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グーフィス錠5mgの慢性便秘症に対する作用

グーフィス錠5mgの慢性便秘症に対する作用

 

胆汁酸トランスポーター阻害薬“グーフィス錠5mg(エロビキシバット)”が2017年12月4日の厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会において承認可否が検討されることがわかりました。

グーフィス錠5mgは回腸胆汁酸トランスポーター阻害薬として開発され、慢性便秘症や便秘を伴う過敏性腸症候群の治療のために臨床試験が行われている製品です。これまでにない作用機序の下剤ですので既存の治療で満足が得られない患者様にとって有望な新薬ではないでしょうか。

 

胆汁酸は界面活性剤作用を有しており、食物中の脂溶性成分とミセルを形成して可溶化し、リパーゼによる分解を助けて、小腸からの吸収を促進するはたらきに寄与する成分です。

薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会(2017年12月4日)

通常、肝臓で合成された胆汁酸のは、胆道をとって放出され、十二指腸・空腸・回腸末端まで流れて95%が再吸収される経路を通ります。のこり5%の胆汁酸は結腸に入り排便効果を促します。

胆汁酸の生理機能について

結腸での胆汁酸の効果について確認してみると、20人の健康成人に3mM以上の濃度で胆汁酸を結腸に灌流すると、Cl、Na、K、重炭酸および水の用量分泌が誘導されたという報告や、1mM濃度のケノデオキシコール酸(胆汁酸の成分の一つ)を10人の健康成人に直腸内灌流すると収縮頻度が2倍になったという報告もあります。つまり結腸に到達した胆汁酸が排便を促していることが確認されます。

グーフィス錠5mg(エロビキシバット:開発コードAJG533)は回腸末端に存在する胆汁酸トランスポーター(IBAT)に結合し、部分的に阻害することによって胆汁酸の再取り込みを阻害します。グーフィス錠はIBATへの選択性が非常に高いという特徴があります。(他のトランスポーターへの親和性が低い)

 

さらにグーフィス錠5mgは、それ自体が腸管から吸収される量が非常に少ないため、他剤との薬物相互作用リスクが低いという特徴があります。(少量は吸収されますが、半減期が4時間未満であるため相互作用リスクが低い)

慢性便秘症に対するグーフィス錠の薬理作用について

グーフィス錠の臨床データ

 

グーフィス錠10mgを30日間服用すると胆汁酸の結腸への移行を促進し、プラセボと比較して放射線不透過マーカーが大腸を通過する時間を短縮しています。さらに胆汁酸の再吸収を抑制することで、肝臓における胆汁酸合成にコレステロールが使用されたため総コレステロールおよびLDL値が用量依存的に減少したと報告しています。

 

また第Ⅱ相臨床試験Ⅱaにおいて女性26人が14日間グーフィス錠15mgまたは20mgを連続投与したところ、大腸の通過速度を促し、便をやわらかくして、便秘頻度を低下させたという報告が確認できました。

 

主な副作用は下腹部痙攣と下痢となっていました。

さらに第Ⅱ相臨床試験Ⅱbにおいて190人の患者を8週間グーフィス錠5mg、10mg.15mgの群に分け連続投与したところ、治療開始1周目で自発的排便頻度の改善が確認されています。プラセボと比較して8週間すべての期間において自発的排便頻度の改善が確認され、グーフィス錠の増加にともない用量依存的に自発的排便頻度が増加していることが確認されています。

 

便秘でお悩みの方には非常に期待できる医薬品に感じられます。

追記:グーフィス錠の第三相臨床試験データが開示されました。

日本人患者を対象として2 週間グーフィス錠5〜15mを1日1回朝食前に服用したところ、治療1週目の自発的排便回数がグーフィス錠を飲んでいない群(69名)では平均1.7回(1〜2.2回)であったのに対して、グーフィス錠を飲んだ群では平均6.4回(3〜7.6回)と有意に排便回数の増加が確認されました。

 

また、副作用に関する報告としては341人の患者さんが52週間(約1年間)グーフィス錠を服用したところ、135人(40%)で軽度の胃腸障害が報告されました。

 

 

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業