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ボルタレンゲル1%とボルタレン錠25mg、ボルタレンテープとの等価比較

ボルタレンゲル1%とボルタレン錠25mg、ボルタレンテープとの等価比較

ボルタレンゲル1%は適量を1日数回患部に塗擦するという使用方法ですが、期待する鎮痛効果をしめすために、具体的な使用量および使用回数を患者さんにお伝えできればと考えました。

また、鎮痛効果に関して、ボルタレンゲル1%と比較対象となる薬と等価換算をすることで具体的に鎮痛作用を患者さんにお伝えすることができれば、患者さんのお力になれるのではと考えました。今回はこのような背景からボルタレンゲルについて調べてみることにしました。

 

ボルタレンゲルの使用量

使用量目安が付属の用紙に記載されています。
肩・ひじ・ひざ(およそ150~300平方センチメートルあたり):2~3cm(1~1.5g)
腰(およそ300~600平方センチメートルあたり):3~5cm(1.5~2.5g)
という目安量があります。

塗り薬を塗ってから効果が現れるまでの時間について

皮膚表面に傷がない場合、塗り方は塗布というよりは塗擦が理想です。実際150平方センチメートル(大人の片手の大きさ)に1g(2cm)のボルタレンゲル1%を手に取るとわかるのですが、この量を普通に塗り広げると薬が多いように感じます(薬があまります)。150平方センチメートルに1gのボルタレンゲルを擦り込むようにして使用するとちょうどよい感じになくなっていきます。

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ボルタレンゲル1%とボルタレン錠25mgの鎮痛効果当量換算

ボルタレン錠25mgを1回1錠、1日3回食後に経口投与する量と同程度の鎮痛効果を得るためには、上記使用量でボルタレンゲル1%を患部に1日3~4回塗擦すると、両群間に有意差なく鎮痛効果が得られるというデータがインタビューフォームに記載されています。

この比較試験では副作用発現症例率についても記載されており、副作用頻度は
ボルタレン錠:ボルタレンゲル=2:1
程度です。(副作用の具体的な内容についてはわかりませんが、消化器症状などだと思われます)

この結果をみると、慢性疼痛の患者さんにはボルタレン錠よりはボルタレンゲル1%を長期間使用する方が、消化器症状を含むNSAIDS内服特有の副作用回避につながると感じました。
(ただし、一人暮らしの高齢者は自分で外用薬を患部に塗擦することができないというデメリットがあるので、一概に外用薬がよいというわけでもありません)

 

ボルタレンゲル1%の皮膚角層中への移行性について

塗り薬の効き目を判定する際、外用薬のガイドラインでは塗り薬が皮膚角質層に浸透し、薬物濃度が一定となる(定常状態に達する)ことがもとめられます。

ボルタレンゲル1%を患部に塗擦し、30分、1時間、2時間、4時間、6時間後にそれぞれ粘着テープで角層を剥離し、平均角層内ボルタレンゲル濃度を測定したデータでは、角層内濃度は塗擦2時間後から定常状態に達すると判断されるデータがインタビューフォームのP.18に記載されています。また、皮膚角層内のジクロフェナク濃度は塗擦後6時間ほど維持されていることから、およそ6時間は継続して鎮痛効果をしめすものと推測されます。

 

ボルタレンゲルとボルタレンテープの比較

ボルタレンテープを24時間貼付した場合と同程度の鎮痛効果を得るためにはボルタレンゲル1%を6時間毎に塗擦すると、同等の力価であるとうデータがボルタレンテープのインタビューフォームに記載されています。
また、両薬剤におけるジクロフェナクの含有量について調べてみますと、ボルタレンテープは7cm×10cm(70平方センチメートル)あたり15mgのジクロフェナクが配合されています。
ボルタレンゲル1%を150平方センチメートルに1g塗擦すると、10mgのジクロフェナクを使用することになります。
ボルタレンテープとボルタレンゲルを使用する場合について、24時間での使用量を等量等価換算してみます。同一表面積にボルタレンテープとボルタレンゲル1%中に含まれるジクロフェナクを同程度使用する場合

ボルタレンテープ30mgを140平方センチメートルに24時間貼付する(ジクロフェナク30mg)=ボルタレンテープ1%を140平方センチメートルに1g(10mg)を1日3回塗擦すると同程度のジクロフェナク消費量となります。

塗り薬を塗ってから効果が現れるまでの時間について

まとめ
ボルタレンゲル1%は片方の手のひらの大きさ(約150平方メートル)に対して2cm(1g)を擦り込むように塗ります。この塗擦量で1日3~4回使用すると内服薬のボルタレン錠を1日3回で使用する鎮痛効果と同程度の力価を得られます。また上記使用量でボルタレンテープとも同程度の鎮痛効果を得られることがわかりました。

湿布が長期間処方されている方への薬歴の書き方

患者さんへお伝えする時は、塗布というより、塗擦(さらっと塗って終わりというよりは、軽く擦り込むように使用する)という表現で使用方法を伝え、使用量は付属の用紙(使用量の目安)を確認しながら「若干、多く感じるかもしれませんが、これが適量です」とお伝えすることが良い治療につながると感じました。

 

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業