おじさん薬剤師の日記

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抗インフルエザ治療薬

海外で使用されていないイナビル吸入粉末剤はインフルエンザ治療に効果が「ある」のか「ない」のか

投稿日:2017年11月14日 更新日:

海外で使用されていないイナビル吸入粉末剤はインフルエンザ治療に効果が「ある」のか「ない」のか

国内で使用できる抗インフルエンザ薬にはタミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタがあります。海外ではタミフル、リレンザ、ラピアクタが使用されておりますが、イナビル吸入粉末剤は日本でしか使用されていない薬です。

2014年4月10日、国際共同研究グループがタミフルとリレンザの抗インフルエンザ効果について4年間にわたる評価を公表しました。(コクランレビュー)

抗インフルエンザ治療薬の安全性について

その結果、成人治療ではタミフルを服用すると症状緩和までの時間が7日→6.3日に減少することがわかりました(0.7日間、回復が早くなる)。健康な小児の場合は29時間減少することがわかりました(喘息小児患者は効果なし)。副作用報告に関しては、服用に伴う吐き気・嘔吐、精神症状、腎イベントのリスクが増加すると報告されています。

リレンザを吸入すると症状緩和までの時間が6.6日→6日へ減少することがわかりました。(0.6日間、回復が早くなる)。吸入薬であるためタミフルのような消化器系の副作用報告は少なめです。

タミフルもリレンザも合併症(肺炎など)や重症化による入院率を減少させる効果はありませんでした。

イナビルが海外第Ⅱ相試験で有意な改善を示さず

国際共同研究グループのまとめとしては、インフルエンザの予防や治療のためにタミフルおよびリレンザを使用する場合は、「効果と副作用のバランスを考慮して使用するかどうか検討すべき」とまとめています。(タミフル・リレンザを使用すると回復までの期間が半日早くなるだけなので使うかどうかよく考えてくださいとまとめているわけです。)

さて、国内でのみ使用されているイナビル吸入粉末剤についてはどのような評価があるのでしょうか。第一三共が開発した「イナビル吸入粉末剤」をアメリカでも発売にこぎつけようとBiota社が開発を行ました。開発当時、政府からの資金提供も約束されていました。

しかし、12か国639例のインフルエンザ患者を対象とした臨床第Ⅱ相試験の結果、臨床上の有用性が確認できませんでした。具体的には二重盲検のランダム試験によりプラセボ、イナビル40mg、イナビル80mgを吸入した際のインフルエンザ症状改善までの時間を評価した結果
プラセボ群:104.1時間(4.33日)
イナビル40mg:102.3時間(4.26日)
イナビル80mg:103.2時間(4.3日)
という結果となり、症状改善までの期間中央値に有意差がみられませんでした。

一方、試験開始から3日時点でのウイルス排出量およびウイルス陰性化率についてはプラセボ群に比べて、イナビル40mg、80mgを吸入した群では有意な改善が見られました。また細菌性2次感染症に関しても有意な減少が確認されました。

これらの結果をうけてBiota社は「異なる用量のラニナビル群(イナビル)において有意な抗ウイルス効果が臨床的意義のある指標に反映されたかったことは残念」とコメントをだし、イナビルの海外開発を進める予定がないことを示しました。それに伴い政府からの資金提供も解除され、海外での発売が白紙となりました。

これが2014年8月時点での話であり、それ以降この話題は出ていません。これによりイナビルは国内のみで使用される薬となりました。この件に関して第一三共に確認してみたところ、直接関与していないため不明という回答を得ました。

イナビル吸入粉末剤のインタビューフォームを確認してみると、日本、台湾、韓国、香港で実施された第Ⅲ相国際共同試験が記載されています。内服薬のタミフルとの比較データで非常に酷似した結果となり、非劣勢が確認されたとまとめられています

○インフルエンザ治療に関して

タミフル、リレンザ:プラセボに比して半日ほど回復が早いものの、重症化や肺炎などの合併症を発症するリスクは下がらないものと思われます。

イナビル:解熱までに要する期間はプラセボと変わらない可能性があります。イナビルを吸入するとウイルスの排出量は低下し、ウイルスが陰性化することが示されていますので、家族などの周囲の人への感染拡大は軽減できることが示唆されます。また細菌性2次感染症のリスクが軽減することから、ウイルス性感冒に対して抗生剤を飲むようなニュアンス(2次性細菌感染予防)で、インフルエンザ治療にイナビル吸入粉末剤を使用するとは有用であると感じます。

 

 

-抗インフルエザ治療薬
-イナビル, 世界市場, 日本のみ

執筆者:ojiyaku


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