脳梗塞や一過性脳虚血発作の急性期患者さんは再発リスクが高いために、その再発抑制を目的として2009年4月から抗血小板薬3剤併用による有効性・安全性を検討するランダム化比較試験(TARDIS)が行われていました。その結果、3剤併用は重大な出血リスクが有意に上昇するため、「ルーティーンの臨床診療では使用すべきでない」という報告がなされました。
抗血小板薬3剤併用療法とは
アスピリン錠(初日:300mg、それ以降は75mg/日(50~150mgの場合あり))
プラビックス錠(初日:300mg、それ以降は75mg/日)
ペルサンチン錠(普通錠300~400mg/3×~4×、または徐放錠200mg/2×)
比較対象治療として従来のガイドライン抗血小板療法
・プラビックス錠単独療法(初日:300mg、それ以降は75mg/日)
・アスピリン+ペルサンチンによる2剤併用療法(服用量は上記と同じ)
上記のいずれかの療法が比較対象とされました。
対照:発症から48時間以内の非心原性脳梗塞または一過性脳虚血発作を有する成人患者3096名を3剤併用群1556名、ガイドライン群1540名に割り振り比較検証されました。
期間:2004年4月7日~2016年3月18日まで
評価項目:
投与開始から7日後、35日後の安全性、有効性、認容性
90日以内の脳卒中、一過性脳虚血発作の再発・重症度
結果
・脳卒中または一過性脳虚血発作の再発または重症度
3剤併用群:6%(93例)
ガイドライン群:7%(105例)
両群における有意差なし
・重度の出血リスク
3剤併用群はガイドライン群に比べてオッズ比で2.54倍の割合で重度の出血リスクが高い(有意差あり)
上記の結果より、脳梗塞・一過性脳虚血発作の急性期患者に対する抗血小板薬3剤併用は再発リスクを軽減せず、重大な出血リスクを増加させることが示されました。そのため「抗血小板薬3剤併用療法はルーディーンの臨床診療では使用すべきでない」とまとめています。
もちろんガイドライン群(プラビックス単剤、バイアスピリン+ペルサンチン)の服用でも重大な出血リスクは起こりえますが、その有益性と副作用リスクを考えた時に3剤を服用する有益性が見いだされなかったので、従来通りのガイドラインで推奨されている医薬品を服用していけばいいとうい内容です。
抗血小板薬に関する最近の報告としては低用量アスピリンの長期服用における頭蓋内出血リスクに関する報告もあがっていました。
低用量アスピリンの長期服用における頭蓋内出血リスクに関しては、非服用者と比較して頭蓋内出血リスクの増加は関連なし、1年以上の継続服用により、くも膜下出血リスクの低下(RR:0.69)が報告されております。
被験者:40~84歳で低用量アスピリン(75~300mg)を新規で服用開始
被験者数:19万9079人
服用期間:中央値5.4年
結果
低用量アスピリン服用者と非服用者におけるリスク比
頭蓋内出血:0.98
硬膜下血腫:0.98
くも膜下出血:1.23
いずれも有意差なし
低用量アスピリンを1年以上継続服用すると、くも膜下出血のリスクが30%ほど低下するという報告となっています。