おじさん薬剤師の日記

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抗コレステロール薬 糖尿病 飲み続ける

コレステロールの薬を飲み続けて大丈夫ですか?

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コレステロールの薬を飲み続けて大丈夫ですか?

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コレステロールを下げるお薬をずっとお飲みいただいている患者様にお薬をお渡しする際に、筋肉痛や関節痛・四肢のむくみといった有害事象が起きていないかどうかを確認することが多いのですが、

 

「コレステロールの薬を飲み続けて大丈夫ですか?」

 

というご質問をいただくと

「定期検査をし続けて、大丈夫であることを継続確認することが大切です」

といった回答に至ってしまうことが多いです。

 

今回はコレステロールの薬を長期間飲み続けた場合の体調変化のリスクについて調べてみました。

スタチン製剤を服用すると大腸がん患者の死亡リスクが下がる?(2019年5月)

2019年5月29日 追記

HMC-CoA還元酵素阻害剤(以下、スタチン製剤)は、メバロン酸の合成阻害作用により、がん細胞の増殖を抑えたり、がん細胞の死滅を促したり(アポトーシス誘導)、がん細胞へつながる新しい血管新生をおさえることで、ガンの発生、進行を補助的に抑えるかもしれないという報告がいくつか上がっております。2019年5月、大腸がん患者さんがスタチン製剤を使用した場合の死亡リスク軽減に関する報告がありましたので概要を記します。

・大腸がんと診断される前のスタチン製剤使用により、大腸がん患者全体の死亡リスクが15%減少した

・大腸がんと診断される前のスタチン製剤使用により、大腸がん特異的死亡リスクが18%減少した

・大腸がんと診断後にスタチン製剤を使用した場合、大腸がん患者全体の死亡リスクが14%減少した

・大腸がんと診断後にスタチン製剤を使用した場合、大腸がん特異的死亡リスクが21%減少した

上記の臨床報告をもとに筆者らは、大腸がんの診断前・診断後のスタチン製剤の使用は、大腸がん患者さんの死亡リスクを低下させることが示されたとまとめています。

 

スタチン製剤によるガン増殖抑制に関する報告としては、クレストール(ロスバスタチン)の使用により腫瘍増殖の遅延効果・アトルバスタチンによるアポトーシスレベルの増加に起因する結腸癌細胞増殖抑制効果(マウスデータ)、シンバスタチンによるアポトーシス誘導・血管新生抑制作用による結腸癌発症抑制効果などが報告されております。

 

メバロン酸経路はファルネシルピロリン酸、ゲラニルピロリン酸など、細胞内Gタンパク質を誘導することより、細胞増殖・血管新生・アポトーシス阻害に関与する伝達物質を産生するのですが、スタチン製剤を投与することによりメバロン酸経路が阻害されて、伝達物質の産生が低下するために、細胞増殖・血管新生といったがん細胞の増殖に関与する機能が減少し、がんの増殖が抑制されたのではないかと筆者らは推測しています。

スタチン製剤による大腸がんによる死亡リスク低下の報告

スタチン製剤を飲み続けた場合のリスクについて

 

リピトールやクレストール・リバロ・メバロチンといったコレステロールを下げるお薬(スタチン製剤)を飲んでいる方9535人(平均年齢64.3歳±10.1)を調査したデータによると、スタチン製剤を使用している人は、使用していない人と比較して高血糖であり、インスリン抵抗性が高く、2型糖尿病の発症リスクが38%高いというデータが2019年3月に報告されています。この傾向、太りすぎ・肥満の方において顕著にみられたと記載されています。

 

コレステロールが上がる理由には家族性(遺伝)によるものもあれば、食べ過ぎによるものもあるかと思うのですが、食べ過ぎが理由である場合は、脂肪分・糖分の過剰摂取が考えられますのでコレステロールと血糖が同時にUPすることが十分予測されます。

 

