消毒用エタノール(手指消毒薬)の効果持続時間について

消毒用エタノール(手指消毒薬)の効果持続時間について

次亜塩素酸水について

新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について、厚生労働省・経済産業省・消費者庁の合同特設ページが公開されました。(2020年6月29日追記)

特に「次亜塩素酸水」に関して詳しく記載されておりましたので概要を記します。

新型コロナウイルスの消毒・除菌方法(厚生労働省・経済産業省・消費者庁)

・次亜塩素酸ナトリウム(ハイターやミルトンの成分):次亜塩素酸ナトリウムの濃度が0.05%になるように薄めてふきます。

注意)目に入ったり、皮膚についたりしないよう注意しましょう。

注意)飲み込んだり、吸い込んだりしないよう注意しましょう。

注意)酸性のものと混ぜると塩素ガスが発生して危険です。

 

・「次亜塩素酸水」(次亜塩素酸ナトリウムとは異なります)

注意)次亜塩素酸ナトリウムを水で薄めただけでは次亜塩素酸水にはなりません。

次亜塩素酸ナトリウムと「次亜塩素酸水」の違いについて

次亜塩素酸ナトリウムはアルカリ性です。原液で長期保存ができるようになっています。ハイターなどの塩素系漂白剤が代表例です。

 

一方、「次亜塩素酸水」は酸性です。保存状態次第では時間とともに急速に効果がなくなります。

「次亜塩素酸水」の作り方にはいくつか方法があり、食塩水や塩酸を電気分解して精製した「次亜塩素酸水」は殺菌料に指定されており、野菜の洗浄などに使われています。

次亜塩素酸ナトリウムを原料にして、酸を加えたり、イオン交換等をすることで酸性に調整したものも「次亜塩素酸水」として販売されていますが、規格や基準がなく成分は不明確です。

「次亜塩素酸水」による消毒

「次亜塩素酸水」(次亜塩素酸を主成分として作られた酸性溶液)を有効塩素濃度80ppm(0.008%)以上でたっぷり使用し、消毒したいものの表面をヒタヒタに濡らした後、20秒以上おいてきれいな布やペーパーでふき取る。

精製されたばかりの「次亜塩素酸水」を用いて消毒したいものに流水かけ流しを行う場合は35ppm(0.0035%)以上のものを使用する。20秒以上かけ流した後にきれいな布やペーパーでふき取る。

HClO

上記の内容を見る限り、店頭で「次亜塩素酸水」として販売されている商品に関しては、明確な濃度(ppm)が表記されていないのであれば、信ぴょう性は不明かと思います。

また、「次亜塩素酸水」による空間噴霧については、国際的な評価方法は確立されておらず、現時点で「空間噴霧用の消毒薬」として承認が得られている「次亜塩素酸水」はありません。消毒効果を有する濃度の「次亜塩素酸水」を吸い込むことは推奨できません。

消毒用エタノールの代わりとして、住宅家具を消毒する洗剤について

新型コロナウイルス対策に用いる消毒用エタノールが入手困難となっている現状において、経済産業省は消毒用エタノールに代わる消毒方法として界面活性剤5種類が有用という発表を行いました。

具体的には、住宅・家具用洗剤として販売されている洗剤のうち

・直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(0.1%以上)

・アルキルグリコシド(0.1%以上)

・アルキルアミンオキシド(0.05%以上)

・塩化ベンザルコニウム(0.05%以上)

・ポリオキシエチレンアルキルエーテル(0.2%以上)

上記5種類の界面活性剤を含む洗剤を使用すれば物品に対する消毒は有効としています。以下にその商品名を含むPDFファイルを記します

新型コロナウイルス消毒に有用な洗剤リスト

洗剤の製品名を見てみると、よくCMなどで目にするような商品が多数記載されています。以下にその例を記します。

・かんたんマイペット

・ガラスマジックリン

・バスマジックリン

・トイレマジックリン

・スクラビングバブル

・ルーキー泡おふろ洗剤

・キッチンクリーナー

・バスピカ

・ルックプラス

・ジョイコンパクト

・チャーミーマジカ除菌

・ママレモン

・チャーミーマイルド

・フレッシュ

等の台所用洗剤・お風呂用洗剤・住宅用洗剤で新型コロナウイルスは消毒できるとしています。

 

