先日、調剤薬局でのおじさん薬剤師のはたき方~失敗談・学習方法・注意点など~という記事を投稿したのですが、その中に「医師・看護師は添付文書を見る、薬剤師はインタビューフォームの要点を読み込む」という文章を記載しました。
今回は、患者様への薬の説明としてはあまり実用的ではないかもしれませんが、
「〇〇という薬について非常に詳しくなりたいな」
という学習意欲がわいたときに、効率よくインタビューフォームを活用・閲覧する私なりの方法を記します。
新規採用となった薬を1包化する際は、無包装状態の安定性や他剤との相性(オルメサルタンとメトホルミンなど)も勘案する必要があります。
販売メーカーの学術に電話をすることが一つの解決策なのですが、電話した時に
「安定性は〇〇なのですが、1包化の判断について、最終的には医師の裁量によります」
なんていう曖昧な回答を受けることもあります。
そんな時に、添付文書やインタビューフォームに記載されている情報から1包化の可否を自分で判断するケースが出てくるかもしれませn。また土曜日や日曜日・祝日はメーカーの学術がつながりませんので、その場合も同様に自分で判断することがあります。
1:まずは添付文書の一番下に記されている販売包装を確認する。
添付文書の一番下に「包装」が記されているのですが、バラ錠包装が販売されていれば1包化OKの判断材料となります。
2:バラ錠包装が販売されていない場合
インタビューフォームの安定性試験を確認します。私の場合はインタビューフォームを開いた後に「Ctr + F」(検索窓)を開き、「無包装」または「包装」と入力します。すると長期保存試験・加速試験・苛酷試験の内容のうち「無包装」または「包装」がヒットします。(1~10件程度でしょうか)
あとは、無包装状態、シャーレ開放状態で、何カ月安定であるか、安定性試験結果が規格内であるかどうかを確認し、1包化の可否を判断します。
次に、半錠調剤や粉砕調剤の可否を判断する方法ですが、半錠調剤は割線があるかどうかで可否を判断します。店舗に「錠剤・カプセル剤粉砕ハンドブック」があれば、それから調べますが、ハンドブックがない場合はインターネットで「薬品名 半錠」と調べるしかありません。
粉砕調剤に関しれも同様です。インタビューフォームには「粉砕」という項目があるのですが、多くの場合「該当なし」と記されていて判別できません。「該当なし」と記されている場合は、メーカー学術に電話をしても有益な情報は得られないと考えています。
患者様へ具体的な効き目をお伝えしたいなぁと感じた時にはインタビューフォームを開いて「Ctr + F」(検索窓)を開き「有効性」と検索します。
(30件ほどヒットします。有効性データは下の方に記載されています)
すると、プラセボと比較してどの程度有効かについて具体的なデータが得られます。
例えばですが、睡眠薬の「デエビゴ」について有効性を確認してみると
投与6カ月時点におけるsSOL(消灯あるいは就床時刻から睡眠開始までの時間)についてベースライン(服用開始前)との比較データ(中央値)は
プラセボ群:11.43分
デエビゴ錠5mg:21.81分
デエビゴ錠10mg:28.21分
上記のデータより、デエビゴを飲み始める前と比べると、デエビゴ錠を6か月間継続服用したことで、布団に入ると20~30分早く寝付くことができることが示されています。
(デエビゴではなくプラセボを6か月間飲んだ場合でも10分程度早く寝付けています)
また、他の例として「タリージェ錠」について同様の方法で有効性を確認してみると
服用3カ月時点(14週)における平均疼痛スコア(痛みの度合い)を確認し、ベースライン(服用開始前)との比較データは
プラセボ群:マイナス1.31
タリージェ20mg/日服用群:マイナス1.47
タリージェ30mg/日服用群:マイナス1.81
平均疼痛スコアと「0:なし」「4:持続的な耐えられない激しい痛み」という0~4までの5段階で評価する指標です。その値がタリージェを3カ月間連続服用することで1.5~1.8程度緩和することが示されるというデータです
(プラセボを3カ月間飲んだ場合でも1.3程度の改善が確認されています)
などなど、インタビューフォームで「有効性」と検索すると、非常に具体的な数値として薬の効果が確認できる場合があります。
さらに「比較」と検索してみると「類似薬」との比較データが記されている場合があります。
上記の例でいいますとデエビゴに対してベルソムラ、タリージェに対してリリカの臨床データとの比較も確認できます。
比較試験について詳しい情報を知りたい場合は、デエビゴのインタビューフォームにて「スボレキサント(ベルソムラの一般名)」、タリージェのインタビューフォームにて「プレガバリン(リリカの一般名)」を検索すると、より具体的な比較データが確認できます。
とはいえ、実際にこれらのデータを調剤薬局の薬剤師が実務として使用することはほとんどないあろうなぁと私は感じております。もはや趣味の範囲ですね。その理由としては比較試験の母数は決して多くないため、バラツキが大きすぎるためですからね。ですので、もし投薬時に患者様から質問をうけて、どうしてもお伝えしなければならないのであれば「あくまで一例ではありますが」というクッション言葉が必要なデータかと思います。
他にも重箱の隅をつつくような検索をすれば「実用的ではないデータ」がたくさん散見されます。私にとってインタビューフォームは「要点を読み込む」ものです。
その前提として、
「もしかしたら患者様からご質問を受けるかも?(他剤との比較・有効性)」
「もしかしたら調剤時に必要となるかも?(安定性試験)」
といった感じで、患者様へお薬をお渡しすることを想像した時に「知ってたらいいかも」という「要素」をピックアップしておいて「その要点に絞って「読み込む」という利用方法で活用しています。
50~150ページもあるインタービューフォームを、目的もなくダラダラと読み流すことは、あまり意味をなさないように感じておりますのでご了承ください。