慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者における吸入ステロイド薬の使用が骨折リスクと関連するという報告がありましたので下記します。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療には、吸入ステロイド薬や長時間作用性β2刺激薬、長時間作用性抗コリン薬という分類の薬剤を単独または併用することで症状を抑える治療が一般的です。その中で吸入ステロイドを使用した場合の骨折リスクに関する報告です。
COPD患者さんにおける吸入ステロイドの使用と骨折リスクの関係について
結果
吸入ステロイドを使用しない群と比較して、吸入ステロイドを含む治療を行うと、骨折リスクが19%上昇しました。
さらに、吸入ステロイドと長時間作用性β2刺激薬の併用療法では骨折リスクが30%上昇し、吸入ステロイドと長時間性β2刺激薬と長時間作用性抗コリン薬の3剤を併用した群では骨折リスクが49%上昇したというデータとなりました。
また、その他のサブ解析によると
COPDの治療期間が12カ月以上となると骨折リスクが19%上昇
ブデソニド療法(吸入ステロイドの1つ)で64%上昇、フルチカゾン療法(吸入ステロイドの1つ)で37%上昇、平均年齢が65歳以上で27%上昇、COPDのステージⅢで18%上昇という結果となりました。
ブデソニド療法に関しては、320μg1日2回の使用量で骨折リスクが75%上昇も有意に上昇することが報告されました。
筆者らはこれらの結果を受けて「長期間の吸入ステロイド療法を要する重症COPDの高齢者に対しては、メリットとデメリットを考えて過剰使用を防ぐ必要がある」と述べています。
喘息治療と好酸球性副鼻腔炎の同時治療として吸入ステロイド薬を吸った後、鼻からゆっくり排出するという治療を行っている報告が紹介されておりましたので記載いたします。
微粒吸入ステロイドをスペーサーを用いて3秒間ほどでゆっくり吸入後、3秒ほど息を止めて、そのあと3秒ほどかけて鼻からゆっくり息を吐きだすという方法です。
咽頭から外鼻孔までの流速30L/分において微粒子1μmが鼻腔内に沈着し、両眼の間にある篩骨洞(しこつどう)部分にも、3%程度のですが微粒子が到達していたことが明らかになっています。
被験者21例で行われた試験によりますと、開始から1年以上追跡調査が行われており、10例(47.6%)がコントロール良好で、予定していた手術を施行しないでよい状態で管理されているということです。
重度の好酸球性副鼻腔炎の患者さんでは、内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)後、3年以内に再発することが報告されておりますが、上記の方法で微粒ステロイドを鼻から排出した場合は、再発率が最大で30%減少していたと報告されております。
喘息と副鼻腔炎の治療として吸入ステロイドを吸った後、鼻から出す
以下は2018年5月に記しましたムコダインの働きについての内容です
気管支炎や副鼻腔炎、滲出性中耳炎などの症状を軽減するために小児から大人まで、幅広く使用される「ムコダイン(カルボシステイン)」ですが、その効き目や服用期間(どれくらい長く飲むことがあるのか)について患者様やそのご家族からご質問をいただくことがあります。今回はムコダインについて私なりの捉え方を記してみます。
ムコダインのはたらきは「通り道を治すことで、痰を出しやすくする薬です」と私は考えています。この場合の「通り道」とは空気や痰の通り道であり気道であったり、鼻水の通り道である鼻腔・副鼻腔のことで、いわゆる粘膜で覆われたトンネル部分のことです。ムコダインは気道や鼻腔といった「通り道」を形成している壁となる細胞(上皮細胞)に対して、いくつかの方法で修復を試みる薬です。
風邪などでウイルスが気管支に侵入してくると、ヒトは痰と一緒にウイルスを排出します。痰とは肺や気管支にある異物をからめとって吐き出すために手段ですが、異物をからめとりやすいように痰はネバネバとした粘性を持っています。気管支喘息では痰をつくる細胞に異常が生じており、痰のネバネバが著しく増加することがあります。このネバネバの主成分をムチンといいます。
ムチンを作る細胞(杯細胞)に異常が生じると、ムチンがどんどん作られてしまうため痰の粘り気が強くなり、痰を排出しにくくなります。加えて、血管透過性がUPしてしまうので血液中のタンパク質(アルブミン)が痰と一緒に出てしまうことがあります。
ムコダインは痰のネバネバの主成分であるムチンの生成を抑える効果があると同時に、ムチンを作る細胞(杯細胞)の増殖を抑える効果があります。この働きにより痰の粘性を通常通りに戻すことが可能となります。(ムチンを作る杯細胞は痰の通り道に沿って発現しています)
気道・鼻腔・副鼻腔および内耳の粘膜には、線毛細胞という200本前後の線毛が生えた細胞 があちこちにあります。この線毛は気管支から咽頭へむかって、そよそよ・ゆらゆらとゆらいでいます(鼻腔の場合は咽頭へむけてそよいでいます)。気道や鼻腔に入った異物はこの繊毛の運動に流されて外部へ吐き出されます。気管支喘息や副鼻腔炎では、痰の通り道を作っている線毛細胞が傷んでいるため、通常の流れを作ることができません。この低下した線毛運動のはたらきを、ムコダインによって修復することが確認されています。
上記の働きによって、ムコダインは痰の通り道沿い発現している杯細胞を適正化すると同時に、繊毛細胞の流れも正常化することで「通り道」を修復していると私は考えています。
次に「小児が滲出性中耳炎でムコダインを飲み続けること」について調べてみました。
飲み続けるといっても使用する期間は症状によってそれぞれ異なるのですが、3ヶ月間にわたって小児がムコダインを飲み続けたデータを確認してみると、滲出性中耳炎の治療率が有用以上の改善率:60%前後
やや有用以上の改善率:78.3%
となっていることが確認できました。
耳管粘膜は約8割が繊毛細胞からなっており、通常であれば耳管粘膜は非常に活発な粘液線毛輸送が行われている場です。しかし小児では耳管が未発達であることに加えて、耳管の入り口をふさぎやすいため中耳炎を引き起こすことがあります。
ムコダインを飲むことで線毛活動が活発化し、滲出液の貯留を妨げることができるため症状が軽減していきます。この期間もできるだけ鼻水をかむ習慣を見に付け、鼻すすりを禁止することが治癒が促されます。