プレドニンなどのステロイド薬を飲み続けると、少しずつ体重が増えていく方がおります。この理由には複数の要因があるようなので、プレドニン(ステロイド)を長期服用した時に太る理由について、ポイントごとにまとめてみました。
中等量以上のステロイド(20mg以上)を長期間飲み続けていると、筋肉量が低下していくことがあります。筋肉というのは体の中のタンパク質の約40%を占めているのですが、運動するときに使用するだけでなく、タンパク質の貯蔵庫としての役割も担っています。そのため食事で摂取するタンパク質の量が少ないと脳が判断した場合、タンパク質の貯蔵庫である筋肉を少しだけ分解して、不足したタンパク質を補うことができます。
プレドニンなどのステロイドを飲むと、脳に対して「タンパク質が足りない」という誤指令を出すケースがあります。すると脳は「タンパク質を補うために筋肉を少し分解しよう」という指令をだします。これを繰り返すために筋肉量の低下につながります。筋力の低下は代謝の低下につながるため長期的にみるとエネルギーとして代謝されなかった脂肪分が蓄積していき太る要因になります。
長期間プレドニンなどのステロイドを服用すると、内臓脂肪組織において11β位水酸化ステロイド脱水素酵素1型(11β-HSD1)という名前の酵素が活性化します。この酵素が活性化するとコルチゾンというホルモンが“コルチゾール“という名前のホルモンに変換されます。コルチゾールが増えると食欲が増え、脂肪の生成が促されます。(コルチゾールがたくさん出来てしまう疾患としてクッシング症候群があります)。その結果、中心性肥満がもたらされると考えられます。さらに蓄積した内臓脂肪からさまざまな種類の生理活性物質が放出されて、肥満が助長し二次的な代謝異常の要因となります。
またステロイドホルモンは脂質だけでなく糖質についても関与しています。インスリン抵抗性を促されることで、血糖値が上昇してきます。その結果肝臓における中性脂肪がたくさん作られるようになり肥満を助長します。
プレドニンなどのステロイドホルモンを長期間摂取すると、脳内の神経伝達に影響を与えることが報告されており、特にセロトニンという脳内ホルモンの刺激を阻害してしまうことがプレドニンのインタビューフォームに記されています。(セロトニン作動神経を阻害)
脳内にはセロトニン受容体5HT2Cという部分があり、ここにセロトニンがくっつくと「おなかいっぱい」と感じます。これが満腹と感じる一つの要因と言えます。プレドニンの長期服用でセロトニン神経が作用しにくくなると、5HT2C受容体にセロトニンがくっつくにくくなるため、「満腹」と感じにくくなります。その結果、食欲がアップして過食(たくさん食べてしまう)につながります。
プレドニンは喘息や各種自己免疫疾患などで非常に有用な医薬品です。厳格に管理されながら長期間服用することが多々あります。長期間の服用において体重増加・食欲が増えたという自覚症状を感じた場合は、上記の理由を加味した上で、運動療法・食事療法の意味を理解することが解決につながるかもしれません。