2018年11月4日追記
各社から発売されるリフレックスのジェネリック医薬品の薬物動態について比較データを作成しました。
抗うつ薬“リフレックス錠/レメロン錠”のジェネリック医薬品が2018年12月に発売されます。今回はミルタザピン錠/OD錠の添付文書が各社から公開されましたので、その違いについてまとめてみました。全体的な印象としましては、メーカーごとにオリジナル製剤を作っている印象が強いように感じました。
「DSEP」「トーワ」「ニプロ」「アメル」「サワイ」の5社からOD錠が発売されます。先発医薬品にはOD錠はありませんので患者様のニーズに応じて採用が検討されるかと思われます。
「DSEP」「トーワ」
錠剤径、薬物動態のグラフから見ると「DSEP」と「トーワ」が同一製剤となります。
甘味料としてアスパルテームが使用されております。
先発医薬品(普通錠15mg)とOD錠15mg「DSEP」「トーワ」との薬物動態を比較してみると、水ありで飲んだ時のデータについては、AUC、Cmaxともに先発とくらべて90%前後の値となっており、若干ですが低めの印象を受けます。(他社のメーカーのOD錠の薬物動態が先発品普通錠に近いとも言い換えられます)。OD錠15mg、OD錠30mgの各規格について「水あり」「水なし」の薬物動態を開示している点は、他社にはないポイントかと思います。
15mg/30mgともに割線が入っています。
錠剤は円形です。
2018年8月15日承認、12月発売予定の後発医薬品リスト(2018年8月15日承認)
「ニプロ」「アメル」
錠剤径、薬物動態のグラフから見ると「ニプロ」と「アメル」が同一製剤となります。
甘味料としてデキストリンが使用されております。
15mgには割線がなく、30mgに割線が入っています。
錠剤は円形です。
「サワイ」
甘味料としてスクラロースが使用されており、清涼感をだすためにメントールが添加されています。味がいいかもしれません。
15mg/30mgともに割線が入っています。
錠剤の形は先発品(普通錠)と同じ楕円形であり、OD15mg錠の長径/短径/厚さは先発品のサイズと比較して±0.2mm以内というサイズですので、錠剤分包機でのカセット流用が可能と考えられます。(OD30mg錠の長径/短径/厚さは先発と比較して±0.4mm以内というサイズです)。OD錠15mg、OD錠30mgの各規格について「水あり」「水なし」の薬物動態を開示しています。
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OD錠に関しては、剤形的にみて添加物を先発品(普通錠)と同一にそろえることは難しいです。そのため選定条件としてはそれ以外の要素で特徴を見出す感じかと思います。「サワイ」のOD錠は錠剤径を先発に近づけたという点が患者様視点で見ると印象が良いかもしれません。
リフレックス錠がMeijiSeikaから、レメロン錠がMSDから発売されており、同一製剤の先発品が2社から発売されているという事情があるため、そのジェネリック医薬品“ミルタザピン錠”にはAG薬が発売されません。(特許の関係かと思われます)先発品とまったく同じジェネリック医薬品が発売されませんので、各製品の特徴が選定のポイントになるかもしれません。
添付文書に記されている添加物リストが先発品と同じ製品が8社あります。(15mg/30mgともに割線が入っています)
「明治」「ケミファ」「日新」
先発品と添加物リストが同じです。(原薬・添加物の配合割合はことなります)
上記3社から発売されるミルタザピン錠の薬物動態は同じですので同一製剤であると思われます。しかし錠剤径が若干ことなります。
「明治」:15mg・30mgともに錠剤径が先発品と同じ(長径・短径・厚さ・重さが同じ)。刻印がアルファベット
「ケミファ」と「日新」:15mgは厚みが先発より0.3mm薄い、30mgは0.4mm薄い。刻印がカタカナ
