ロイコン錠は抗がん剤治療や放射線治療後の一時的な白血球数減少症を回復するために用いられる薬です。白血球数の減少量が大きい場合はグラン・ノイトロジン・ノイアップなどのG-CSF注射製剤が投与されますので、ロイコン錠の内服投与というのは外来通院可能な軽度白血球減少症に用いられるイメージです。
ロイコン錠の成分は「アデニン10mg」です。アデニンとは動植物生体中の細胞核の中にあるDNA塩基の一つであり、我々の体の中にも広く分布しています。しかし「アデニン」がDNAの一部分として存在することは目にしても、単独に存在することはほとんどありません。
ロイコン錠が開発されるきっかけとなったのは、フランスのLecoqによりアデニンを単独で投与することで白血球増加作用が明らかにされたためで、その後、臨床的に様々な原因による白血球減少症に対して投与(治療的または予防的)されるようになりました。
「アデニン」は尿酸値上昇や痛風症状の原因物質として耳にすることが多い「プリン体」のプリン部分構造をもちます。服用量や体質・食生活にもよりますが、ロイコン錠の使用により軽度の尿酸値上昇が起こりえます。そのため白血球数減少量にもよりますが、尿路結石のある方や、痛風治療を行っている患者さんには基本的にロイコン錠の使用は禁忌とされています。
薬理作用:ロイコン錠は骨髄細胞のRNA、DNAによくとりこまれ、核酸合成に利用される
薬物動態:ロイコン錠を服用後1時間ほどで最高血中濃度となり服用2時間後には血中濃度が低下し、尿中排泄される。そのため1日を通して安定した効果を期待する場合は2~3回に分けて服用することが求められます。
~治療成績~
・白血球数が30%以上増加し、その増加が持続した例を有効例とすると30人中20人に有効
・白血球数が1000以上増加したものは19例中14例、そのうち正常値まで回復したものは12例
・抗がん剤投与後の白血球減少症に対して19例中16例で3~4週までの間に回復
・本態性血液疾患では効果は見られない
治療成績としては60%~70%の患者さんに対して効果があがっていることから、他の内服薬の治療成績と比較しても平均的な値と思われます。
ロイコン錠(アデニン10mg)を放射線治療または抗がん剤治療後の一時的な白血球減少症に使用する場合、3~4週間(20日~30日)の服用で60~70%の患者さんに白血球数の改善がみられることが分かりました。薬物動態としては代謝されやすいという特徴があるため、単回投与で血中濃度を維持することは難しいです。そのため1日何回かにわけて服用することが大切です。飲み忘れに注意が必要な薬剤と言えます。