テトロドトキシン非感受性ナトリウムチャネル遮断薬に関して、ラクオリア創薬株式会社とマルホ株式会社がライセンス契約を締結しました。
フグ毒であるテトロドトキシンはヒトのナトリウムチャネルを遮断して神経や骨格筋のなどのシグナル伝達を遮断する作用を有しています。その薬理作用を痛み止めとして応用し、新薬開発が現在行われており、急性疼痛を改善する成分として注目されています。
テトロドトキシンが作用する受容体は大きく2つの分類にわけることができます。1つ目は少量(ナノモル程度)のテトロドトキシンで遮断することができる“テトロドトキシン感受性受容体”であり、もう1はその1000倍程度のテトロドトキシン量(マイクロモル程度)で遮断することができる“テトロドトキシン非感受性ナトリウムチャネル”です。
テトロドトキシン感受性ナトリウムチャネルと非感受性ナトリウムチャネルの構造上の相同性は50~60%程度しかないため、医薬品として創薬する際は、狙った受容体のみを選択的に作用させることが可能となります。
ラクオリア創薬とマルホがテトロドトキシン非感受性ナトリウムチャネル遮断薬に関してライセンス契約締結
今回、ラクオリア創薬とマルホとの間でライセンス契約締結された成分はテトロドトキシン非感受性ナトリウムチャネル遮断薬です。テトロドトキシン非感受性ナトリウムチャネルのうちNav1.8とNav1.9という2つの受容体は末梢に発現しており、末梢の外的要因による痛み刺激を持続的に脳に伝える役割に関与しています。
このナトリウムチャネルを遮断して末梢の痛みを緩和することがこの新薬の薬理作用です。
痛みによる刺激は末梢組織から中枢神経を経て脳で認知される仕組みとなっております。外的要因による末梢での痛みはナトリウムチャネルの活性化により伝達され、その神経伝達においてテトロドトキシン非感受性ナトリウムチャネルが重要な役割をなっています。
(報告によると、神経因性疼痛ではNav1.8、1.9などの受容体発現量が減少し、別の受
容体が発現することが知られています。そのため今回の話は外的要因による痛みに関するものとします)
テトロドトキシンはナトリウムチャネルを細胞の外側から遮断して、ナトリウムによる神経伝達を抑える働きがあります。テトロドトキシン非感受性ナトリウム(Nav1.8および1.9)を遮断することで末梢神経での持続的な遅いナトリウム伝達を抑えることができ、活動電位による興奮を抑えることで痛みの伝達を抑制する効果が期待されます。
ただし、神経因性疼痛の場合はNav1.8,1.9とは別の受容体が増えて痛み刺激を伝達するためテトロドトキシン非感受性ナトリウム遮断薬では効果が期待できない可能性があります。
痛み刺激におよび神経因性疼痛におけるナトリウムチャネルの発現機構の切り替えポイントの解明が、この分野の医薬品開発につながるものと思われます。