消毒用エタノール使用後に酔っぱらうかについて

新型コロナウイルス感染予防として、大人も子供も手指消毒のために消毒用エタノールの使用頻度が増えています。そこで、手指消毒用エタノール使用後に酔っぱらうことはないのかどうか調べてみました。

大学病院の医療従事者86人を対象として、70%エタノールを含む手指消毒剤を使用後の子機中エタノールレベルを検査した実験によると、手指消毒エタノール使用後1~2分後では28名の医療従事者の呼気中に、平均0.076mg/Lのエタノールが検出されています。(酒気帯び運転の呼気中アルコール濃度は0.15mg/Lですので、およそその半分程度です)。しかし、4時間後の検出ではエタノール成分は検出されませんでした。また皮膚からのエタノール吸収は確認されませんでした。

手指用毒用エタノール使用後に酔っぱらうかどうか(その1)

上記以外の報告でも、同様な報告がなされており、手の手指消毒を狭いスペースで使用した場合は、悪酔いするのに十分な量のアルコールを一時的に吸引する可能性はあるものの、十分な換気スペースで手指消毒をする場合は、アルコール吸収を回避できます。また手指消毒によって皮膚からのアルコール吸収は、ごくわずかであり、酔っぱらう量ではないという報告があります。

手指消毒エタノール使用後に酔っぱらうかどうか(その2)

以上の報告例から考えますと、子供が手指消毒をする際は、顔から十分距離をとり、狭いスペースでなければ悪酔いのような症状はでないでしょう。手指消毒後1~2分間はアルコールを吸い込む率が高いという報告がありますので、手指消毒後は、手を顔の近くに持ってこないことが有益となります。手指消毒後の手から悪酔いするほどのアルコール量が吸収されることはないと考えてよいでしょう。

新型コロナウイルスの生存時間

新型コロナウイルスが付着した場合、付着場所で数時間から数日間生存することが報告されています。以下に新型コロナウイルスのが付着した場合の生存期間を記します。

金属表面:5日間

木材表面:4~5日間

ガラス表面:4日間

プラスチック表面:4日間

紙類:4日間

スチール:2~3日間

医療用ガウン:2日間

使い捨て手袋:8時間以内

銅表面:4時間~

新型コロナウイルスの生存時間

ちなみに、サージカルマスク表面に付着した新型コロナウイルスが7日間生存するという報告もありますので、自家製マスクやサージカルマスクを再利用する際は消毒が必要です。

新型コロナウイルスに対する消毒液について

2020年4月14日追記

厚生労働省は不足する消毒液の代わりにウォッカなどのアルコール度数の高い酒を使うことを特例として認めました。

対象となるのは、メタノールを含まないアルコール度数が70~83%の酒でウォッカなどが該当します。またさらに度数の高い酒については精製水などで薄めて使うこととされています。

 

2020年4月12日追記

新型コロナウイルス感染拡大のためにドラッグストアやホームセンターの店頭には「消毒用エタノール」などのアルコール消毒液が姿を消しました。では消毒用エタノールの代わりに使用できる消毒液は?となると「ミルトン」や「ハイター」などの次亜塩素酸系消毒液が頭に浮かびます。しかし、希釈した次亜塩素酸系消毒液は手指への使用報告例が少なく、政府は2020年4月10日に「手指消毒液としてアルコールの代わりに次亜塩素酸系希釈液を活用することは有効性が確認されていない」として「手洗いを丁寧に行うこと」を推奨しています。

新型コロナウイルスに対する各種消毒液に関する報告について調べてみましたが、消毒用エタノールの代用品はありませんでした。手指消毒に関しては「手洗い」しかありませんが、簡易的なふき掃除やスプレー消毒に関しては代替品で代用できますので、以下にその製品と濃度を記します。

新型コロナウイルスに対する各種消毒液

新型コロナウイルスに対する消毒液について

消毒用エタノール(濃度:95%~78%):30秒で消毒可能

消毒用エタノール(濃度:71~62%):1分で消毒可能

 

イソプロパノール(100~70%):30秒で消毒可能

イソプロパノール(50%):10分間で消毒可能

 

次亜塩素酸ナトリウム0.5~0.1%(ミルトン・ハイターなど):30秒~1分で消毒可能

次亜塩素酸ナトリウム0.01%:10分間で消毒可能

注意)報告例では次亜塩素酸系の消毒液は0.21%以上を推奨しています。

(厚生労働省のホームページには次亜塩素酸ナトリウム0.1%が有効と記されています)

