厚生労働省では平成29年3月15日より、診療報酬請求に係るルールの理解を促進し、保険調剤の質的向上や適正化を推進するために指導監査に関する情報を厚生労働省のホームページに公開しています。
〜集団的個別指導及び個別指導の選定の概要について〜
診療(調剤)報酬明細書(以下「レセプト」という。)の1件当たりの平均点数が高い保険医療機関等を一定の場所に集めて講義形式等で行う指導である。
レセプト1件当たりの平均点数が次の都道府県の平均点数の一定割合を超えるもの
・薬局の場合は都道府県の平均点数の1.2倍を超えるもの
かつ、
診療報酬請求等に関する情報提供があった場合、個別指導を実施したが改善が見られない場合、集団的個別指導を受けた保険医療機関等のうち、翌年度の実績においても、なお高点数保険医療機関等に該当(※)する場合等に、保険医療機関等を一定の場所に集める等して個別面談方式により行う指導である。
また、個別指導の実施件数については、医科、歯科及び薬局ごとの類型区分ごとに 全保険医療機関等の4%程度を実施することとしている。
上記に該当する薬局が個別指導を受けるわけですが、監査により不正または著しい不当が疑われる場合は適切な措置がとられます。
監査後の措置としては
行政上の措置:保険薬局・保険薬剤師の指定・登録の取り消し、警告・注意
経済上の措置:不正・不当の事実が認められた場合、原則として5年分を返還する。最大40%の加算金が加えられることもある。
不正請求としては
などがあります。
不当請求とは
いわゆる薬歴未記載問題での薬剤服用歴管理指導料の算定が話題になった事例がそれに該当します。
個別指導時の指摘事項として不適切な処方箋を応需した時に、適切な疑義照会を行なっているかどうかが焦点となり薬剤服用歴を確認されます。
その具体例も厚生労働省のHPに記されています。
不適切な処方の具体例
ア 不備な処方せん
・ 複数の規格単位がある医薬品の場合に、規格単位を記載していない。
・ 用法、用量の記載がない(例:インスリン注射液、外用剤等)
イ 医薬品医療機器等法の承認内容と異なる適応症への使用が疑われる処方
・ ゾルピデム錠を統合失調症、躁うつ病に伴う不眠症の患者に投与
ウ 医薬品医療機器等法の承認内容と異なる用法・用量の処方
・ アムロジピン錠、バルサルタン錠、ドキサゾシン錠等の1日2回投与
・ センノシド錠の1回48mgを超える投与
・ グリクラジド錠40mg 0.1錠 朝食後投与
・ ケトプロフェンテープ、ロキソプロフェンナトリウムテープの1日2回投与
エ 重複投与が疑われる処方
・ 異なる医師による湿布の処方
・ 異なる医師によるNSAIDsの内用薬と坐薬の処方 ・ テプレノン細粒とテプレノンカプセル
・ ステロイド軟膏と抗生物質配合ステロイド軟膏
オ 薬剤の処方内容より禁忌例への使用が疑われる処方
・ 消化性潰瘍が疑われる患者に対する、総合感冒剤、アスピリン錠、アセトアミノフェン錠、ジクロフェナクナトリウム錠、ロキソプロフェンナトリウム錠等
・ うっ血性心不全が疑われる患者に対する、ピルシカイニド塩酸塩カプセル、シベンゾリンコハク酸錠等
・ 緑内障が疑われる患者に対する、オキシブチニン錠、プロピベリン錠等
カ 倍量処方が疑われる医薬品の処方
・ フルニトラゼパム製剤 4mg
・ ブロチゾラム製剤 0.5mg
・ その他、トリアゾラム錠、ゾルピデム錠、エスタゾラム錠等
キ 漫然と長期に渡り投与されている医薬品の処方
・ ビタミンB2錠、ビタミンB6錠、ビタミンB12錠、ビタミンC錠、混合ビタミン剤等の月余に渡る処方 (留意点:医科点数表におけるビタミン剤の算定について)
○ビタミンB群及びビタミンC製剤について、従来から「単なる栄養補給目 的」での投与は算定不可
○ビタミンB群製剤及びビタミンC製剤以外のビタミン製剤についても、単な る栄養補給目的での投与は算定不可
・ エパルレスタット錠、ニセルゴリン錠、イブジラストカプセル等の12週を越える処方
・ モサプリドクエン酸塩錠の2週間を超える投与
ク 処方せん上で検査等に使用することが明確な医薬品の処方
・ 自己注射の消毒に使用することがある消毒液
現場で勤務していると、「こんな小さなことで疑義照会をしないでください」という対応をする病院もあるかもしれません。ただ一応、このような例が表示されておりますので、心に留めておいて良いかと思います。
公開されている「保険調剤の理解のために」という資料は全105ページからなるのですが、保険制度の特徴から始まり、保険調剤のルール、点数、保険調剤に関係する薬担規則、薬剤師法、届出事項などが詳しく記されています。
普段から熟読する必要はないかもしれませんが、個別指導や集団的個別指導を控えている薬局長は目にしてもいいかもしれません。