私の記憶では、同一成分(原薬・添加物が同じ)でありながら、錠剤径が異なるジェネリック医薬品が発売されるというのは「初めてみたかもしれない」という印象です。先発品を発売している「明治」に有意性を持たせたのでしょうか。理由はわかりません。販売包装はPTP100、500、1000、バラ300またはバラ500となっています。薬物動態を見ると、Tmaxが先発にくらべて大きい印象を受けますが、ミルタザピンは半減期が20時間前後と長い製剤ですので、定常状態に達していればTmaxに関しては、さほど気に掛けなくてもいいのかなと個人的には思います。
「杏林」:30mgは「明治」「ケミファ」「日新」と同一成分です。厚みが先発より0.4mm薄い。刻印がカタカナ
「杏林」15mg錠は「杏林」オリジナルの製剤であり、添加物リスト及び薬物動態が上記3剤とは異なります。
「トーワ」「ファイザー」「EE」「フェルゼン」
先発品と添加物リストが同じです。(原薬・添加物の配合割合はことなります)
上記4社から発売されるミルタザピン錠の錠剤径・薬物動態は同じですので、全く同じ製品と言えます。錠剤径は15mg:先発品と比較して±0.1mm以内、30mg:0.2mm以内というサイズですので、どちらも錠剤分包機のカセット流用が可能なサイズと思われます。カタカナ刻印です。販売包装を見てみるとバラ100錠を販売する予定となっていますので、バラ錠の在庫管理がしやすいかもしれませ。半錠をたくさん使用する薬局ではバラ100錠を買って割っておくという方法もできるかもしれません。
「JG」
先発品と添加物リストが同じです。(原薬・添加物の配合割合はことなります)
錠剤径は15mg:先発品と比較して±0.4mm以内、30mg:0.5mm以内というサイズです。カタカナ刻印です。販売包装:バラ200錠を発売予定
上記の7銘柄が先発品と添加物リストが同じ品目です。
(杏林30mgを含めると8銘柄が添加物リストが同じです)
薬の効き目に関しては、リフレックス錠は半減期が18~19時間程度ですので、効き目が長い薬です。“飲んですぐの効果”というよりは“定常状態に達した段階での効き目”が評価されるのかなぁと個人的には思います。そこで、薬の効果を比較するのではあればCmaxやTmaxという数値もさることながらAUC(体に取り込まれた総量)が先発と同等であれあば同等性の確認方法としては、よいのかなぁと思ったりします。上記8銘柄のAUCは先発と比較して97~99%程度の製剤であることが添付文書の薬物動態に記されています。
先発品の添加物リストに加えて“光沢剤カルナウバロウ”を含む品目
「杏林」:15mg錠
「TCK」:15mg・30mgともに円形。15mgに割線なし
「アメル」:割線あり。カタカナ刻印。15mgと30mgの錠剤径がほとんど同じ(30mg錠は先発と比較すると一回り小さいとも言えます)
「ニプロ」:15mgと30mgの薬物動態を開示しています。割線あり。カタカナ刻印。15mg/30mgともに先発と比較して錠剤径が±0.1mm以内
「サワイ」:15mgと30mgの薬物動態を開示しています。割線:割線あり。カタカナ刻印。15mg錠剤径が±0.1mm以内、30mgは0.4mm以内
「日医工」:割線あり。カタカナ刻印。15mg錠剤径が±0.3mm以内、30mgは0.4mm以内
「共創未来」:割線あり。カタカナ刻印。15mg/30mgともに先発と比較して錠剤径が±0.1mm以内(YDと同一製品)
「YD」:割線あり。カタカナ刻印。15mg/30mgともに先発と比較して錠剤径が±0.1mm以内(共創未来と同一製品)
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「武田テバ」:割線あり。カタカナ刻印。添加物に部分アルファー化デンプン、二酸化ケイ素などを含む
以上、普通錠を添加物リストを基準に特徴をまとめました。
発売が近づくとPTPシートの外観や薬が入っている箱などの情報も公開されますので、それらも選定理由に加味しつつ採用品目が絞られるかと思います。