胃薬(PPI、H2ブロッカー、胃粘膜保護剤)を継続して飲んでいる患者様へお渡しした際にお伺いすることは「胃の調子」「胸やけ・胃痛症状の経過」「排便症状」「食欲」「口喝・味覚異常」といったような感じになることが多いです。個人的には胃薬は副作用が比較的少ないイメージを抱いているのですが、薬の種類を問わず“副作用”は起こりえますので、胃薬をお渡しする際の投薬・薬歴内容について検討してみました。
併用禁忌:PPIとタケキャブは、レイアタッツ・エジュラント(いずれも抗HIV薬)と併用禁忌です
・服用後の便秘・下痢・軟便といった排泄関連の有害事象はでていないことを確認した。
・服用後の舌の白色化(舌苔)、嚥下困難・食べ物のつかえ感・胸部痛・吐き気・嘔吐といった食道カンジダの前兆となる症状はでていないことを確認した。
・食欲低下・吐き気・倦怠感・尿の色が濃くなる・むくみ・おなかが張るといった肝機能低下の前兆となる自覚症状はでていないことを確認した。
・口内炎・味覚異常・食欲減退・胃もたれといった消化管関連の有害事象は出ていないことを確認した。継続しましょう
・湿疹・かゆみ・紫斑・点状出血といった皮膚トラブルは出ていないことを確認した。
・貧血・ふらつき・発疹・息切れ・喘息といった血液毒性の前兆となるような症状はでていないことを確認した。
・浮腫み・倦怠感・排尿時の変化(色・量・回数など)などの腎機能低下の前兆となるような症状はでていないことを確認した。
(PPIを20年近く継続服用すると、慢性腎臓病を発症するリスクが増える?といった報告が海外でなされており、国内でも日本腎臓学会が注意喚起を行っているため副作用確認として記載しました)
H2ブロッカー(ガスター・ザンタック・プロテカジンなど)を投薬後の薬歴には、PPIと同様の副作用が報告されておりますので、同じよう副作用確認でいいかと思われます。1点追加するとしますと、頻度は不明なのですが、女性化乳房・プロラクチン値上昇が報告されておりますので
・服用によるプロラクチン値上昇(検査結果)、乳汁分泌・乳房痛などの女性化乳房関連の副作用症状はでていないことを確認した。
といった感じの内容を定期的に確認することは有用かもしれません。
(PPIでは慢性腎臓病リスクの上昇が検討されておりますが、H2ブロッカーを長期間服用した場合、腎機能低下・慢性腎臓病リスクの上昇といった有害事象は報告されておりません。)
胃粘膜修復・保護作用(ムコスタ・セルベックス・アプレース・ガストロームなど)についての投薬・薬歴はH2ブロッカーと同様の内容でいいかと思われます。胃粘膜修復剤・保護剤の副作用発現頻度は、PPIやH2ブロッカーと比較すると1/5~1/10程度の発現頻度のように感じました。
タケキャブ
便秘;0.7%
下痢:0.6%
食道カンジダ症:0.5%
胃部膨満:0.4%
好酸球増加:0.3%
肝機能検査異常:0.3%
ネキシウム
併用禁忌:レイアタッツ・エジュラント(いずれも抗HIV薬)
下痢:0.93%
血中CPK増加:0.93%
肝胆道系障害:0.79%
上腹部痛:0.4%
便秘:0.4%
食道カンジダ症:0.4%
タケキャブと比較すると肝臓関連の副作用発現率・CPK上昇の発現率が高い印象を受けます。
タケプロン
ALT上昇:1.01%
白血球障害:0.98%
AST上昇:0.74%
赤血球障害:0.37%
下痢:0.21%
タケプロンの副作用項目は疾患ごとに区分されているため、評価が難しいのですが、肝機能関連・血液毒性関連の副作用発現率が他剤と比較して高いのかもしれません。
パリエット
胃ポリープ:0.53%
ALT上昇:0.49%
皮膚障害:0.48%
高ガストリン血症:0.41%
AST上昇:0.39%
γGTP上昇:0.33%
下痢:0.31%
ガスター
肝機能異常:0.3%
便秘;0.24%
白血球減少症:0.15%
ザンタック
ALT上昇:0.36%
AST上昇:0.25%
便秘:0.14%
発疹:0.13%
好酸球増多:0.11%
プロテカジン
ALT増加:0.54%
AST増加:0.32%
γGTP増加:0.27%
ALP増加:0.18%
便秘:0.16%
下痢:0.15%
白血球数増加:0.11%
赤血球数炎症:0.11%
ムコスタ
便秘:0.09%
ALT上昇:0.05
AST上昇:0.04%
腹部膨満感:0.04%
セルベックス
AST上昇:0.2%
AST上昇:0.12%
便秘:0.06%
発疹:0.06%
下痢:0.04%
ガストローム
便秘:0.17%
下痢:0.12%
腹部膨満感:0.11%
AST上昇:0.08%
ALT上昇:0.08%
発疹:0.08%
アプレース
ALT上昇:025%
便秘:0.19%
AST上昇:0.17%