おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

潰瘍性大腸炎治療薬 糖尿病

2型糖尿病患者におけるDPP4阻害薬服用が炎症性腸疾患(IBD)リスクを増加させる

投稿日:2018年4月2日 更新日:

 

2型糖尿病患者におけるDPP4阻害薬服用が炎症性腸疾患(IBD)リスクを増加させる

 

2型糖尿病患者さんにおけるDPP4阻害薬の服用が炎症性腸疾患(IBD)の発症リスクを増加させるという報告をカナダの研究チームが行いました。

炎症性腸疾患(IBD)とは、感染・薬剤性などが原因となる“特異性の炎症性腸疾患“とクローン病・潰瘍性大腸炎などの”非特異性炎症性腸疾患”とに大別できます。

 

今回の報告は炎症性腸疾患全体をターゲットとしていますので、クローン病や潰瘍性大腸炎を患っている2型糖尿病患者さんにおいて、服用薬剤の見直しにつながるかもしれません。

 

対象:2007年1月~2016年12月の期間に糖尿病治療を開始した14万1170人

DPP4阻害薬服用による炎症性腸疾患(IBD)リスクの増悪

結果:全体として208例の炎症性腸疾患が発生

 

DPP4阻害薬服用群:53.4人/10万人年あたり

その他の糖尿病治療薬服用群:34.5人/10万人年あたり

動物性脂肪の摂取がDPP4阻害薬の効果を減弱する

ハザードリスクとしてはDPP4阻害薬を服用すると炎症性腸疾患の発現頻度が1.75倍高くなるという結果となりました。

ippouka

ippouka

さらにDPP4阻害薬の服用期間が長くなるにつれて徐々にリスクが上昇し、3~4年後に炎症性腸疾患の発現頻度がピークとなります(リスク:2.9倍)。その後は発現頻度が減少していき4年以上DPP4阻害薬の服用を続けると、炎症性腸疾患の発現リスクは1.45倍へ減少していきました。

DPP4阻害薬は2009年に登場して以来、単剤での使用は低血糖リスクが低く、禁忌や慎重投与が少ない血糖降下薬として国内市場が拡大したイメージがあります。クローン病や潰瘍性大腸炎などの寛解と再発を繰り返しているような患者さんがDPP4阻害薬を使用しているのであれば、その使用について再検討する価値はあるのかもしれません。

メトグルコ服用と体重増減について

動物性脂肪の摂取がDPP4阻害薬の効果を減弱する

-潰瘍性大腸炎治療薬, 糖尿病
-DPP4阻害薬, エクア, クローン病, 悪化, 潰瘍性大腸炎

執筆者:ojiyaku


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.

関連記事

tablet

フォシーガ錠に慢性腎臓病の適応症が追加

フォシーガ錠に慢性腎臓病の適応症が追加 フォシーガ錠5mg、同錠10mg 「慢性腎臓病。ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者は除く」 上記効能効果が追加されました。再審査期間は4年間   …

tab7

DPP4-阻害剤の重大な副作用に「急性膵炎」「類天疱瘡」が追加となる

DPP4-阻害剤の重大な副作用に「急性膵炎」「類天疱瘡」が追加となる   厚生労働省はトラゼンタやスイニーなど、DPP-4阻害剤の重大な副作用に「急性膵炎」「類天疱瘡」を追加することを公開し …

oral-semaglutide-1

リベルサス錠が発売開始(2021年2月5日)

リベルサス錠が発売開始(2021年2月5日) 2型糖尿病治療薬であり世界初の経口GLP-1受容体作動薬「リベルサス錠」が2021年2月5日発売開始となりました。 GLP-1受容体作動薬は、これまで注射 …

SGLT2-inhibitor-lisk-of-CVD

ジャディアンスによる心臓・腎臓保護作用は服用中止後も効果が持続(2024/11/10)

ジャディアンスによる心臓・腎臓保護作用は服用中止後も効果が持続(2024/11/10) SGLT2阻害薬、ジャディアンス錠の効果について 研究の背景: ジャディアンス錠が、慢性腎臓病(CKD)の患者さ …

type-1-diabetes-hba1c

1型糖尿病患者における超低炭水化物食によるHbA1c管理について

1型糖尿病患者における超低炭水化物食(VLCD)によるHbA1c管理について   1日の炭水化物摂取量を30g程度で管理する超低炭水化物食を行った1型糖尿病患者群に関するデータが開示されまし …