神経からくる痛み止め「リリカ」の不安障害に対する効果について
2019年7月7日追記
リリカ服用による自殺リスクについて
スウェーデンの処方データ解析によると、2006~2013年にリリカを服用した患者さんにおいて、自殺リスク・過量服用リスクが高いことが示されました。
リリカを服用したことで増加するリスクについて
自殺リスク:26%UP(1.19~1.32)
過量服用リスク:25%UP(1.20~1.30)
頭部・体幹部外傷リスク:28%UP(1.24~1.32)
交通事故リスク・交通違反リスク:20%UP(1.12~1.29)
暴力犯罪による逮捕リスク:8%UP(1.01~1.16)
年齢別に見たデータによると、特に15歳~24歳の方がリリカやガバペンを服用した場合
自殺リスク:67%UP(1.52~1.84)
過量服用リスク:2.4倍(2.18~2.64)
頭部・体幹部外傷リスク:2.08倍(1.92~2.26)
上記のような高いリスクが報告されました。
日本国内ではリリカは神経障害性疼痛で使用される薬剤ですが、海外では不安障害治療薬として使用されている背景があります。今回の報告を行ったスウェーデンでもリリカは全般性不安障害の治療薬として適応症を有しております。
リリカ服用による自殺リスクに関しては、心身症による不安症状の悪化が背景の一因としてあげられるかもしれません。
日本国内において、10代や20代の方で神経疼痛性障害によりリリカを服用している方に対して上記のようなリスクを考慮する必要があるかどうかはわかりませんが、交通事故リスク・交通違反リスクが増す可能性はありますので、車の運転を控えるよう注意喚起を行うことは有益かもしれません。
以下は2018年6月に記載しましたリリカによる抗不安効果についての内容です。
日本では痛み止めとして処方される「リリカ」ですが、欧州では全般性不安障害に対して抗不安薬として使用されています。リリカに対する欧州でのイメージとしてはベンゾジアゼピン系の不安薬と似たような印象かもしれません。今回は「リリカ」の抗不安作用について調べてみました。
リリカの働き
リリカは神経と神経の間の痛みを伝える物質の放出を抑えることで痛みを緩和する薬ですが、それと同時に脳内のアドレナリンやドーパミンの放出に対して抑制的に作用するGABAという神経伝達物質の輸送速度を増加させる働きがあります。脳内におけるGABAの量が増えるとGABA受容体へ作用する率が高くなるため、抗不安作用、眠気などの自覚症状を呈します。
「リリカ」には上記の効果があるため欧州では、いわゆるGABA作用薬であるベンゾジアゼピン系の抗不安薬(眠剤)と比べた報告が多数上がっています。
(ベンゾジアゼピン系の薬はGABA受容体に作用して抗不安薬・睡眠作用をあらわすため)
リリカの抗不安作用活性について
- ソラナックスやワイパックス、イフェクサーの抗不安作用と類似していた
- 服用開始から1週間以内に抗不安効果が現れた
- 抗不安作用の効き目はパキシルやイフェクサーよりも効果発現が早かった
- 中程度または重度の不安症に対して使用できる
- 26週間(約半年)の継続服用でもリリカの抗不安効果は持続された
- ソラナックスに比べて、認知障害および精神運動障害の副作用が少ない
- ベンゾジアゼピン系と比べると依存性および乱用の可能性は低いと言われている
注意)フランスでの報告ではランドセン錠による乱用または依存性の割合が5.7倍であるのに対して、リリカでは乱用または依存性に関する有意差は認められなかった(統計的には有意差はないがリリカ使用による乱用または依存性1.1倍というデータでした)
- 抗不安薬および鎮静薬の力価としてはソラナックス1mgとリリカ200mgとを比較したデータでは不安刺激に対して同程度の改善が報告されています
ここ数年、国内でのリリカの印象は「長期間服用できる痛み止め」という地位を確立したように私は感じています。苦いながらもOD錠も発売したことで高齢者でも飲みやすくなった印象があります。ここで「全般性不安障害」という適応症を日本国内で申請することが利点となるかというと難しいところかもしれません。さらい米国では「全般性不安障害」という適応症は得られていないことからすると、国内においては表立って「不安症」としてリリカを使用する頻度は少ないかもしれません。