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糖尿病 肥満

米国FDAがセマグルチドに肥満症の適応追加承認(2021/6/15)

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米国FDAがセマグルチドに肥満症の適応追加承認(2021/6/15)

米国食品医薬品局(FDA)は2021/6/4にGLP-1受容体作動薬(セマグルチド)について肥満症、過体重成人における慢性体重管理の適応症を追加承認しました。

商品名はWegovy(成分名:セマグルチド)です。

セマグルチドに関しは、日本国内で注射薬「オゼンピック皮下注」、内服薬「リベルサス錠」は医療用医薬品として使用されています。

米国でセマグルチドが肥満症の適応追加

今回、適応が追加となったセマグルチドの具体的な適応を確認してみます。

・BMI27kg/㎡以上の患者ですくなくとも体重関連疾患(高血圧、2型糖尿病、脂質異常症)の疾患を1つ以上有する

・BMI30kg/㎡以上の患者に対する食事療法・運動療法への補助療法

肥満症に対するセマグルチドの使用量は16~20週間かけて徐々に増量していき、最終的には週1回2.4mgまで増量していきます。(2型糖尿病に対する使用量の2.4~4.8倍量)

(糖尿病治療としてセマグルチド(オゼンピック皮下注)を使用する場合、週1回0.25mgから開始して、0.5mgが維持量。効果不十分で週1回1mgまで増量可能)

肥満症に対するセマグルチドを使用した臨床試験データ

平均体重105kg、平均BMI38kg/㎡、平均年齢46歳(糖尿病の既往がない成人)を対象としてセマグルチドを68週間(16週間の増量期間を含む)を使用した結果、プラセボ群と比較して、投与群で平均13kgの体重減少(12.4%)が報告されています。

2型糖尿病成人を対象とした臨床試験では、平均体重100kg、平均BMI36kg/㎡、平均年齢55歳の場合、セマグルチドを68週間(16週間の増量期間を含む)を使用した結果、プラセボ群と比較して、投与群で平均6.2kg(6.2%)の体重減少が報告されています。

セマグルチド使用による主な副作用

吐き気、げり、嘔吐、便秘、胃の痛み、頭痛、腹部膨満感、低血糖など

 

トルリシティ(GLP-1アナログ)にダイエットに効果は期待できない理由(2020/8/23)

 

2型糖尿病治療薬のGLP-1アナログを使用したダイエットが話題になっているようです。自由診療と称して「トルリシティ」をダイエット目的で処方している美容クリニックもインターネットの検索ワードに出てきます。

 

これに対し、日本糖尿病学会は「美容・痩身・ダイエット等を目的とする適応外使用に関して、

2 型糖尿病を有さない日本人における安全性と有効性は確認されていない」として警告を発しています。

GLP-1 受容体作動薬適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解

 

以下に私個人の意見と「GLP-1アナログダイエット」について調べた感想を記します。

 

GLP-1アナログ製剤にはダイエット効果はあると思いますが、意を決して自由診療として肥満治療を行うのであれば、臨床データを踏まえた上で、BMI30以上の方が適切な投与量での治療を行った方がいいと感じます。

(米国FDAは高用量GLP-1製剤を2014年に肥満治療薬として承認しています。)

 

アメリカにおけるGLP-1アナログ製剤による肥満治療実績

 

2型糖尿病治療薬に“ビクトーザ皮下注(一般名:リラグルチド)”というGLP-1アナログ製剤があります。ビクトーザ注射剤は通常1日1回0.9mgという量を皮下注射します。糖尿病の症状によっては1回に1.8mgまで増量できる製剤です。(日本国内でも使用されています)

 

アメリカのFDA(日本の厚生労働省のようなところ)において、肥満治療として承認された薬のデータを確認したところ、BMIが30以上または、BMIが27以上で基礎疾患を有している被験者を対象としてリラグルチド皮下注(ビクトーザ)を1回に3mgを56週間(392日間)使用した場合に、56%の被験者で体重が5%以上減少したというデータがあります。

(160週間(約3年間)リラグルチド皮下注(ビクトーザ)を1回3mg使用した場合に体重が5%以上減少した被験者の割合は28%です。)

 

<<BMIが30以上のめやす>>

身長:150cmで体重69kg以上

身長:155cmで体重73kg以上

身長:160cmで体重77kg以上

身長:165cmで体重82kg以上

身長:170cmで体重87kg以上

身長:175cmで体重92kg以上

身長:180cmで体重98kg以上

身長:185cmで体重103kg以上

 

上記のデータからわかることは、肥満治療としてGLP-1アナログを使用するのであれば、BMI30以上の方が糖尿病治療で使用する量の約2倍の投与量を1年間継続使用する必要があるということです。少なくとも、BMI25未満の方が興味本位なダイエットと称してトルリシティを3カ月程度使用したところで有意差があるデータがでるとは思えません。

 

仮に日本国内でGLP-1アナログを使用して肥満治療を自由診療で行うのであれば

ビクトーザ18mg:10396円を1カ月で5本使用する計算になりますので薬代だけで1カ月あたり5万2000円程度の費用となります。

繰り返しとなりますが、糖尿病学会の記載通り「美容・痩身・ダイエット等を目的とする適応外使用に関して、2 型糖尿病を有さない日本人における安全性と有効性は確認されていません。」

glp-1-diet

glp-1-diet

GLP-1アナログの効果とは?

 

胃の内容物の空腹率を調節する効果があります。反対の働きをする物質は「グレリン」と呼ばれます。胃の中に食べ物があるとき、グレリンが分泌されれば胃腸が良く動き、グレリンが脳に働きかけて食欲は増します。一方、GLP-1が分泌されれば胃腸の動きが停滞し、脳に対して食欲ストップという命令を下します。

 

私たちの胃腸内部では「グレリン」と「GLP-1」がタイミングよく分泌されて、食欲をコントロールしています。

 

GLP-1という物質は分泌されても数分以内に分解されてしまうという特徴がありますが、分解されにくいように人工的に作られた薬が「GLP-1アナログ」です。そのためビクトーザ(GLP-1アナログ)を皮下注すると、24時間にわたって「胃腸の働きを抑え、食欲を抑える」という命令が下されることになります。

副作用

GLP-1アナログを皮下注すると、胃腸のはたらきが停滞しますので、吐き気・胃部不快感・便秘といった副作用が起こりえます。また胃腸の中に食べ物が貯留する時間が増えますので胆石症や発症率が高くなります。また場合によっては膵炎・腸閉塞といった消化器系の副作用も懸念されます(頻度不明)。さらに、胃腸の働きが停滞しますので、現在飲んでいる薬の吸収率・効き目がに変化が現れるかもしれません(FDAの添付文書より)

(他の血糖降下薬と併用した場合は低血糖が起こりえます)

 

現時点ではGLP-1アナログ製剤には注射剤しかないため、「GLP-1ダイエット」については“興味はあるけどやってみたいとは思わない”という方が多いかもしれません。しかし1年以内にはGLP-1アナログの飲み薬「リベルサス(セマグルチド内服薬)」が発売されると思いますので、GLP-1ダイエットの話題はしばらく続くかもしれません。

リベルサス錠が発売開始(2021年2月5日)

-糖尿病, 肥満
-GLP-1アナログ, ダイエット, トルリシティ, ビクトーザ

執筆者:ojiyaku


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