高齢者糖尿病の薬剤使用の注意点/超高齢化における糖尿病適正処方手引き
日本医師会のホームページに
「超高齢化社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き(糖尿病)」
が掲載されました。全16ページからなり、PDFファイルとしてダウンロードすることも可能です。
日本人の12人に1人が糖尿病予備軍といわれており、そのうち65歳以上の高齢者が60%を占めるといわれております。高齢者糖尿病とは「75歳以上の高齢者」と「老年症候群を合併した65~74歳の前期高齢者」と想定されております。
「超高齢化社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き(糖尿病)」をズラーっと読んでみました。調剤薬局で勤務している私としましては、患者様とのお話の中に取り入れたいないぁと思う内容が随所に詰まっておりましたので忘れないように箇条書きでまとめてみます。
・糖尿病患者は糖尿でない人と比べてアルツハイマー病に約1.5倍、血管性認知症に約2.5倍なりやすい。軽度認知障害にもなりやすい。
・糖尿病患者は糖尿病でない人と比べて、交通機関での外出、買い物、金銭管理、服薬管理といったADL手段的が1.65倍低下しやすくサルコペニア(筋力低下)、フレイル(健康と要介護の中間状態)をきたしやすい。
・食事療法は過栄養だけでなく低栄養も考慮しなければならない。毎日の体重測定が大切。75歳以上の体重減少は筋力低下につながる可能性もある。重度の腎機能障害がない場合はタンパク質を十分に摂取すること。野菜の摂取は血糖コントロールの観点から進められる。減塩は食事摂取量の低下やQOL低下に注意して行う。
・歯周病や義歯の不具合で食事摂取の低下や血糖コントロールの変化が起こることがある。
・運動療法は1回30分以上の有酸素運動(歩行など)を週4日以上行うことが進められております。座った姿勢や寝る姿勢でいる時間を減らし社会参加を促すこと。
シックデイとは
糖尿病患者が発熱・嘔吐・食欲低下などによってストレスホルモンの分泌亢進やインスリン抵抗性が増悪して血糖コントロールが悪化しやすい状態のことです。
シックデイ対策
・発熱時には味噌汁・スープ・果汁・スポーツドリンクなど水分を1~1.5L余分に補給する
・おかゆ・うどん・果物・スープなどを少量ずつ、回数を増やして炭水化物を摂取する
・インスリン治療・飲み薬に関しては体調を勘案して処方医と相談
高齢者糖尿病の薬物療法
・ビグアナイド薬
(メトグルコ・グリコラン)
・乳酸アシドーシスの頻度は10万人当たり1人程度
・腎機能の指標であるeGFR(子宮体ろ過量)が30ml/分/1.73㎡未満の場合は禁忌
・75歳以上の高齢者では腎機能が保たれていれば使用可能
・eGFRが30~6030ml/分/1.73㎡の方ではヨード造影剤検査の前あるいは造影時にメトホルミンを中止して48時間後にeGFRを再評価して再開する
・嘔気・嘔吐など消化器症状に注意、まれであるがビタミンB12欠乏にも注意
DPP-4阻害薬
(グラクティブ・ジャヌビア・エクア・オングリザ・ネシーナ・トラゼンタ・テネリア・スイニー・ザファテック・マリゼブ)
・DPP-4阻害薬を高用量のSU薬に併用する場合はSU薬の減量を行う
スルホニル尿素薬(SU薬)
(オイグルコン・ダオニール・グリミクロン・アマリール・ジメリン・アベマイド・デアメリンS)
・グリミクロンHA(グリクラジド)はアマリール(グリメピリド)と比べて重症低血糖の頻度が約1/9程度であるというメタ解析報告がある。
・オイグルコン・ダオニール(グリベンクラミド)は作用時間が長く、高齢者では使用を控えること。
SGLT2阻害薬
(スーグラ・フォシーガ・ルセフィ・アプルウェイ・デベルザ・カナグル・ジャディアンス)
・慎重投与。75歳以上の高齢者では安全性は明らかでない
・腎機能の指標であるeGFR(子宮体ろ過量)が30ml/分/1.73㎡未満の場合は中止
・eGFR(子宮体ろ過量)が45ml/分/1.73㎡未満の場合は腎機能低下により血糖降下作用が減弱するため慎重投与
・脱水・性器感染症・尿路感染症、ケトアシドーシスに注意する
チアゾリジン薬
(アクトス)
体重増加・浮腫・心不全・女性の骨折などの副作用に注意
α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)
(グルコバイ・ベイスン・セイブル)
放屁・腹部膨満感・腸管気腫症・イレウス・肝機能障害などの副作用に注意
即効型インスリン分泌促進薬
(シュアポスト・グルファスト・ファスティック・スターシス)
・SU薬に比べて重症低血糖は少ないとされているが、高度腎機能障害がある場合や高用量で使用する場合には低血糖に注意する
GLP-1受容体作動薬
(ビクトーザ・ビデュリオン・バイエッタ・リキスミア・トルリシティ)
・嘔気、嘔吐などの消化器症状に注意する自己注射が困難で注射のサポートが得られない場合には、訪問看護などによりGLP-受容体薬の週1回製剤を使用することができる
「超高齢化社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き(糖尿病)」