しかし、ここで興味深い事として、作用機序として複数あるコレステロールの薬の中で、一部のスタチン系製剤を飲んだ群に関して血糖値・HbA1cが上がりやすいという報告が多い点です。(スタチン系・フィブラート系・ゼチーアなどすべてのコレステロールの薬に関して同程度の血糖上昇が報告されていれば納得できるのですが、一部のスタチン系で血糖上昇作用が多く報告されている点が気になります)

パルモディア錠(ペマフィブラート)とリピディルとの比較データ

国内で使用されているコレステロール薬について血糖上昇の副作用報告数

 

以下に国内で使用されているコレステロールを下げる薬に関して血糖上昇関連の副作用報告数(パーセント)を記します。副作用報告数を確認するとリピトール(アトルバスタチン)の血糖上昇に関する副作用頻度が、他剤と比較して圧倒的に高いことがわかります。実際、スタチン系製剤服用による血糖上昇に関する報告の多くがアトルバスタチンに関する報告です。

 

リピトール(アトルバスタチン)

血中ブドウ糖増加:0.93%

グリコヘモグロビン(HbA1c)増加:0.53%

 

ゼチーア

血中ブドウ糖増加:0.23%

グリコヘモグロビン(HbA1c)増加:0.12%

 

クレストール

血中ブドウ糖増加:0.01%

グリコヘモグロビン(HbA1c)増加:0.01%

 

リバロ

血中ブドウ糖増加:0.04%

グリコヘモグロビン(HbA1c)増加:0.01%

 

メバロチン

血糖上昇:0.02%

 

リポバス

血中ブドウ糖増加:0.06%

 

トライコア

血中ブドウ糖増加:0.06%

 

ベザトール

血糖上昇:0.02%

アトルバスタチン(リピトール)服用による血糖上昇に関する報告

 

アトルバスタチンの継続服用と血糖上昇に関する最近の報告をいくつかまとめました。

アトルバスタチンを服用している75人を対象に6~18カ月間の血糖関連のデータを集積した報告によると、低用量・高用量アトルバスタチンを1年間服用すると耐糖能異常(IGT)に変化がみられ、HbA1cおよび空腹時血糖に有意な変化が確認されております。特に高用量のアトルバスタチン療法は耐糖能異常と関連しており、糖尿病既往歴のある方では糖尿病の進行を引き起こす可能性が示唆されています。

アトルバスタチン(低用量・高用量)と耐糖能異常に関する方向(2017年2月)

 

スタチン系製剤を1年以上服用した場合の、新規糖尿病発症率に関する報告を確認してみるとアトルバスタチン80mgを服用した被験者8人中2人が新規糖尿病を発症した。アトルバスタチン40mgを服用した被験者の14.7%、アトルバスタチン20mgを服用した被験者4.1%が新規糖尿病を発症した。ロスバスタチン20mgを服用した患者は糖尿病を発症しなかったという報告があり、アトルバスタチンは用量依存的に新規糖尿病を発症するリスクが示唆されています。(アトルバスタチン40~80mgおよびシンバスタチン10~20mgを服用した群ではインスリン感受性の24%低下、インスリン分泌12%減少が報告されております)

アトルバスタチンが用量依存的に新規糖尿病の発症リスクとなりうる(2018年12)

コレステロールを下げるお薬がDo処方で続く患者様への薬歴

上記のアトルバスタチンの報告は、40~80mgという高用量で使用した際に、新規糖尿病発症リスクが高いという報告です。日本国内でのアトルバスタチンの常用量は10mgであり、重症例の場合は20mg、家族性コレステロール血症の重症例では40mgまで増量できることになっています。アトルバスタチンが用量依存的に新規糖尿病発症リスクを増加させると仮定した場合、国内でのおもな使用量(5mgや10mg)がどの程度の糖尿病リスクとなりうるかは難しいところではあります。

 

以上のことを踏まえて、薬局で勤務している私にできることとしましては、アトルバスタチンを長期服用している方とお話しする際に、「筋肉痛関連の副作用が起きていないか」に加えまして「採血検査の結果、血糖値・HbA1cは上がっていませんか?」と定期的にお声がけをし続けることなのかなぁと感じました。

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執筆者:ojiyaku


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