メリスロン錠(ヒスタミン類似物質)とH2ブロッカーや抗ヒスタミン剤との併用について

メリスロン錠(ヒスタミン類似物質)とH2ブロッカーや抗ヒスタミン剤との併用について

 

めまい症で処方されるメリスロン錠にはヒスタミン類似作用があります。

 

メリスロン錠の開発経緯を確認してみると、血管性頭痛にヒスタミン投与が有効である報告をヒントとして、めまい症にもヒスタミンを投与するという報告が1940年代の米国で多くみられたという経緯があります。しかし、ヒスタミンは腸管内で分解されてしまうため低用量の内服では効果がありません。これらの経緯から内服でも分解されないヒスタミン類似化合物として開発された医薬品が“メリスロン錠”です。

実際にメリスロン錠とヒスタミンの構造式を見比べてみると、類似していることがわかります。

histamin

体内において、通常ヒスタミンは肥満細胞や好塩基球などの細胞内に98%以上が蓄えられており、外的刺激によって細胞外へ放出されます。ヒスタミンが放出されると炎症やアレルギー反応・血管拡張・胃酸分泌促進などの作用を示します。外的刺激がない場合の血中ヒスタミン濃度には個人差が大きいかと思われますが0.1~0.2ng/ml(被験者6人)というデータをタゴシッド200mg注射のインタビューフォームで確認しました。

(犬やラットの血清中ヒスタミン濃度は3~50ng/mlと幅がありました)

めまい症状治療薬のはたらきの違いについて

ヒトがメリスロン錠を服用した場合の血中濃度に関するデータは添付文書にもインタビューフォームにも記されておりません。雄ビーグル犬がメリスロン錠240mgを単回服用した場合は服用90分後に血中濃度が9ng/mlまで上昇して、その後低下する(服用後3~4時間後には消失)という薬物動態となっています。

 

ビーグル犬の血中濃度推移を単純にヒトに置き換えることはできませんが、ヒトの場合は1回にメリスロン錠6mgまたは12mgを服用しますので、単純換算するとすればメリスロンというヒスタミン類似物質が0.2~0.45ng/ml程度の量で血中を流れることになります。

メチコバール錠の薬理作用について

メリスロン錠(ヒスタミン類似物質)を服用することで胃酸分泌亢進・気道収縮・アドレナリン過剰分泌による血圧上昇(褐色細胞腫の患者様)という副作用が起こりうるため上記の関連疾患の患者様がメリスロン錠を服用する際は慎重投与とされています。

 

ここからが本題なのですが、先日、支払基金から「メリスロン錠とガスターD錠を服用している患者様の薬歴を提出」という内容の返戻が来ました。

 

突合点検による返戻で「薬歴を提出」という文言は、そこまで多くはないかと思うのですが、おそらくはメリスロンのヒスタミン類似作用とH2ブロッカーの併用に関して薬歴に記しているか・処方医へ確認しているかという点が査定ポイントかと思われました。

 

薬理作用について同様に考えると、気管支喘息で吸入薬を使用している患者様へメリスロン錠が処方された場合にもメリスロン錠によるH1作用による喘息悪化の危険性について注意をしているかどうかが薬歴の査定ポイントかと思われます。

 

日本国内では褐色細胞腫の方へのメリスロン投与は慎重投与となっていますが、海外では禁忌としている国もあります。

 

同じく海外での報告ですが、メリスロン錠服用により体内のヒスタミン濃度が上昇して、アレルギー性の皮膚関連疾患(かゆみ・蕁麻疹・粘膜の腫れ)が報告されています。

 

耳鼻咽喉科や皮膚科から継続的に抗ヒスタミン剤を処方されている方にメリスロン錠が追加された場合は、過剰に薬理作用を伝える必要はありませんが、アレルギー症状が悪化しないかどうか注意喚起を促してもいいかもしれません。

いろいろな薬の添付文書やインタビューフォームを確認しまいたが、血中ヒスタミン濃度を記載している報告が少なかった背景としては、体内のヒスタミンの多くが肥満細胞や好塩基球に98%以上が貯蔵されていており、健常者において血漿中にヒスタミンが放出されていない状態で、血中ヒスタミン濃度を検出しようとすると0.1ng/ml~程度しか検出できないため、血中ヒスタミン濃度を測定すること自体難しいのかもしれないなぁと感じました。

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ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業