政府は平成30年度(2018年度)の診療報酬改定案で、医薬品などの価格である「薬価」を大幅に引き下げる方向で調節する政府原案を示しました。具体的な引き下げ率は12月中旬にも決まる見通しです。
以前から2020年9月までに後発医薬品使用率を80%とする目標を掲げていましたが、今回の政府案によると特許切れにより後発医薬品が発売されて10年が経過した薬(長期収載品)について、後発薬の使用割合が80%以上の場合は薬価を大幅に引き下げた上で、6年間かけて段階的に後発薬と同じ価格にする
後発薬の使用割合が80%未満の場合でも長期収載品の薬価を10年間で後発薬の1.5倍まで引き下げる改革内容となっています。
現行のルールでは新しく後発薬が発売される場合はその薬価は
先発品の薬価=後発品の薬価 × 2~2.5
となっていますので、長期収載品を保有している先発メーカーにとってはつらい改革となりそうです。後発医薬品の価格帯に関しては発売から一定期間が経過した品目に関しては価格帯を1つに集約していく提案がありました。
さらに画期的な新薬に高い価値を付加する「新薬創出加算」については、対象となる品目を絞り込む方針を固めています。配合剤・ラセミ体医薬品・類似薬などは新薬創出加算の対象とはならない見通しです。
現行のルールでは新薬の多くが加算の対象となっておりました。H30年度以降は、革新性や有用性が高い品目、希少疾病の薬に限定して「新薬創出加算」の対象となるようです。
オプジーボのような高額薬については、保険適用後に別の治療にも使えるように適応症が追加となった場合で、年間販売額が350億円を超えた場合は価格を最大で年4回、1回当たり最大25%引き下げられる方針で調整が行われる見通しです。
オプジーボに関しては抗がん剤の治療として1人当たり年間3500万円かかるとされており、その薬理作用から多くのがん治療に適応症が拡大されているという事実があります。当初の市場規模は31億円/年と予想されていましたが、肺がん、腎細胞がん、胃がんの適応が追加されたため、その市場規模が1500億円を超えるまでに成長しています。
保険医療を維持するために、オプジーボへの措置は致し方ない例かと思いますが、年間販売額350億円以上という数字だけを見ると、国内売り上げ医薬品の上位30位くらいまでがランクインしています。つまりこれらの薬の適応症が新たに追加となった段階で25%引き下げの可能性を秘めていることになります。
例えば2016年度の年間売り上げ6位に位置しているネキシウム(売上額:840億円)は2017年12月に小児用量の適応が追加される見通しです(小児用懸濁用顆粒分包製剤が認可されました)。ネキシウムは25%引き下げルールより前に小児適応症が認可されたわけですが、薬価はどうなるのでしょうか。
先発メーカーとしては既存で販売している医薬品の適応症拡大というのは、売り上げを伸ばすための常套手段であり、さらにジェネリック医薬品が販売となったときも先発品と後発品の“適応症不一致“という壁を設けることができるメリットがあるため非常に有効な戦略でした。
しかし、上記のルールが制定されると適応症拡大で350億円以上の売り上げが出た段階で薬価が最大で25%引き下げられてしまいます。製薬メーカーにとっては非常に手痛いルール改正かと思います。
上記は2017年11月17日現在での報道内容ですが、実際に具体的な数字が公開されるの
は12月中旬が予定されています。医薬品の売り上げ(購入金額)が経営を支えている製薬メーカー・医薬品卸、調剤薬局にとっては非常に厳しいルール改正に思えます。