 

オキシドール0.5%:1分間で消毒可能

ホルムアルデヒド1%:2分間で消毒可能

イソジン(ポビドンヨード)1~4%:15秒で消毒可能

塩化ベンザルコニウム0.05~0.2%:効果が弱い

クロルヘキシジン0.02%::効果が弱い

 

消毒用エタノールが手に入らない場合の消毒方法

手:石鹸で手洗い

机・ドアの取っ手などの:1.1%ミルトンを2~10倍程度に薄める、キッチンハイター(6%)やハイター(6%)を10~20倍程度に薄めて使用する(水1Lにキャップ4~8杯)

消毒用エタノール(手指消毒薬)の効果持続時間について

スーパーマーケットやドラッグストアの店頭には手指消毒スプレーが置いてあります。スーパーマーケットの“買物カゴ”は多くの方が手にしますので、インフルエンザウイルスなどの感染拡大を未然に防ぐためにアルコール消毒スプレーなどが配置してあるかと思われます。今回は手指消毒後の持続時間について調べてみました。

手指消毒スプレーを手にふりかけると15秒以内に一般細菌やインフルエンザウイルスは殺菌または不活化します。効き目は非常に早いのですが、その効果時間に関しての報告を見てみると、カット綿に消毒用エタノールを浸して、1回または3回または5回拭いたあと、5分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後の消毒部位の残存細菌数を調べたデータがありました。

注意:アルコール綿で複数回拭く場合は、アルコール綿を新しいものに取り替えてから拭いているデータです。

アルコール綿で手を拭くと、どの程度殺菌作用が持続するのか

aerobic-bacteria

その結果、アルコール綿で1回拭いたデータによると、5〜15分では消毒効果が認められたものの、30分後には消毒前に近い細菌数の出現が確認されています。市販でアルコールを含むウエットティッシュが売られていますが、1回さらっと拭く感じでは30分程度の持続時間しか得られないようです。

 

アルコール綿で3回拭いたデータによると、30分後までは効果が持続したものの、1時間後には細菌の出現が確認されました。おおよそですが、1時間後の時点で消毒前の半分ほどの細菌が出現している状態でした。実生活で考えますと、アルコールを含むウエットティッシュで3回手を拭く(1回拭くごとに新しいものに替える)という作業は、手が相当汚れていなければすることはないでしょうから、参考程度のデータという感じでしょうか。

 

アルコール綿で5回拭いたデータでは、1時間後まで消毒効果が認められており、その効果は2時間後まで続きました。

(2時間後に消毒前と同程度まで細菌数が戻りました)。

 

上記のデータは1999年の報告なのですが、現在の手指消毒液には手ピカジェルのようにゲル性の製剤もでておりますので、手に塗布したあとの保持性という観点では少し持続性は上がるかもしれません。といっても消毒用アルコールでの手指消毒では30分〜2時間程度が限界かもしれません。

 

手指消毒スプレーではなく、消毒をしたあとにガーゼで患部を覆った場合の報告を見てみると、70%エタノール、10%ポビドンヨードなどで皮膚表面を殺菌処理したあとにガーゼで6時間覆ったデータでは、皮膚表面の細菌は殺菌できたものの、15〜25層の角質層内の細菌を根絶させることはできなかったという報告がありますので、このあたりが限界なのかもしれません。

消毒用エタノールでは皮膚の角質層内のバイキンをやっつけることはできない

尚、アメリカで使用されている外用抗菌剤(バシトラシン・ポリミキシン・ネオマイシンの3剤配合抗菌剤)を皮膚に塗布したところ7人中6人が24時間にわたって皮膚表面の細菌を根絶させることができたと報告されておりますので、手指消毒スプレーと外用抗菌剤の区別はこのあたりかなぁと思います。

まとめ

アルコール消毒液(手指消毒液)は30分〜2時間程度、皮膚表面の細菌をやっつけることができるものの、角質層内の細菌をやっつけることはできない。

 

外用抗生剤(3剤合剤)は24時間にわたって患部の細菌感染を予防できる。(傷口などの感染防止にむいている)

アルコール綿で手を拭くと、どの程度殺菌作用が持続するのか

 

 

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業

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ojiyaku