武田薬品工業が国内での承認申請を目指している潰瘍性大腸炎治療薬「エンティビオ」に関して、高い粘膜治癒率・有効性に関するデータを公開しました。
以下に報告データの概要を示します。
対象:潰瘍性大腸炎患者334人、クローン病患者538人(どちらも中程度から重度の活動期)
潰瘍性大腸炎患者のうち167人、クローン病患者のうち269人にエンティビオを投与した。
比較試験としてそれ以外の患者には抗TNFα療法を行った。
投与量:エンティビオ300mgを0、2、6週目に静脈内投与し、その後26週にわたって8週間ごとに投与した。さらに26週間の延長期間を設定した。用量の増量は行わなかった。
潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤「エンティビオ」と抗TNFα抗体との治療比較
結果
潰瘍性大腸炎患者群およびクローン病患者群においてエンティビオ投与群は高い粘膜治癒率を示しました。(統計的な有意差あり)
~潰瘍性大腸炎患者群~
エンティビオ群
粘膜治癒率:50%
寛解率:54%
ステロイドフリーによる寛解率:49%
抗TNFα療法群粘膜治癒率:42%
寛解率:37%
ステロイドフリーによる寛解率:38%
~クローン病患者群~
エンティビオ群
粘膜治癒率:50%
寛解率:38%
ステロイドフリーによる寛解率:26%
潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤「エンティビオ」と抗TNFα抗体との治療比較
抗TNFα療法群
粘膜治癒率:41%
寛解率:34%
ステロイドフリーによる寛解率:18%
筆者らは上記のデータをうけて、エンティビオの粘膜治癒率・臨床的な寛解率が高いことからエンティビオの有用性を強調し、第一選択生物学的療法として使用することをサポートする」としています。
クローン病患者に対するエンティビオ投与に関する報告
エンティビオ投与後26週目の治療成績
粘膜治癒:15%
内視鏡による寛解:12%
内視鏡による奏効:25%
整腸剤の効果・使用方法・違いについて(ビオフェルミン・乳酸菌・糖化菌・酪酸菌)
特に抗TNFα未投与群においては
粘膜治癒:24%
内視鏡による寛解:20%
内視鏡による奏効:28%
と高い治療成績をしめしています。
今回の被験者群にはステロイド治療・免疫調節薬・抗TNFα療法などの治療を経験した中等度から重度のクローン病を有する101人の患者も含まれておりました。
米国・欧州では抗TNFα療法において効果不十分の中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎・クローン病の治療薬として使用されており、現在60か国以上の国で承認を得ている医薬品です。武田は2018年度の国内承認を目指しています。
エンティビオは、ヒト化α4β7インテグリンモノクローナル抗体です。α4β7インテグリンは、潰瘍性大腸炎やクローン病における炎症発生プロセスに関与するとされる循環白血球のサブセットに発現し、消化管における血管やリンパ節に特異的に存在する細胞接着分子に結合することで炎症反応を惹起します。本薬は、α4β7インテグリンに特異的に結合し、α4β7インテグリンの細胞接着分子への結合を阻害することにより、特定のリンパ球の消化管細胞への浸潤を阻害します。
整腸剤の効果・使用方法・違いについて(ビオフェルミン・乳酸菌・糖化菌・酪酸菌)