東和薬品は発がん性物質NDMAがメトホルミン塩酸塩錠から検出された問題にについて、製造過程で原薬と大気中の窒素酸化物が造粒機の中で反応し、NDMAが生成された可能性についてホームページで公開しました。
発がん性ニトロソジメチルアミン生成メカニズム解明についての研究成果
東和薬品の報告によると、メトホルミンは大阪工場と山形工場で製造しており、同じ原薬を使用しているにも関わらず、基準値を超えていたのは大阪工場の製品だけであったことに着目して研究をすすめています。
調査の結果、原薬メーカーがDMA(アミノ類)を使用してメトホルミンの原薬を製造しており、DMAを取りきることができずに不純物として原薬中に残ってしまったことが一つ目の理由、二つ目の理由は大阪工場付近の大気汚染が原因で窒素酸化物の飛散量が多く、造粒機が外気を取り込み暴露される製造過程で、残存していたDMAと外気の窒素酸化物が反応してNDMAが作られた可能性を示唆しています。
同社はこれらの結果をうけて、DMAを含まない原薬を使用すること、造粒機付近の窒素酸化物量を減らすため、焼却炉や駐車場の排気ガスなどに注意を払うこと、造粒時間を短くすること、造粒温度を下げることを提案しています。
東和薬品と日医工はメトホルミン塩酸塩500mgMT「トーワ」、「日医工」の一部のロットについて、管理指標(0.043ppm)を超える発がん性物質Nニトロソジメチルアミン(NDMA)が検出されたことを理由にクラスⅠ自主回収を行うと発表しました。
メトホルミン塩酸塩500mgMT「日医工」自主回収(クラスⅠ)
同製剤は東和薬品が製造しており、250mg製剤については管理指標を超えるロットはなかったとしています。(日医工は東和薬品へ受託製造している)
原因については「現在調査中で特定には至っていない、複数の可能性がある」としております。先発品のメトグルコ錠においてはPTPアルミ箔の錠剤接触面の印刷インクに含まれるニトロセルロース系樹脂由来の物質が、錠剤中の原薬に僅かに残留していた原料であるジメチルアミンと反応してNDMA(発がん性物質)が生成された可能性があるということでしたが、東和薬品によると、インクが原因ではないとしています。
現在、同製品を服用中の患者向けの案内文には「本製剤におけるNDMA含有量の管理指標は、本製品の1日最大用量を70年間服用し続けた場合「10万人に1人に発がんリスクが増加する」ことを許容する基準」と説明し、自己判断で中止しないよう求めています。
また、同日(9/16)日医工は健胃消化剤”パンクレアチン「日医工」”、”ジアスターゼ「日医工」”の2品目について自主回収(クラスⅡ)を行うことを発表しました。パンクレアチン「日医工」に関しては長期安定性試験において承認規格下限を下回り十分な効果が得られない可能性があることとしており、ジアスターゼ「日医工」に関しては長期安定性試験において、乾燥減量が承認規格上限値を上回ったためとしています。
両製剤は全てのロットを回収するとしています。
(製品使用による重篤な健康被害が発生することはないとしています)
共和クリティケアが受託製造するソフトバック製剤が環境モニタリング試験(浮遊微粒子、付着菌・浮遊菌・落下菌)に不備があることが社内調査で判明し、自主回収となりました。
自主回収を開始したメーカーは、沢井製薬、東和薬、エーザイ、日本ケミファ、第一三共エスファ、日本製薬、マイラン製薬、陽進堂、キョーリンリメディオ、大興製薬、富士薬品です。(いずれもクラスⅡの回収)
大日本住友製薬が販売しているメトグルコ錠250mg、500mgのPTP包装
日本ジェネリックが販売しているメトホルミン塩酸塩500mgMT「JG」のPTP包装
上記の一部のロットが自主回収となりました。
日本ジェネリック「メトホルミン自主回収」
PTP包装だけが自主回収となった理由として、PTPアルミ箔の錠剤接触面の印刷インクに含まれるニトロセルロース系樹脂由来の物質が、錠剤中の原薬に僅かに残留していた原料であるジメチルアミンと反応してNDMA(発がん性物質)が生成された可能性があるということです。
今後の対応として
大日本住友製薬
錠剤接触面からNDMAの生成因子を含む印刷インクを排除したアルミ箔を使用した製品に変更する作業を進めるとしています。
日本ジェネリック
使用するPTP包装仕様及び包装資 材を変更することで改善した製品を供給するよう生産準備を進めています。
厚生労働省は2019年12月9日、国内でメトホルミン(メトグルコ)を含有している製品を製造販売している15社に対して、原薬に発がん性物質N-ニトロソジメチルアミン(NDMA)が含まれていないかどうか分析するよう指示をだしたことを発表しました。
現時点で国内のメトホルミン製品およびメトホルミン含有製品から発がん性物質が検出された報告はありませんが、シンガポールでメトホルミン含有製剤からNDMAが検出された報告をうけて、厚生労働省が製薬会社15社へ分析をするよう指示を出しています。
シンガポール保険科学庁は検出されたNDMAの量が1日許容摂取量(0.0959μg/日)を上回るものの「極微量」であり、回収対象となっている製剤を短期間服用したことによるリスクは「極めて低い」としている。
厚生労働省は「現時点では日本でメトホルミン含有製剤からNDMAが検出されていないとした上で、医療機関に対して、「従前のとおりメトホルミンの処方を行っても問題ないこと、患者から相談を受けた場合には糖尿病に対する治療の必要性について改めて説明いただき、服用を中止しないよう回答いただきたい」としています。
厚生労働省は、製造販売会社に対して、NDMAの混入リスクおよび原薬の分析結果が得られる時期の目処を2019年12月27日までに報告するよう求めています。
NDMAに関しては2019年10月にザンタック錠およびラニチジン錠が含有している可能性が高いとして、自主回収とされた経緯がある発がん性物質です。