おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

痛み止め

サインバルタカプセルに「慢性腰痛症」の適応症が追加となる(サインバルタの鎮痛作用について)

投稿日:2017年11月14日 更新日:

サインバルタカプセルに「慢性腰痛症」の適応症が追加となる(サインバルタの鎮痛作用について)

2016年2月5日 薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会においてサインバルタカプセルに「慢性腰痛症」の適応症が追加承認されました。

サインバルタは精神科領域でよく使用されている薬です。副作用に自殺リスクがあるため、会議中に複数委員から整形外科医による処方に懸念が示されましたが、多数決により適応症追加申請が了承されました。

ノイロトロピンの具体的な効果について

これまでのサインバルタの適応症は
・うつ病、うつ状態
・糖尿病性神経障害に伴う疼痛
・線維筋痛症に伴う疼痛
という3つでしたので、新たに「慢性腰痛症」が加わることになります。

ハイペン錠の効き目について

海外の適応症を確認してみるとアメリカを含む29か国で「慢性腰痛症」の適応症が承認されています。アメリカの米食品医薬品局(FDA)では2010年に骨関節炎から生じる変形性関節症および慢性腰痛症を含む慢性骨格筋疼痛の適応症が拡大されています。一方、欧州では2011年に欧州医薬品庁から慢性腰痛症に対して否定的な考えが出たため適応承認されていません。

サインバルタカプセルの鎮痛作用について

手や足などの末梢に加えられた痛みは脊髄を経由して大脳皮質体性感覚野において”痛み”として認識されます。この時の痛みを和らげる神経として”下行性疼痛抑制系”という神経があり、この神経により痛みのレベルが適切に調節されています。下行性疼痛抑制系はセロトニンおよびノルアドレナリンによって賦活化されることがわかっており、セロトニンおよびノルアドレナリンの低下が慢性痛の原因の一つと考えられています。

サインバルタは脳および脊髄においてセロトニンおよびノルアドレナリンの再取り込みを阻害することにより(SNRI)下行性疼痛抑制系を活性化して鎮痛効果をしめすと考えられています。薬理作用といては「ノイロトロピン」のはたらきに近いですが、ノイロトロピンはセロトニン作動性の下行性疼痛抑制系を活性化するだけなのに対し、サインバルタはセロトニンおよびノルアドレナリンという両方の下行性疼痛抑制系を活性化するため、より確実な効果が期待できるのかもしれません。

~ラットによる鎮痛効果の検証~

ラットにサインバルタを投与して鎮痛効果を検証したデータでは用量依存的に痛みの閾値が増加し、その作用は反復投与による耐性を生じることなく持続的に鎮痛作用を示すデータがインタビューフォームに記載されています。イブプロフェンとの鎮痛作用を比較したデータも記載されておりますが、熱性痛覚の閾値をイブプロフェンと同程度以上に増加させているデータとなっています。(IFより)

サインバルタの鎮痛作用について海外の報告を確認してみると、うつ病による疼痛以外の慢性疼痛患者さんを対象としたデータではサインバルタを1日60mgまたは120mgを服用することで、プラセボに比べ有意に鎮痛作用を示した報告があります。また薬理作用の違いからサインバルタとNSAIDSとの併用による腰痛症への効果を検証したデータでも有用な結果が出ており、慢性腰痛症を患っている患者さんへの新たな選択肢として期待がもてるのではないでしょうか。

サインバルタを長期服用すると口渇・下痢などの消化器症状に加えて、体重増加(1kg~)の副作用が上がっています。整形外科領域において体重増加はあらゆる面で治療の妨げとなりますのでサインバルタの服用開始時は食事に関する注意喚起を促す必要があるかと思います。また眠気や倦怠感、脱力感といった精神的な副作用についても患者さんへお伝えする必要があります。

セルタッチとそのジェネリックの使用感について

-痛み止め
-サインバルタ, 効果, 腰痛症, 薬理作用

執筆者:ojiyaku


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

関連記事

fomentation-70

湿布薬70枚制限ルールについて

2016年4月から始まる湿布薬70枚制限ルールについて 2016年4月より医療費抑制の観点から湿布薬に枚数制限が設けられます。現状では1回に70枚以上の湿布薬が処方されている患者さんの人数は月に30万 …

antipain-CALONAL-infant

痛み止めとして小児に対するカロナール(アセトアミノフェン)を使用する場合の量15mg/kgについて

痛み止めとして小児に対するカロナール(アセトアミノフェン)を使用する場合の量15mg/kgについて   カロナール(アセトアミノフェン)は幼児や小児の発熱および軽度~中等度の鎮痛薬として使用 …

Hypen-effect-antipain

ハイペン錠(エトドラク)の痛み止めの効果を他剤と比較する

ハイペン錠(エトドラク)の痛み止めの効果を他剤と比較する   腰痛や術後の疼痛でハイペン錠が処方されることがあります。ハイペン錠の鎮痛作用がどの程度なのかを知るために、他剤と比較した報告があ …

lactation-LOXONIN

ロキソニン錠(ロキソプロフェン)の授乳中への移行性について

ロキソニン錠(ロキソプロフェン)の授乳中への移行性について 授乳婦の解熱鎮痛剤としてはカロナールが処方されることが多い印象があるのですが、ときおりロキソニン錠が処方されることを目にします。 ロキソニン …

PL-granule-generic

PL配合顆粒のジェネリック医薬品の特徴まとめ

PL配合顆粒のジェネリック医薬品の特徴まとめ   PL配合顆粒は1gあたり6.4円の薬です。そのジェネリック医薬品は1gあたり6.2円の薬で現在は4剤が販売されています。(剤形は異なりますが …

  google adsense




2022年12月発売のGEリスト(エクセルファイル)

2022年12月発売のGEリスト(エクセルファイル)

おじさん薬剤師の働き方

how-to-work

2022年4月薬価改定。新旧薬価差比較データ

2022年4月薬価改定。新旧薬価差比較データ(エクセルファイル)

薬剤師の育成について

how-to-bring-upo

日医工・沢井・東和・日本ジェネリック・日本ケミファ・アメルの出荷調整リスト

日医工・沢井・東和・日本ジェネリック・日本ケミファ・アメルの出荷調整リスト




how-to-work