おじさん薬剤師の日記

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金パブをオーバードーズ(OD)で使用する記事を読んで

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金パブをオーバードーズ(OD)で使用する記事を読んで

 

若者がパブロンゴールド(金パブ)をオーバードーズ(過量服用)することで高揚感・多幸感(イライラが治まる)・フワフワ感を楽しむという記事を目にしました。Yahoo知恵袋には「金パブ」に興味はあるものの副作用や依存性が怖いための、そのあたりを探るような質問内容が多く記されていることを知りました。

 

Yahoo知恵袋を見ていると、金パブに含まれている「アセトアミノフェン」をたくさん飲むと肝機能障害・肝臓を痛める可能性があるという記載を多く見かけました。そこで今回は「金パブ」をたくさん飲むと体の中で何が起きるのかについて「アセトアミノフェン」を中心に記してみたいと思います。

金パブに含まれているアセトアミノフェンをたくさん飲むとどうなるか

 

アセトアミノフェンの上限については一般的に5000mg~10000mg以上を1回服用すると何らかの肝障害を起こす可能性が高く、15000mg以上を1回服用すると劇症化すると考えられています。

 

金パブ中毒者では1回に2000~3000mgのアセトアミノフェンを使用している事例を目にしました。んーん、ぎりぎりの量ですね。(医療用医薬品として、整形外科医が鎮痛目的で1回1000g程度を使用することはありますが、金パブ中毒者はその2~3倍を一度に使用している事例があるようです)

 

1回に3000mgのアセトアミノフェンを一度に飲んだ場合、体の中では2800mg程度のアセトアミノフェンは肝臓にて油分の多い液で包み込まれて、そのまま尿として体外へ排泄されます。問題は残りの200mgのアセトアミノフェンです。肝臓には食べ物や薬を加工する“酵素”というものがあります。200mgのアセトアミノフェンは肝臓の“CYP2E1やCYP3A4“という聞きなれない”酵素“によって酸素を付加されて、肝臓を攻撃する”NAPQI“という副産物へと変換されてしまいます。

 

NAPQIは肝臓に対して非常に毒性が高く、危険な物質であるため通常であれば、通常の状態であれば身体は、その対応策としてグルタチオンという物質とNAPQIを結合して不活性化(無毒化)する対応をとります。

 

しかし、CYP2EIという酵素をたくさん作るタイプの人や、アルコールを飲んだ後(CYP2EIがパワーアップしている)では、肝毒性のあるNAPQIが予想よりもたくさん作られてしまいます。その結果、体内のグルタチオンが枯渇してしまい、NAPQIによって肝臓が攻撃されてしまいます。これが肝機能障害です。肝機能障害の程度がひどい場合は肝性昏睡(意識を失う)ケースも報告されております。

pabron

pabron

以下はアメリカでの報告ですが、1日4000mgのアセトアミノフェンを14日間連続服用すると、肝機能が上昇したという報告があることから、アセトアミノフェンは1日3000mgを超えないよう勧告しています。

 

アセトアミノフェンと肝障害に関しては肝臓の酵素“CYP2EI”の量がポイントになっていることがわかります。しかし自分のCYP2EIの量が多いかどうかは知るすべがありません。

一つ言えることは、アルコールを連日多く摂取し続けると、CYP2EIの活性が高まるという報告がありますので、連日アルコールを摂取している状態でアセトアミノフェンを過量服用すると肝障害をり患しやすい可能性が示唆されます。

 

金パブを過剰摂取する若者の心情としては「他人に相談できない悩み」があったり、「単なる興味本位」であったりと、事情を推し量ることはできません。

 

アセトアミノフェンを過剰摂取して肝臓に何らかの毒性が生じると「だるい・食欲がない・吐き気がする」といった初期症状が現れます。それでもなお、肝臓へのダメージが蓄積すると、皮膚や目が黄色くなる(黄疸)、尿の色が濃くなるといった自覚症状が起こりえることを認識して、過量服用による臓器ダメージを十分理解してほしいと思います。

片頭痛に対するカロナール(アセトアミノフェン)の効果・量について

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執筆者:ojiyaku


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