おじさん薬剤師の日記

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冬から春になって「ふらつき」が気になる高齢の方の話(自分まとめ)

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冬から春になって「ふらつき」が気になる高齢の方の話(自分まとめ)

80代女性の患者さんとのお話しです。

高血圧症で10年近くアムロジピン5mgを飲んでいる方が、雪解けが進んだ4月に病院を受診しました。

診察時、先生に「ふらつく」ことを伝え、血圧測定、採血もろもろの検査をしたものの原因がわからず、「加齢による筋力低下かもね・・・」という感じで診察を終えました。薬の内容はいつも通りで、定期処方Doでした。

薬局で、その患者さんにお薬をお渡ししようとしたところ、「ふらつく」ことを先生に相談して検査をしたが原因がわからない。薬が原因ではないだろうか?

ということで、「薬によるふらつき」の可能性を心配しているようでした。

薬と一緒にお渡しする薬の説明書き(薬情)には、血圧の薬を飲むことによる「めまい・ふらつき・たちくらみ」といったお決まりの文言は記されていますので、患者さんとしては「薬によるふらつき」を考えるのはごもっともかもしれません。

しかし、病院での診察結果では、血圧は正常域にあり、採血結果も「貧血」などの症状もなく、いたって健康ということでした。

本質的な原因はわかりませんが、可能性の一つとして医師が検討している「加齢による筋力低下」について私のイメージをお伝えします。

私の住んでいる地域は、冬になると雪が降ります。調剤薬局で20年近く勤務している私の主観で恐縮ですが、雪解けとともに「ふらつき」を訴えるかたが毎年一定数いるように私は感じています。

もちろん「ふらつき」の本質的な原因は、その人その人によって異なるため、何とも言えませんが、冬場の雪道で転倒するリスクを最小限に抑えるために、なるべく外出を控える方が一定数おられます。

そこで、この記事では加齢と筋力低下に関する情報を、自分なりにまとめてみたいと思います。

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まずは、このグラフをご覧ください。

20代の筋力を0としたときに、加齢による筋力低下を示したグラフです。

特に下肢の筋力低下が大きいことが見て取れますね。

例えば極端な例ですが、骨折などによって病院で寝たきりの生活を送った場合、筋力の低下速度は1週間で10%程度、人によっては1カ月で50%近く筋力が低下するという報告もあります。

私たちは常に地球の重力に抗いながら生活を送っていますので、寝たきりに様に重力に対して、筋力が働かない状態となると、みるみる低下していくんですね。実際、宇宙に3週間ほど滞在した宇宙飛行士は宇宙船内で筋トレをしたとしても、地球に帰還後、横になって運ばれていきますよね。

何もしなかった場合の話ですが、筋力の減少速度は想像以上に速いことが示唆されます。

それに加えて、食生活で肉や魚などのタンパク質を摂取することも筋力を保持するうえで非常に大切なポイントとなるわけですが、高齢で一人暮らしの女性では「お肉をモリモリ食べます」という方は、それほど多くないのかもしれません。

 

以上の点を踏まえますと、「ふらつき」の原因は様々なケースが想定されますが、春先に「ふらつき」を訴える高齢者から相談を受けた場合は

・筋力は20歳をピークとして減少していき、特に下肢の筋力低下が一番大きいことを念頭に入れる。

・冬場に雪かきや散歩など夏場と同程度の運動をしていたかを聞いてみる。

・食生活で一定量のタンパク源をとっているかを聞いてみる

といった感じで、筋力維持に関して意識しているかを確認してみることは、患者さんのお役に立てるのかもしれません。

 

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執筆者:ojiyaku

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