塩野義製薬が開発を行っている新規作用機序の抗うつ剤“S-812217”に関する情報が公開されましの。S-812217は“GABAA受容体に対する選択的ポジティブアロステリックモジュレーター”というはたらきによってうつ病・うつ状態(大うつ病性障害)の適応取得に向けて臨床試験が行われている製剤です。
米国で実施された第二相試験の結果によると
・投与開始翌日から速やかに効果が発現する
・既存薬に比べて大幅に症状を改善する
・2週間の投与終了後も薬効が持続
・用量調節(徐々に増やす・徐々に減らす)が不要
・1日1回服用
・米国ではFDAの画期的治療薬の指定を受ける
・日本国内では第Ⅰ相臨床試験が終了
・米国では産後うつ病対象の第三相試験が終了
・米国ではうつ状態(大うつ病性障害)対象の第三相試験が実施中宇
S-812217は新規作用機序の製品ですので、その薬理作用について自分なりに調べてみました。
GABAA受容体とは
GABAA受容体はおもに中枢神経に存在する受容体であり、GABAA受容体が活性化すると、睡眠作用・麻酔作用・筋弛緩作用・抗不安作用などが現れます(神経伝達の阻害作用による抑制系の作用が現れます)。ヒトの体の中にあるγ-アミノ酪酸(GABA)という神経伝達物質が作用して、上記の作用を促します。
医薬品薬としてはベンゾジアゼピン系・バルビツール系・吸入麻酔薬など鎮静・催眠系の医薬品がGABAA受容体の作用薬として使用されています。
神経からくる痛み止め「リリカ」の不安障害に対する効果について
ポジティブアロステリックモジュレーターとは、既存の作用を増強するような働きをもつ物質のことです。S-812217の作用としてはGABAA受容体ポジティブアロステリックモジュレーターという作用ですので、ヒトの中枢神経に存在するGABAA受容体にγ-アミノ酪酸がくっつく時に、γ-アミノ酪酸とは異なる部位にS-812217はくっつき、γ-アミノ酪酸の働きを促進するような作用です。
私のイメージですが、
S-812217がGABAA受容体のある部位にくっつくと、GABAA受容体の形が少し変わります。
↓
γ-アミノ酪酸がGABAA受容体のいつもの部位(S-812217とは別の部位)にくっつきます。
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いつもよりもGABAA受容体が活性化されているため抑制系作用が強くはたきます
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抗うつ効果が期待されます
作用機序をざっくり把握するとベンゾジアゼピン系の薬剤と近い気はしますが、もう少しマイルドなのかもしれません。今後、臨床試験が進むにつれて情報が徐々に開示されるかと思われます。