エフピーOD錠やアジレクト錠、エクフィナ錠の併用禁忌とその理由について

エフピーOD錠やアジレクト錠、エクフィナ錠の併用禁忌とその理由について

神経内科の門前で勤務を開始して1年半が経ちました。毎日の業務で常に注意していることは「併用禁忌はないかどうか」です。

エフピーOD錠、アジレクト錠、エクフィナ錠といったMAOB阻害には多くの併用禁忌薬がありますので、患者様が持参されたお薬手帳を拝見して飲み合わせが悪い薬が無いかどうかチェックしています。

先日の話ですが、ずっとお薬手帳を持参していなかった患者様が久しぶりに手帳を持ってこられたので拝見したところ「エフピーOD錠とトリプタノール」を併用していることがわかり主治医へ報告した経緯がありました。

詳しく確認してみると、トリプタノールは歯科から処方されており、「舌の違和感」を解消する目的でトリプタノール10mgを1回1錠使用していました。エフピーOD錠とトリプタノール10mgを4か月間併用していたことが判明しましたが、患者様の体調に大きな変化はありませんでした。医師の指示によりトリプタノールは内服中止となりました。

上記の経緯のような例は度々起こりえることであり、今現在も気づいていないだけで併用禁忌薬を定期服用している方もいるかもしれません。

 

今回は、MAO-B阻害薬とその禁忌薬を一緒に飲んだ時にどのような症状を呈する可能性があるのかを具体的に調べてみました。

エフピーOD錠、アジレクト錠、エクフィナ錠の併用

エフピーOD錠、アジレクト錠、エクフィナ錠はすべてMAO-B阻害剤と呼ばれる分類の薬剤です。脳内のドパミンの効き目を延長してパーキンソン症状を軽減する働きがあります。これらの薬剤は効き目が同じなわけですが、間違って一緒に飲んでしまうと、MAO-Bを阻害するだけでなくMAO-Aという酵素も阻害してしまう可能性があります。

 

MAO-Aを阻害してしまうと、脳内のモノアミン(ドパミン・アドレナリン・セロトニン、ヒスタミンなど)濃度が上昇してしいまい、著しい血圧上昇、高体温、興奮、発汗、脈拍上昇などの症状を呈する可能性があります。MAO-Aという酵素はドパミンやアドレナリン、セロトニンといった脳内ホルモンを分解して脳内濃度を適切な濃度に保つ働きを担っているのですが、MAO-Aが阻害されてしまうと、脳内ホルモンを分解することができなくなり、脳内濃度が高まってしまいます。その結果、血圧上昇などの副作用が引き起こされる可能性があります。

タペンタ錠、トアラセット、ペチジン注射

タペンタ錠、トアラセット錠、ペチジン注射にはセロトニン再取り込み阻害作用を有します。セロトニンの再取り込み阻害作用とは、脳内に広がったセロトニン(気分をリラックスするホルモン)が多すぎる場合にセロトニンを回収する作業(セロトニン再取り込み)を阻害することにより、脳内のセロトニン量を増やす、または増えた状態を維持する作用を意味します。

エフピーOD錠、アジレクト錠、エクフィナ錠の基本的な薬理作用はMAO-B阻害作用なので、ドパミンやセロトニンの分解を阻害する作用があります。

これらの薬剤を併用すると、脳内のセロトニン量が多い状態が維持されます。その結果セロトニン症候群(気分変動、興奮、発汗、体動、発熱、脈拍上昇)と呼ばれる症状が生じる可能性が高くなるため併用禁忌とされています。

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トリプタノール、パキシル、レクサプロ、サインバルタ、イフェクサー、リフレックスなど

脳内のセロトニン量を増やす薬剤には三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、セロトニン再取り込み阻害薬、セロトニン・ノルアドレナリン再取り鋳込み阻害薬、ノルアドレナリン・セロトニン作動薬などがあります。

エフピー・アジレクト・エクフィナと上記の薬剤を併用すると、脳内のセロトニン濃度が上昇し、セロトニン症候群のような症状を呈する可能性が高くなります。

 

また、サインバルタ、イフェクサー、トレドミン、トリンテリックスなどの薬剤は脳内のセロトニンおよびノルアドレナリンの分解を妨げることで、セロトニン・ノルアドレナリンの濃度を保つ働きがあります。エフピーなどの薬剤と併用してしまうと、脳内のノルアドレナリン濃度が上昇してしまい、急激な血圧上昇などの症状を呈する可能性があります。

 

先日私が経験した「エフピーOD錠とトリプタノール」の併用事例について自分なりに再検討してみました。

エフピーOD錠 2T/2×朝昼食後

トリプタノール10mg 1T/1×VDS

上記の併用禁忌事例について、私なりの解釈なのですが、トリプタノール錠の使用量が10mgと非常に少ない量であったため、具体的な健康被害を生じることなく経過していたのだと思います。(服用量が歯科処方の10mg/dayであったため)

トリプタノールの処方量が、精神科領域量(150mg程度)ならば、なにかしらの自覚症状が出ていた可能性も十分に考えられます。

 

上記を心に留めて、併用禁忌事例を起こさないよう注意して業務に励みたいと思います。

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業