インフルエンザウイルスの空気感染リスクに関しての報告
インフルエンザワクチンは、感染者が呼吸するだけで感染力のあるウイルスが呼気に含まれる、いわゆる「空気感染」する可能性があるという報告が2018年1月18日の雑誌PNAS(電子版)に掲載されました。
厚生労働省のホームページにはインフルエンザワクチンの感染経路が以下のように記されています。
インフルエンザの主な感染経路
1):飛沫感染
感染している人のくしゃみや咳(せき)で出るしぶきを吸い込むことによる感染。くしゃみや咳(せき)を浴びる距離(2メートル程度)にいる人は感染の危険性が高い。
インフルエンザウイルスは空気感染するリスクがある
2):接触感染
感染している人の唾(つば)や鼻みずが手から手へ、あるいはドアノブやつり革などを介して手に付着することなどによる感染。
上記の2つの感染経路に加えて、PNASの掲載内容によると、「同じ部屋にいるだけで(呼吸するだけで)感染する」といういわゆる「空気感染リスク」に関する報告がありました。
報告内容
アメリカのメリーランド大学Donald Milton氏の報告によると、発症から1~3日目のインフルエンザ患者142人から
1):いつもどおり呼吸しているとき
2):話をしているとき
3):席をしたとき
4):くしゃみをしたとき
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上記4種類の呼吸サンプルを回収してインフルエンザウイルスの有無を分析しています(合計218サンプル)。
結果
・咳症状がない呼吸サンプル中の48%において、微細エアロゾル中で培養可能なインフルエンザワクチンを検出した
・くしゃみをした後の呼吸サンプルにふくまれるウイルス量には変化がない
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インフルエンザ患者が呼吸や咳・くしゃみをするときに排出される呼吸飛沫は2つに大別できます。1つ目は従来から言われている飛沫であり、排出源(感染者本人)から1〜2メートル以内に堆積する大きな飛沫のことです。2つ目は飛沫よりも長い時間に渡って空中に滞在することが可能な直径5マイクロメートル未満の微細な飛沫です。後者をエアロゾルと読んでいます。今回の報告内容によると、微細なエアロゾルは咳症状がなくても呼気中に含まれるので空気感染の要因となりうると注意喚起をしたものです。
筆者らは、咳やくしゃみをしなくてもインフルエンザ感染者は呼気中でインフルエンザウイルスを含むエアロゾルを排出するため感染源となりうる。そのため感染拡大を防ぐために職場や学校など周囲に人が集まる場所から退避させるべきだとしています。
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