中高生における「ストレス」と「学校いじめ」との相関について

中高生における「ストレス」と「学校いじめ」との相関について

中学校や高校での「学校いじめ」行動に対する「ストレス」の影響と、学年および性別に関しての調査が公開されていましたので以下に詳細を記します。

中高生における「ストレス」と「学校いじめ」の相関について

被験者は中国、貴州省の中高生3566人です。

性別

男子:1539人

女子:2027人

 

中学1年生:436人(12.2%)

中学2年生:647人(18.1%)

中学3年生:582人(16.3%)

高校1年生:562人(15.8%)

高校2年生:1108人(31.1%)

高校3年生:231人(6.5%)

 

中学・高校時代のいじめに関しては学生3分の1近くが過去1カ月以内に、なんらかのいじめを経験していると報告しているデータがあります。

 

ストレスとは「生活における様々な刺激に対する個人の主観」であり、ストレスが強すぎたり、長く続いたりすると、人によっては重大な心理的・行動的な害をもたらす要因と定義されています。

 

今回、中高生が感じるストレスが学校でのいじめ行動に影響を与える要因であるという仮説をもとに調査が行われました。

 

いじめに関する調査質問用紙では、いじめの種類(言葉によるいじめ、関係によるいじめ、身体のいじめ)や、いじめの頻度が4段階のスコアにより調査されました。

stress

中高生にとってのストレス要因

・学業

・教師

・家庭環境

・子育てスタイル(家族との関係)

・友達

・社会性

・文化ストレス

・身体ストレス

という7因子をストレスの要因と捉え、調査がおこなわれました。

 

結果

男女ともにストレスが大きいほど学校でのいじめの頻度が大きくなっていることがわかりました。

ストレスが学校でのいじめに及ぼす影響の効果を数値化した場合

男子:0.404

女子:0.162

という結果となり、中高生の男子で統計的に高いデータが示されました。

 

また、学年別にストレスが学校でのいじめに及ぼす影響の効果を数値化した場合

中学生:0.395

高校生:0.163

という結果となり、中学生で統計的に高いデータが示されました。

 

以上のことより、中学生男子ではストレスを受けた際に学校でのいじめ行動が強まる割合が高いことが示されました。

欲求不満-攻撃性に関しては、自分の欲求が満たされない時に、個人が欲求不満を感じ、それを解消し覆い隠すために攻撃性を用いることが示唆されており、生徒が日常生活でストレスを感じ、欲求不満が高まった時に自部を守る反応として攻撃性(いじめ)へ発展することが推測されます。

 

思春期の中学生は、様々なストレスに直面しますが、適切に対処するための経験、知識が備わっていません。精神が未発達の状態であるにもかかわらず、気分転換や自制心が成熟していないため、欲求不満による反応性攻撃性に発展しやすいことがいじめの要因と考えられます。

 

高校生では認知レベルが向上し、情報処理過程の各段階において、包括的で客観的な解釈をすることができるようになり、適切な行動反応が備わってきます。さらに弁証的思考(対話による解決)が攻撃的な行動を抑えることもできるようになります。また年齢を重ねて社会性が高まるにつれ、自分を律して行動をコントロールできるようになるため、社会道徳に沿った行動が可能となります。

 

そのため年齢が高い高校生は中学生よりも「学校いじめ」の頻度が減ることが示唆されます。

 

性別による「学校いじめ」の頻度に関しては、遺伝的要因が攻撃的行動の要因と考察しております。ストレス反応には性差が大きく関与しており、性ホルモンの変化(男性ホルモンの増加)が自己主張・独立心・競争心・攻撃性へと影響し「学校いじめ」につながることを推察しています。

 

また男性に比べて女性は精神的な成熟が早く、社会性の成熟が早いため、ストレスに直面した時に、より多くの問題解決策を用いて、非攻撃性によるアプローチを行い自分の行動を適合させる思考が高いことがディスカッションで述べられています。

 

以上のことから、ストレスと学校でのいじめに関して、ストレスが中高生の学校いじめ行動に有意に影響を及ぼしていることが示唆されました。性別と学年に対してもストレスの影響は異なり、中学生男性でストレスの影響が大きいことが示唆されました。

 

青年期における認知的・感情的・社会的な発達が「学校いじめ」を低下させる要因であることを、早い段階で当事者たちにつたえるとともの、ストレスと向き合い方を考えていく必要があるようです。

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業

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ojiyaku