有意差は認められないものの高値がしめされたと記載されています。
統計的なデータではないですが、点眼後120分間は目が潤う状態が維持されるケースが多いようです。
通常であれば、ジクアスLX点眼液3%を1日3回使用した時と、ジクアス点眼3%を1日6回使用した場合を比較してドライアイに対する効果を比べるのが比較試験として通例です。しかし、「ジクアス点眼3%を1日6回も使用し続けるヒトはほとんどいない」ことを踏まえ、指示通り点眼できた割合を調査しています。
その結果
点眼開始0~2週間
ジクアスLX点眼を1日3回点眼した人の割合:80%
ジクアス点眼を1日6回点眼した人の割合:70%
点眼開始2~4週間
ジクアスLX点眼を1日3回点眼した人の割合:89.7%
ジクアス点眼を1日6回点眼した人の割合:66.7%
ということで、やっぱり既存のジクアス点眼液3%が処方されても、開始1カ月間で指示通り1日6回使用した人の割合は7割以下だったようです。なので、例えばの話ですが、有効性について長期比較試験をするしたいなぁと考えた場合、1カ月、2カ月と経過していくうちに、1日6回点眼できる人の割合がどんどん減っていくことが予想されます。それほど1日6回点眼をし続けるという壁は高いと私は感じています。
注)ドライアイ患者を対象としたプラセボ対比試験にてジクアスLX点眼を1回1滴、1日3回、4週間点眼した結果、優越性が検証された記載されています。
薬価
ジクアスLX点眼3%:1瓶5mlあたり1060円(2022年11月時点)
ジクアス点眼3%:1瓶5mlあたり529.8円(2022年11月時点)
ということで、ジクアスLX点眼3%の1本あたりの値段は既存のジクアス点眼3%の2倍です。
1本あたりの1日消費量が半減することを踏まえると、値上げも値下げもなく、ありのままの薬価となりました。
まとめ
ジクアスLX点眼3%が発売されました。ドライアイ治療薬として1日3回点眼でOKです。
ジクアスLX点眼3%を1日3回点眼すると、既存のジクアスLX点眼を1日6回点眼するのと同程度の効果が期待されます。
ジクアスLX点眼3%を1回点眼すると120分程度は目が潤った状態が維持されるケースが多いです(ウサギデータ:有意差なし)
既存のジクアス点眼3%を1日6回点眼し続ける人は10%程度しかいませんでした。