米国におけるジェネリック医薬品供給不足に関する危機感

 

米国のジェネリック医薬品市場は、その競争に起因する低価格化が急速に進んでおり、“新規の市場参入の難しさ”、“GEの品不足に関する危機感”が問題となっています。米国ジェネリック医薬品協会(AAM)はこれらの件について報告書をまとめました。

米国の医薬品市場において、先発医薬品の価格高騰が医療費のコストアップを引き起こしています。とりわけ全患者の2~3%にしか使用されない特殊な医薬品の価格高騰がすさまじく、それらの医薬品の2018年の医療費が処方薬全体の50%を占めるのではないかと予想されているほどです。

 

先発医薬品の価格高騰がもたらす医療費の高騰の帳尻を合わす目的で、ジェネリック医薬品の価格が急速に下がっているという米国市場の実態について米国ジェネリック医薬品協会(AAM)が危機感をつのらせています。

米国におけるジェネリック医薬品市場の低価格化競争がもたらす危機感

先発医薬品の価格上昇の結果、ジェネリック医薬品とバイオシミラー医薬品の価格競争が激化しております。1975年時点では米国に200以上の医薬品卸業者がありましたが、2000年には50社未満にまで減少し、現在では大規模な3つの医薬品卸業者がジェネリック医薬品の売り上げの90%を占めるほどになっています。ジェネリック医薬品販売による卸の利益とういのは微々たるもので、それを維持することが非常に難しくなっている実情が垣間見えます。

ジェネリック医薬品の流通例の一例として、製造業者が卸業者に約10セントで販売した医薬品を、卸業者が20%のマージンをつけて12セントで薬局へ引き渡すという実態があります。この場合、医薬品卸の利益はわずか2セントにしかなりません。

値引き率が大きい薬価が引き下げられる平成30年薬価改定におけるジェネリック医薬品ルール

米国市場におけるジェネリック医薬品の価格

1994年時点では先発医薬品価格の70%の価格でジェネリック医薬品が発売され、その価格はゆるやかに低下していき先発医薬品の35~40%の価格が最低薬価とされていました。

 

しかし2014年時点では先発医薬品の55%の価格でジェネリック医薬品が発売され、その後価格は急速に低下していき、先発医薬品の18%程度の価格まで引き下げられています。

 

つまり、この20年でジェネリック医薬品市場は拡大しているものの、医薬品ごとの単価は半減まで値をさげています。

 

その背景としては、上記したように先発医薬品価格の高騰をジェネリック医薬品の価格引き下げで少しでも補おうとする点と、医薬品卸による価格競争により市場実勢価格の低下がジェネリック医薬品の価格低下をもたらすという2つの要因があります。

米国ジェネリック医薬品協会はこれらの背景を踏まえて、医薬品製造業者・医薬品卸の事情によりジェネリック医薬品市場の縮小、供給不足について危機感を示しました。

 

日本でも平成30年度薬価改定から後発医薬品の統一名収載リストが非常に増えました。これは市場実勢価格を反映した結果ですが、この結果をうけてジェネリック医薬品の販売中止を決定する製薬会社が出てくる可能性はゼロではありません。また過剰な価格競争から脱落する医薬品卸もあらわれるかもしれません。

米国におけるジェネリック医薬品市場の低価格化競争がもたらす危機感

日本の医薬品市場や薬価は米国を参考にして推進しているケースがありますのでジェネリック医薬品市場の拡大と同時に保護という観点でも厚生労働省には管理していただきたいものです。

値引き率が大きい薬価が引き下げられる平成30年薬価改定におけるジェネリック医薬品ルール

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業